EurActiv 2007年9月13日
欧州議会・環境委員会
EU農薬法の強化を採択


情報源:EurActiv, 13 September 2007
MEPs vote to tighten draft EU pesiticide law
http://www.euractiv.com/en/environment/meps-vote-tighten-draft-eu-pesiticide-law/article-166672

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年9月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/euractiv/070913_MEP_pesiticide_law.html


概要:

 欧州議会の環境委員会は9月12日、農薬の認可手続きの強化を採択したが、農薬メーカーは”農家によって長年、安全に使用されてきた多くの農薬が市場から消えることになる”と言って激怒した。

その他の関連情報
MEPs vote to ban pesticide use around public areas
EU watchdog raises concern over food pesticide levels
NGOs call for 50% pesticide-reduction target
Agreement reached on groundwater protection
関連情報:
背景:

 消費者の食品中の残留農薬についての懸念(EurActiv 08/02/06)に対応して、2006年7月、欧州委員会は、EUの農薬の認可、使用、及び処分規則を強化するよう設計された規制枠組み指令を提案した(EurActiv 13/07/06) (訳注1)。提案された内容は欧州委員会第6次環境行動計画(6th Environment Action Programme)の一部をなすものである。

 各国環境大臣はこの農薬戦略を了承したが、欧州委員会はこのデリケートな立法問題をドイツ議長国時に農業理事会( Agriculture Council)に送付した(EurActiv 21/02/07)。

 6月に、議会の環境委員会(ENVI)は、欧州委員会の提案した枠組み指令を検証した。議会は特に住宅地域周辺の農薬使用に関する制限の強化を採択した((EurActiv 26/06/07) (訳注2)。

 9月12日、環境委員会は、農薬の認可及び上市に関する欧州委員会提案の規制について採択した。

論点:

 環境委員会は、賛成43、反対12、棄権3で、欧州委員会提案の規制の多くを強化した。
 同委員会は内分泌かく乱物質、及び遺伝毒性又は生殖健康に有害であると考えられるある種の農薬中に見出されるその他の物質を禁止する欧州委員会の計画を支持した。

 しかし、環境委員会はまた、潜在的に神経毒性及び免疫毒性を持つ農薬を、ヒトに対する”本質的なリスク”に基づく欧州委員会の禁止物質の提案リストに加えることを採択した。

 新規物質を含む製品の迅速な国の認可手続きは環境委員会によって否決されたが、これは農薬産業界を狼狽させ、これは投資意欲を削ぎ、農家が必要な農薬を使用することを阻害すると主張した。

 農薬産業における革新の推進力になるとしてこの規制案の支持者らによって歓迎された動きの中で、議会は、より安全で毒性のない農薬代替品がが少なくとも同等に効果があることが証明できるならば、”従来の農薬”に優先して認可が与えられなくてはならないとする”代替原則”を了承した。

 議会はまた、EUの水枠組み指令((WFD - EU freshwater policies )を強化することを採択した。これにより、地表水中のある種の農薬の濃度がその認可に影響を与えるであろう。

 欧州委員会によって提案された地域別認可システムは議会によって却下された。このシステムにおいては、農薬は、EU内の3つの地理的地域(北部、中央部、南部)別に認可され、各地域内で認可の相互承認がなされることになっていた。議会は各加盟国が、他の加盟国で認可された農薬を独自に認可、禁止、又は制限する権限を保持すること採択した。

 総会におけるこの規制枠組み指令の採択は、10月後半に行われることが予想される。

立場:

 環境団体は従来から、作物の生産高を確保するために農薬に依存する農家の生計を脅かさずに消費者と環境健康を守るために必要な規制のレベルについて、農家と意見が対立していた(EurActiv 06/03/07)。

 欧州作物保護協会(ECPA)のユーロス・ジョネスは、環境委員会の投票結果を、”健全な科学(sound science)及び合理的な意思決定(rational decision making)の原則を大幅に後退させるもの”として酷評した。ある種の物質の有害性を測るために議会によって用いられた”本質的”リスク基準が論点である。ECPAは、この決定により、農家によって長年、安全に使用されており、農家が作物を病害虫から守るために必要とする多くの物質が市場から消えることになると記者会見で述べた。

 ECPA はまた、環境委員会による追加の制限基準を課すという決定、及び新規物質を含む製品の迅速な国の認可の可能性を却下した決定に遺憾の意を表した。

 議会、及びグリーンズ/欧州自由連合(EFA)グループのドイツ選出議員である報告者ヒルトラッド・ブレイヤーは、環境委員会の投票で出現したより厳格な制限を歓迎している。彼女は、統合有害生物管理(IPM)の拘束力ある適用、及び、作物管理における非化学物質代替品の推進の条項が議会によって支持されなかったことを残念がった。

 欧州環境事務局(EEB)、健康と環境連合(HEAL)、及び欧州農薬行動ネットワーク(PAN Europe)らの環境団体共同プレス・リリースで環境委員会の投票は欧州委員会の当初の弱い提案を大いに改善しているとして歓迎した。

 健康と環境連合(HEAL)のモニカ・グアリノニは、農薬メーカーと農家の代表は議会に対し、10月の議会総会の前に環境委員会の投票結果のある部分を拒絶するよう圧力をかけるであろうと予測している。

次のステップ:

 2007年10月 議会総会投票(第一読会)

リンク:

EU 公式文書
・Commission (DG ENV): Sustainable use of pesticides
議会
・Press service 12: September press release
・Greens/EFA Group: 12 September press release
EU 関係者の立場
・European Crop Protection Association (ECPA): 12 September press release
・European Environmental Bureau (EEB), the Health & Environment Alliance (HEAL) and Pesticide Action Network (PAN) Europe: 12 September press release



訳注1
 欧州委員会プレスリリース 2006年7月12日/欧州委員会 より安全な農薬使用に関する戦略を提案 空中散布は原則禁止

訳注2
 EurActiv 2007年7月2日 欧州議会・環境委員会 公共区域周辺での農薬使用禁止を採択

訳注3(参考)


化学物質問題市民研究会
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