聴いた、観た、買った ---淡々と音喰らう日々。

2001.12

>2002.01
<2001.11
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★は借りた新着、☆は新規購入。

今回集中的に論評したディスクなど:
クリスマス・ソング (Various: Superstar Christmas) / アカペラでクリスマス / Chaka Khan: Destiny /
Chaka Khan: c.k.
(1)(2)/ Sade: Diamond Life / Leila Pinheiro: Cantavento e Girassol /
NOW That's What I Call Christmas! / Pat Metheny Group, または言葉のない歌

◆(このページは)思い付き次第思い付いただけ更新しています。
◆日付はその日付のコメント自身への、CDタイトル前などのマーク(◆)はそのレビュー項目自身へのダイレクトリンクになっています。
◆文中のCDタイトルのリンクは、以前のコメントへ遡れるようにしてるつもりですが、かなり気まぐれです。


12/30 小納会に寄せて

一昨日は半ドンで、昼から職場の納会。どこでも似たようなものかと思うが、ビールと貰いものの酒と乾きもので軽く...というか、結構ヘヴィに飲んでしまう人も数名。
話をしてて興味深かったのが、何人かが「今年の歳末は歳末らしくない」としきりにこぼしていたことだ。あの独特の雰囲気がない、多分セールとかが控え目なせいだろう、と。本当にそうなの? とまず思ったが(だって、ここんとこ買物に出るとすごい人混みだよ)、仮にそうであったとしても、自分にはこの捉え方は違和感がある。それはおそらく、セールとか年越し用品の売り出しで賑わう市場、というものが、自分の持っている歳末イメージの中で元々そんなに大きな位置を占めていないせいだ。自分にとっての歳末は、何よりも煤払いであり、帰省であり(今年はしないが)、そして除夜の鐘や年越しそばなのだ。これらは、いかに世の中が不景気と言われる今年であろうと、変わることがない。その限りにおいては、変わることのないいつもの歳末なのだ。
確かに、街のにぎわいが今一であればさびしいかも知れない。だが、景気がそうである限り、それは今年にふさわしい歳末なのだ。そんな今年にふさわしい一年の締めくくり方だと割り切ればいいんじゃないかと思う。行く年を静かに振り返る心が失われてる訳じゃない。たかだか街がさほど賑わってないくらいのことで落ち着かないようでは、ますます先行きが心許なくならないだろうか。とりあえずは、心を静めていつものように、行く年を締めくくりたい。

V.A.: NOW That's What I Call Christmas! (UMG, 2001)☆
今年購入した「ちょっとはマシな」クリスマスアルバムというのがこれ。古くはBing Crosbyの'White Christmas'から今年の録音まで36トラック入りの2枚組で、網羅性としてはバッチリだし、セレクトされた演奏もかなりいいと思う(Britney Spearsにはお引き取り願いたかったが)。中でも特に良かったのは、ジャズ/スタンダード系でJohnny Mathis: 'The Most Wonderful Time Of The Year' の煌めくブラスサウンド、ポップスではCarpenters: 'Merry Christmas Darling'の、Singers Unlimitedを思わせる重層的で透明なコーラスワーク、あたりか。変わったところでは、Gloria Estefanの'Love On Layway'はカリブ海系だが何故かJingle Bellsの引用がバッチリ決まって秀逸。

Chaka Khan: "c.k."に収録の古いジャズナンバーについて補足。これ、一つは振られてすさんでる様を、もう一方はつれなくされてるんだけど待ってるっていう内容を歌った、いわばいずれも他愛のないありきたりのラブソングなんだけど、実は聴いてあるいは口ずさんで良い歌詞ってのはこんな歌詞なのだなあ、と改めて思わされる。確かに、小難しい言い回しや斜に構えた視点などは、あってもなくてもいいし、時には邪魔なものかも知れない。例えばこんな歌詞があると知ってしまうと。

So I smoke a little too much, and I drink a little too much
And the tunes I request are not always the best
But the ones where the trumpets blare!
So I go at a maddening pace, and pretend that it's taking your place
But what else can you do, at the end of a love affair

(from 'The End Of A Love Affair', written by Edward C. Redding. Transcript from "c.k." by Chaka Khan)

この2ケ月くらいはPat Metheny Groupを随分聴いていた。こういう聴き方になるのは、たいがい「言葉はじゃまくさい」と思っている証拠だ。たかだか人間の言葉で考えられるよりも遙かに遠くまで届く思考を、息の長いメロディラインが導いてくれる、そんな気がしている。幻想かも知れないけど。
超えたい、越えられない、でも越えて行けそうな気がする。そんな揺れを伝える、たおやかなメロディの揺れに身を委ねて、また明日も。

来年が今年ほど涙の流れない年であることを祈りつつ。


12/27 届けこの思い。みたいな。

3連休の真ん中でアカペラ公開練習・クリスマス編というのを実施したのだけれど、詳細書けるほど時間がないのでまた改めて。ただ一つ:歌がある程度カタチになってくると、すっと肩から力が抜けるように気持ち良さが増してくる瞬間がある。そこに行くまでは歌は「お勉強」だが、その瞬間からそれは心を解き放つ声になる。一人でも多分そうだろうが、4人でやってるとこれは劇的だ。何だか半分ハイになったような気分のまま、翌月曜の振替休日も過ごす。

とりあえず、少し聴いて今は一休みしてるCDについて。備忘録的に。

Sade: "Diamond Life" (Epic, 1984)☆
T-3 "Hang On To Your Love" (PF4の最初の方でも肩慣らしで掛けてたっけ?)がほしくなったので中古で購入。かなりベタなバラードトラックもあるけど、全体には慎ましく抑えたストイックなリズムセクションが好ましい。ボーカルは、今聴くと結構「雰囲気の人」であって、巧みってことはない。
こういう「シブい歌ものフュージョン」路線のものって幾つか出たけど、祖型はこの盤あたりなんだろうなあ、時期的にも。似た傾向ではもう少し後のKalimaとか好きだったけど、後から思い立って盤を探しても見つからなかったなあ。あと、Liane Folyもこの延長上にあるし、実はAnita Bakerの受容層とかも結構かぶってたりしてないだろうか。

Leila Pinheiro: "Cantavento e Girassol" (EMI, 1996)☆
一風変わった、でも印象的な曲を書くブラジルの作曲家Guingaの作品集。2月にIvan Linsと来日したとき、このタイトルトラックを歌っていてノックアウトされたので探していた。だが、どうも他のトラックの印象が弱すぎる。確かに、ちょいとひねたサンバみたいなものを書くのも巧いと思うが、でもGuingaの他の作品を聴いていると、そんな形式におさまらない佳曲を集めてられなかったかという気がする。例えば、Sergio Mendes: "Brasileiro"所収の'Esconjuros', Boca Livre: "Dancando Pelas Sombras"所収の'Zen-Vergonha'のような。


12/22 冬空に心を解き放て

昨日は雪だったけど、それまではパキッと晴れた冬空が続いた東京地方。気分的にはクリスマスが近いこともあって(例のサンタ話: 昨年/今年)、結構センシティブな季節のはずなんだけど、突き抜けるような空にまかせて思わず朝な夕なにかっとばすようにChaka Khanを聴きまくる日々。ということでもう1枚:

Chaka Khan: "c.k." (Warner, 1988)☆
そういえば今ではcKと言ったらカルバンクラインだけど、当時はまだその商号は使っていなかった。ついでに言えば1985年公開の映画"Back To The Future"の中では、カルバンは中流の男の子が下着を買うような大衆ブランドの代表として扱われていた。時代が変われば変わるもんだ。
脱線はさておき。プロデューサー交替(Arif Mardin → Russ Titelman)の影響もあるのか、豪華100連発打ち上げ花火的な前作"Destiny"とは打って変わって渋くタイトな音作りが印象的。とはいえ、最初に聴いた当時は渋すぎてよくわからない感じもあった。当時気に入っていたトラックは、Brenda Russellが書いた"Soul Talkin'"で、全曲中バックトラックが一番ストイックに切り詰まった作りなのだが、それがChakaのシャウトするボーカルを俄然引き立てていて圧巻と思ったのだった。今、全トラックを改めて聴くと、基本的にはそのテイストが全体を貫いてると感じられるし、そのタイト感が心地よい。ある意味、リリース時にはまだ「大衆ウケするには早すぎる音」だったのかも知れない。
変わったところではPrince(当時)が2曲提供、そのうち1曲でMilesが吹いてるのだが、これがほどけた感じで面白い演奏。また、オールドジャズのリメイクが2曲、いずれも渋くまとまってしっとりと聴き応えあり。これDave Grusin のアレンジだと今回知ってちょっと驚き。こんなこともできるんだ。


12/16 Chestnuts roasting on an open fire... (from 「さるかに」)

これは'The Christmas Song'の出だしの歌詞なのだが、確かに連れ合いの指摘どおり、「薪であぶられてる栗」てのは「さるかに」ですね。
で、この曲がアカペラアレンジの題材だったのだが、何しろお手本となる演奏なしでという無謀だったので、なかなか大変なことに...という顛末はこちらに。アカペラバカ一代はかくて続くのであります。

で、クリスマスつながりということで、前回紹介した"Superstar Christmas"について、備忘録的に補足。

で、もう少しマシなラインアップのクリスマス盤があってもいいな、と久々に新品買いに出かけた。だが今回はそっちは置いといて、ついでで買ったChaka Khan: "Destiny" (Warner, 1986)☆について。Chaka Khanをどれか聴くならコレ、という出来なのに、借りてテープに落としたものしかなくて悔しかった1枚。随分探していたのに、中古も新盤も手に入らなかったのが、どうして今頃になって1997年CD化のものが店頭に並んでいるのかは謎。
これ、出だしが「Scritti Polittiってボーカルさえへなへなじゃなきゃカッコいいのね」と目からウロコの'Love of a Lifetime'から始まって、以降豪華ライター陣&ゲスト陣を交えて最後までガンガン飛ばす飛ばす。Mr. Misterのメンバーで書いた'Watching The World'のドラムス兼バックボーカルにPhil Collinsを招ぶなんざ、なるほどそういうテイストを最大化するにはその組合せしかないよなと頷かざるを得ない采配。他のトラックも、チャカ自身の筆になる'My Destiny'の機械的ファンクから、ヘビメタかと思う'So Close'、疑似ライブ仕立ての'Who's It Gonna Be'などなど、曲の多彩さとパンチの効いたChakaのボーカルは特筆すべき。
なお、ドリカムの"The Monster"のサウンドデザインは、この盤とこの次の"c.k."(1988)をベースにしてるのはほぼ明白なんだけど、それをよくあそこまで練り上げたもんだなあとちょっと感心はしている。


12/7 So this is 歳末. And what have we done?

クリスマスアルバムなんてものを、柄にもなく聴いている。アカペラコーラスのネタ探しという目的あってのことだが、クリスマスソングも悪くないと最近は思っている。年の初めにその一年の計を立てるのでなく、一年の終わりに新しく来る年に思いをはせるという感じが心地よいのかも。

以前は、信仰心と縁もないのにそんなことに入れ込むのは何だかはしたないような気がしていた時期もあったが、今は違う。例えば今回のサブタイトルに使ったJohn Lennonの'Happy Christmas (War is Over)'を聴くと、真摯な願いに心のふるえが止まらなくなる。信心のない自分が言うのも説得力がないのだけれど、信仰を持つ人が心から祈るのはその信仰に則ったやり方でしかありえないのであって、そのやり方だけをあげつらって違和感をつのらせるのは---それが以前の自分の典型的な感じ方だった訳だけど---どこか間違っている気がするのだ。人は多かれ少なかれ身についた型の中で生きている。それはあくまでも「型」であるから、常にいい面と悪い面、開かれた面と閉ざされた面などの多義性を背負っている。その型を通してあることを伝えようとしているとき、意図せざる面を切り捨てることはできない。そのことに気付いていない場合もあるし、気付いていても他にやりようがないこともある。そう思って相手の言葉に耳を傾けること。

とはいえ、ならばクリスマスソングは全て受け入れられるかというとそうではなくて。例えば、問題作'Do They Know It's Christmas?' (これ、ボブ・ゲルドフとばかり思ってたらMidge Ureのプロデュースなのだな。言われてみれば確かに...)の歌詞は、「楽しんでるときにこんなこと言うのもナンだが、他のクニで起こってることも考えよう」てな感じで同胞を諭すのは悪くないんだけど、やはりアフリカの人に「今がクリスマスだと知らせよう」は単なる余計なお世話ではないか? これは決して信心に基づく祈りなのではない。ただの傲慢である。やっぱりそうしたことは峻別して考えたいとは思うのだ。

なお、今回の参考文献(CD)はVarious: Superstar Chirstmas (Sony, 1997)★。一瞬、こんなのが1枚常備されててもいいかと思ったが、何度か聴くと、'Last Christmas'のアカペラ版や、やたらねっとりと歌い上げるJackson 5の'Little Drummer Boy'など比較的どうでもいいトラックが気になり、買う気半減。そうそう、Placido Domingoの'White Christmas'はぜんっぜん楽しげじゃないんだけど、あれは何でだ? かくのごとく、相乗り(various)モノは難しい。



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