EurActiv 2008年8月29日
環境団体
危険な農薬の残留基準に関して EU を提訴


情報源:EurActiv, 29 August 2008
Green groups take EU to court over 'dangerous' pesticide limits
http://www.euractiv.com/en/cap/green-groups-take-eu-court-dangerous-pesticide-limits/article-174959

訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年9月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/euractiv/080829_Green_groups_pesticide_limits


 EU域内で販売される食料品の新たな残留農薬残留基準が9月1日(月)に発効するが、環境団体は8月28日、許容できない汚染レベルに消費者を暴露させることによって、”食品安全に背く”と主張しして、この法を法廷に持ち込む意図があることを発表した。
詳細ニュース
News: Farm ministers back ban on toxic pesticides
News: Pesticides row heats up ahead of key ministers' meeting
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 2005年2月、EUの機関は域内で販売される食品中に含まれる農薬に関する欧州全土での限度を規定する新たな法に関し合意に達した(Regulation (EC) No 396/2005)。この規則はいわゆる植物防疫製品(訳注:農薬)の健康と環境への影響に対する公衆の懸念が増大していることに目を向けることを意図している。

 しかし、昨日、グリーンピース・ドイツとオーストリアのNGO であるグローバル 2000と地球の友オーストリアが発表した新たな調査は、新たな規則の下では、EU全土で許される果物と野菜の農薬(残留)基準値のうち最大700(の基準値)が高すぎることを見出した。

 この調査結果により、環境団体である農薬行動ネットワーク(PAN)ヨーロッパ、オランダの NGO である Natuur en Milieu (自然と環境)は欧州委員会が将来の政策プロセスの早い段階でその立場を見直し、もっと真剣に考慮することを求めて、欧州第一審裁判所(Court of First Instance)に提訴することにした。

 EUの行政部は、”法的基準値を達成可能な最低レベルに設定する義務を果さなかった”と自然と環境のハンス・ミュラーマンは主張した。”また、農薬が人の健康にぼす累積影響について考慮していない。欧州委員会に再考を求めるために法的手続きが今、必要である”。

 一方、PANヨーロッパのコーディネータ、エリオット・キャネルは、新たな基準値が案出されたメカニズムに疑問を提起した。”それぞれの農薬に対し、欧州委員会は最悪の安全基準を持つ国を特定し、そのレベルを新たな全EUの基準として採用した”と彼は述べた。

 欧州委員会の規則に規定されている170,000の農薬基準値を検証したグリーンピースの調査は、健康、特に子どもの健康に急性及び慢性ダメージを及ぼす恐れが十分に高い汚染レベルを持つ農産物の中からリンゴ、ナシ、ブドウ、トマト、ピーマンを選び出している。同調査は、EUで販売されている全ての食品の半分以上が何らかの形で農薬に汚染されていると推定している。

 しかし、農薬製造者らは、彼らの製品は全て現在の価格上昇の環境下で食品のコストを低く抑えるために必要であると述べている。欧州穀物保護協会(ECPA)によれば、農薬に関する過剰に厳格なEUの規則は、ヨーロッパ農業の自給率を下げるきっかけとなり、価格を上昇させ、農業食品分野に失業をもたらすことになる(EurActiv 05/02/08)。さらに同協会は、彼らの全ての製品は厳格な安全基準を遵守し、厳重なテストを受けていると主張している。

 欧州委員会は、グリーンピースの調査結果を、”データが調整されておらず時代遅れで不正確な情報”であるとして、切り捨てた。同委員会は、”目に留まったどのような調査も検証し、もし最大残留値が安全ではないことを示す新たな科学的証拠がでてきたら、欧州食品安全局(EFSA)に意見を求める”と述べた。

 PANヨーロッパは、法廷が2009年の早期に本件に関する意見を出すことを期待している。一方、今年の6月にEU農業大臣は域内で有毒農薬の上市と使用を禁止する欧州委員会の計画に対し政治的合意に達した(EurActiv 24/06/08)。

リンク

EU公式文書
・EUR-LEX: Regulation on maximum residue levels of pesticides (23 February 2005)
欧州連合
・European Commission: Plant protection - Pesticide Residues (Portal)
NGOs
・PAN Europe: Press release: New standards on pesticides violate food safety (28 August 2008)
・Greenpeace Germany: Press release: EU pesticide limits a health risk to consumers (28 August 2008)
・Global 2000 / Greenpeace Germany / Friends of the Earth Austria: Survey: The EU's unsafe pesticide limits (August 2008)
・PAN Europe: MRL harmonisation (Legal summary) (Background paper)


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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