イヴァン・リンスはその声を生で聴け。
Ivan Lins feat. Leila Pinheiro @ ブルーノート東京, Feb 2001
(2001.03.17)


ご存知のとおりの事情(たとえばこんな具合)により滅多なことではライヴにも行けない生活なので、行くとしたら厳選せねばならない。その中でも最も優先順位が高かったのがIvan Linsだった。前回1999年夏の時には情報入手が遅くて(だってまるで隠密みたいにサバス東京でやるし...)行けなかったので、今回ようやく念願を果たした格好。

何ゆえ彼のライブにこだわるのか、という理由はライブ盤にある(例えばこの盤)。溢れる生命力を伝える強靱なボーカルスタイル、そしてメロディライン。ブラジルの聴衆との唱和、コール&レスポンス。スタジオ盤も良いが、こうしたライブの楽しみこそがほとばしる生命そのもののような彼の歌には似合う。そして当然、そう思ったが最後、自分がその場に行かずには気が済まないのだった。

で、そうした観点から今回の来日(Leila Pinheiroがゲストとして同行。2001.2.19-24、於ブルーノート東京)はどうだったかと言えば、その願いは十分に叶えられたと言っていい。但しその一部は予想外の理由による。今回の来日公演の曲目のメインに据えられているのは何とサンバ・メドレーだったのだ。新作から2曲、前作で取り上げたCaetano Velosoの"Desde Que O Samba E Samba" (サンバがサンバであったときから)、そしてサンバ・カリオカのスタンダード"Tristeza"と続き、最後にはIvanが故Elis Reginaに捧げた"Leva E Traz (Elis)"のフレーズが絡んでフィナーレとなる。(2/20の2ndステージでは、アンコール#2で更にIvanの作である"E De Deus"を演奏、オールスタンディングの大合唱となった。)

彼の過去のナンバーの中には確かにサンバが存在するものの、その比重はそんなに高くない。だが今回MCで本人が言うには、近年比較的サンバをたくさん書いている、私はカリオカ(リオっ子)だしね...ということらしい。ブルーノートの短いショータイムの中でこれだけサンバに時間を割いたので、彼のスタンダードナンバーをもっと聴きたかったなという感じも残るが、手練れのバックバンドに支えられてサンバを畳み掛けてくるIvanの張りのある歌唱が聴けたことで十分カバーされたと思う。

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以下、公演の細部についていくつか。

◆ Leila Pinheiro (Vo, Kb)は半ば前座的な位置づけで、Ivanとの共演は1〜2曲。Leilaのソロ、特にGuingaの曲なんかは素晴らしかったが、しかしもっとIvanの曲を歌ってほしかったし共演してほしかったのも事実。

◆ バンドメンバーは一体感あるタイトな演奏を聴かせて、確かにこのバンドでなら踊らせる選曲にするのも当然といった感じ。特にドラムスのTeo Limaは、サンバからハードなクラベス系まで絶妙なポリリズムを決め、Ivanが"One of the greatest drummer of the world"というのもあながち誇張ではない快演。またキーボードのMarco Britoのソロが光った。

◆ Ivan自身のボーカルは、2/20の2ndの出だしではちょっと嗄れていて一瞬不安を感じさせたが、歌い込むにつれつやと強さを増していくさまは圧巻だった。近年は高音が出なくなってきているのは確かだが、それを除けば強靱なボーカルスタイルは健在と言ってよさそう。

◆ しかしながらブルーノートのショータイム(アンコール前迄で1時間15分程度)ではやや短いというのも偽らざる気持ちで、出来れば今度はサバスあたりでもうちょっと長いステージを堪能したいと思う。早く来い来い再来日。

(end of memorandum)



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ただおん

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