EurActiv 2008年11月6日
農薬:欧州議会 禁止を支持し
困難な交渉が前進


情報源:EurActiv, 6 November 2008
Pesticides: Tough negotiations ahead as MEPs back bans
http://www.euractiv.com/en/sustainability/
pesticides-tough-negotiations-ahead-meps-back-bans/article-176936


訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年11月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/euractiv/081106_pesticides_MEPs_back_bans.html


背景
 農薬の影響に対する公衆の懸念が高まる中で、欧州委員会は2006年7月に、農業における農薬の危険な又は過剰な使用から人の健康と環境を守ることを目的として”農薬法案(パッケージ)”を発表した。このパッケージはヨーロッパにおける農薬の使用と認可を厳しくすることを求めたCOM(2006) 388 final)と農薬の持続可能な使用のための共通の目標と枠組みを規定するCOM(2006) 373 finalからなる。

 新たな承認手続きのための提案された規則は特に下記の二点おいて議論があることが判明した。(EurActiv 16/102008 and 10/10/2008):
  • 農薬の製造に用いられる物質のカットオフ基準(人の健康と環境に潜在的に深刻なリスクを及ぼす物質に関する市場での禁止)
  • 特定地域内での認可製品の相互承認
EUの更なる情報
その他の情報
 欧州議会の環境委員会は、人の健康に有毒な農薬に関する禁止を承認し、もっと寛大なアプローチを支持するEU加諸国と対決する舞台の準備が整った。

 水曜日(11月5日)に同委員会の見解を採択した議員たちはまた、来年1月に行われる農薬法案(パッケージ)に関する第二読会に先立ち行われる交渉のための鼻薬を導入することも忘れなかった。

 これは主に、他のEU諸国によって付与された農薬認可を加盟国が拒否し、また作物の生存に本質的に重要である(essential)ことが証明されれ有毒な物質の継続的な使用を許すという可能性を含むということである。

 農薬の持続可能な使用に関する報告書の採択にあたり、議員らは、各国行動計画は使用農薬の削減量の数値目標を含むべきであるとする妥協案を導入した。”非常に高い懸念の有効成分”及び”有毒性又は非常に有毒性があると分類される物質”については、最低50%の削減目標が提案された。

 妥協案は、安定的多数を占めるグリーンと社会主義のグループらとの間で合意され、議会と理事会の間の困難な交渉への道を整えた。理事会議長国フランスは第二読会での合意を期待していると述べた。

 認可プロセスに関する環境委員会のこの報告書は、最も危険な物質の承認決定のためのハザードベース基準についての議会議員の支持を再確認し、もしそのリスクが100万人の市民の中の少なくとも一人に顕著であることが証明されるならば、免疫毒性及び神経毒性物質のための追加カットオフ基準を勧告するものである。しかし、禁止が植物の健康に深刻なリスクを及ぼす場合には、有害物質の4年間の認可が許される。

 同報告書はまた、
  • 製品(農薬)の地域相互認証のアイディアを拒否する。その代わり、製品認可のためにもっと調和を求め、各加盟国がその地域内で物質を認可したいかどうかを180日以内に決定することを許す。
  • ミツバチのよりよい保護を求める。農薬製造者は、物質が認可される前にミツバチに急性又は慢性リスクを及ぼさないことを証明することが求められる。
  • 小売業者に彼らが使用する農薬についての情報を提供することを農民に義務付けることになる”電子農場パス(electronic field pass)”の確立を提案する。
 議会環境委員会と理事会の双方は最も危険な物質に関する禁止を支持しているが、認可プロセスに関する環境委員会の勧告は、製品(農薬)の地域相互承認に関し理事会で到達した共通見解と大きく異なっている。

 理事会は、農業、植物の健康、環境、気候条件が類似しており、その内部で製品(農薬)の地域相互承認を行うこととなる3つの地理的地域(北部、中部、南部)を確立することを支持している。理事会合意は禁止が作物の生存に深刻なリスクを及ぼす場合には有害物質の5年間の例外的認可を許すとしている。

立場:

 投票に先立ち、スタブロス・ディマス環境委員内閣のメンバーであるディミトリ・ギオタコスは、環境委員会は一件書類について”より感情的”であると感じており、一方議会はそれを農業展望という点から議論したので、共同提案者、理事会、及び議会の見解は異なったと述べた。しかし、欧州委員会は第二読会で建設的な合意が見出されるであろうことに自信を持っていると彼は述べた。

 スペイン選議員出ピラル・アユソ(EPP-ED/欧州人民党・欧州民主主義グループ)は、北部と南部の加盟国は農薬を完全に異なる視野から見ているとして、議会にはこの問題に関する”共通の展望が欠如していること”を残念がった。”北部諸国は、農薬がもっと重要な南部諸国に対してこれらの修正案がいかに影響を与えるかを理解することができない”と彼は述べた。

 ドイツ選出議員(グリーン)で認可一件文書の作成・報告者(rapporteur/ラポラツール)であるヒルトランド・ブレイアーは、環境委員会は、”来るべき閣僚理事会と欧州委員会との討議に向けて、カットオフ基準を強化することによって強力な見解を設定した”と述べた。彼女は、免疫系又は神経系の発達に著しいリスクがあるとみなされる物質の禁止追加の支持を歓迎し、農薬製品の地域認可の拒否を歓呼した。”報告者として私は製品認可の調和ルールを支持するが、これはEU加盟国の犠牲でなされてはならない”と彼女は述べた。

 農薬の持続可能な使用に関する報告者であるクリスタ・クラス議員(EPP-ED)は、植物防疫用薬剤(農薬)の使用は”予防原則と影響の知識に基づくべきである”と述べた。それらは、EU全体での農薬使用のガイドラインであるべきである”。

 欧州作物保護協会(ECPA)は、議会によって提案されたもっと極端なカットオフ基準のいくつかは”規則の採択を容易にするために戦略的に取り下げられたが、残っている基準はまだイデオロギーに基づくものであり、科学的又は現実的なベースではない。

 同協会は、追加的カットオフ基準は、”高い安全基準を満足し、現在ヨーロッパの農民によって安全に使用されていることを示す多くの農薬製品の不必要な禁止”をもたらすものである。同協会はまた、3地域認可コンセプトが取り除かれ、”他の加盟国によって与えられた農薬の認可を容易に拒否することを許す例外が導入されたこと”は遺憾であると述べた。

 さらに、同協会は、持続可能使用指令(Sustainable Use Directive)のために採択された修正案は、過去に既に失敗した削減目標の任意の使用を固定化するものであると主張している。”農薬使用は、現実的な地域の農薬管理の必要性に対応するものであり、目標に対応するものではない。したがって、これからの道筋は実施の改善によってつけられる”と欧州作物保護協会(ECPA)のディレクター・ジェネラルであるフリードハイム・シュミダーは述べた。

 健康と環境連合(Health and Environment Alliance (HEAL))と農薬行動ネットワーク・ヨーロッパ(PAN Europe)は、議会の委員会が提案を大幅に弱めることに合意しない、食品生産での危険な農薬使用を廃止する、という以前の約束から後退したことを遺憾とした。彼らは、法案に加えられた複雑な抜け穴と軽減は最悪の農薬を代替することを大幅に遅らせることになると主張した。

 そのような軽減は、リスクが100万人の市民のうちの一人にリスクが顕著であることが示された場合にのみ免疫系毒性と神経系毒性物質をカットオフ基準に含めるとしているが、”そのようなことは評価することが非常に困難である”とHEALの副ディレクターであるモニカ・グアリノニは述べた。委員会はまた、議会の第一読会における公共の場所(学校、公園など)の中および周辺での農薬禁止が、公共の場所の中だけで周辺は含まない禁止に弱められたと彼女は説明した。

 保守系議員ロバート・スターディは、この立法は”現在よりもっと毎月の食費が高騰するのを見ることになる既に家計を厳しく圧迫されている消費者を脅かすことになる”と述べている。現在の食料価格と食料供給の安全についての懸念があるので、もっと情報に基づいた決定にするための影響評価の恩恵なしに議員がこれらの提案に投票することは不合理であると彼は続けた。

次のステップ
  • 2009年1月13日:農薬パッケージに関する議会第二読会
  • 2010年中旬:法案発効
関連リンク
欧州連合
政治会派 ビジネス・産業界
NGOs
Health and Environment Alliance (HEAL) and Pesticide Action Network Europe (PAN Europe): Parliament reaches compromise on health and environment (5 November 2008)


■訳注:欧州議会会派(参考)
■訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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