久々の新刊ではあるけど、長期休みのない状態だとゆっくり世界に浸るってことが出来なくて、仕事終わった後とか寝る前とかに章の中の節を1つ2つ進む、みたいな読み方でした。時間かかるわ細切れだわで誤読してる所ありそうで怖いけど、今の仕事してたらもー仕方ないよな…。
なので変なこと書いてたらごめんなさいですよ…。
配慮とか全然無理そうなのでこの辺で、
========== ネタバレ結界 ==========
泰麒サイド。
……うーむ嵩里/高里くんなかなかかっこいいことになってる。見た目じゃなくて思考回路がね。麒麟だからって言っちゃえばそれまでだけど、それでも阿選を玉座に縛っちゃえ発想は……最初はびっくりしたけど(1)を置いて次の空き時間に(2)を手に取る頃には「そーかー」って腑に落ちちゃって。もちろんそれでも州候権限すらまともに使わせてもらえないとか難しいことはあるけど、挙句に「禅譲させるから驍宗出せ」で不謹慎にも笑い出しそうになってしまって。いやいい意味でね。かっこいいなあ嵩里。
読者は、あ、いや、ええと、新刊待ちわびてた程度の読者は、楽俊が次の巧王になれない云々の下りから、阿選は少なくとも驍宗の次に嵩里が選定して王になることはありえないの知ってるからなぁ…。
琅燦裏切り者みたいに見えているけど、阿選が本当に王かどうか確認するために「叩頭させてみれば」ではなく「斬ってみたら」言ってる段階で嵩里の意図が読めてたとしか思えないんだがね。彼女もまた阿選が嵩里に選ばれるはずがないって前提で動いているし。
あと、その「ありえない」新王阿選を「天からの取引」という解釈で成り立たせようとして、その挙句に驍宗殺しちゃダメよね、だしな……なんかな……文中では琅燦が阿選の共犯者扱いされてるけど、ぶっちゃけ嵩里帰還後って誰よりも嵩里の共犯者なんだけどな。守ろうとしている項梁よりもむしろ琅燦の方が味方に見えるんだよどーしよう。私がおかしいのかw
まあ何より。うん。最大の謎は阿選その人ではある。鳴蝕に巻き込まれて凄まじい被害が出ていた。なのに阿選は簒奪当初はめっちゃてきぱきと仮朝作っちゃってた所からしてぴんぴんしてた、ってこと、だよね。鳴蝕のど真ん中からどーやって生還すんねん。周りは大勢死んでるのに。って所から、本当に嵩里を斬ったのは阿選なのかしら説が出ちゃうの判る。
ただね、この阿選が鳴蝕の当時にいた阿選と同一人物なのか正直悩ましいのですよね…というのも、「斬ってみたら」シーンで嵩里が阿選の名前を一度も呼ばなくてさ。「貴方が斬った」「貴方が王」って言い方しかしてくれへん。嵩里の言う「貴方」は「誰」なのだろう。嵩里は阿選の向こう側に別の誰かが見えてやしないかもしかして。
……ただまあ、とりあえず誰でもいいから玉座に座らせて(と周りには思わせて)自分が州候権限取り戻せりゃそれでいいって考えの可能性もあるにはあるけどね。でもそれはそれでやっぱり嵩里かっけー、とは思うけれど。動かそうとしないやつを動かすより自分が動けるようにした、ってことなんだろうし。
現に、正式に登極なんかしてなくったって嵩里が指名した段階で周りの(同姓ルール知らないと思われる)官吏たちは何となーく納得しちゃってて、嵩里が州宰罷免して恵棟を州宰に任命しても誰も文句言えない。で恵棟がこれから「実務」として人々の救済に動き出すことだって出来る訳ですからね。多分。王なんて飾りなのですよ、偉い人にはそれが判らんのです by 泰麒。って感じ。
李斎サイド。
だいぶ幅を取っている割に話が動いていないように一見見えるので、これが後半になってどんな伏線になって帰って来るのか怖くて仕方ないです(笑)。
戴の現状だったり、土匪と言われる人々の論理も見えたし、あと宗教。宗教と医療が結びつくのは昔の日本もそうだったから違和感はないな。
それにしても道教扱いなんだね。山客がもたらしたんだとしたら極国の戴にしかないとは思えないから、他国でも似たような状況なのかな。多分、道観の人々ががっつり食い込むのは、国の庶民側の内情に詳しい人物が必要だっていう物語的な都合もあったのかなーとは思ったりする。
であちこちうろうろして空転空転また空転なので読むの大変って感じる読者はいそうな気がしますねえ。ただ、物語だから仕方がないとは言え人の縁に恵まれ過ぎているな李斎。
園糸のエピソードは十二国記では超珍しいラブストーリーだ。ただ私は(Aセクなんで)別にそれ要らん、とは思っちゃうけど、ただ、愛の力はチートだからな。後半再登場したりしないかしら。それはそれで面白いかも。にやにや。
あと、愛と言えば朽桟。戸籍がないから彼の家族は野合ってことよね、十二国記的には正式な婚姻は出来ない。だから実の子供もいない。なんつーか、シリーズで野合ベースできちんと「家族」が成立している登場人物って実は初めてじゃないのかな。法というか世界の理では結ばれず、認められない人たちが家族として助け合って生きているっていう姿は、LGBT界隈を歩いている立場の人間としてはちょっときゅんとするものがありました。まあ生きるためにやってることは決して褒められたことじゃないけどさ。少なくとも、里を移動するためだけにほいほい結婚する、より余程愛がある気がするよねえ。この世界って、結婚は利害であり野合は愛なんだな。ちょっと皮肉っぽい。うふ。
李斎サイドに「おさらい」が多いのもテンポ落としてる原因なのでしょうね。18年待った読者にとっては多少かったるいことも多いけど、それほど旧作読み込んでないライト層にとってはあればあったで有難い…のかな? と思わなくてもない。私は待ってた側なので「それ知ってる」「それ書いてあった」感じる部分も結構多かったけど、うーん、まー仕方ないのかな。久々の新刊という位置からすると。
でミスリード要員、って言い切るけど、回生とか、お供え流してる少女とかの辺り。謎バラ撒くだけで思わせぶりなのが、結論早く求めがちな人たちには評判が悪いのかも知れないなんてうっすらと。どう化けるか楽しみではあります。あ、化けるって意味では泰麒サイドの耶利ちゃんもだね。化けそう。あと鳩か…鳩さん…不気味。意味があるのかないのかもまだ判らんな。くるっぽー。
そして唯一の収穫(?)とも言えるのが、匿われて死んだ謎の武人様なのですけどね。
静之が「どういう外見だったか」を訊ねて、真っ先に髪の色と眼の色を答えるでしょ、菁華だったかな、女兵士さんが。元々彼女自身がその武人様を驍宗じゃないかって判断しちゃってた状態だから巨大なミスリードにしか見えなくてねえ。十二国記の人種(?)については今までさんざん、髪の色や目の色なんかが日本みたいな単一民族じゃなくてバラッバラなのは描かれてるから(清秀がみかん色の髪とかね)、白髪+赤眼=驍宗はちょっと早とちりが過ぎないかなあとは。
まあ仙籍入っていたのは間違いないから軍隊の中にはいたのかもだけど。で軍隊の中にいたんなら体戻して鴻基に行きたいもまあ納得はする。するけど、一読者としてはどうして「鴻基に行かなければ」なのか、とは、思ってしまいますですのよ。驍宗なら「鴻基に『戻らなければ』」、じゃ、ないのか? って。
老安に匿われるより前に彼を匿っていた場所があるっぽいから、何かしら謀りごとをする余地があり過ぎちゃってますのよねえ。もちろんそれは驍宗を守るためなんだろうから悪いことじゃないんだけれども。たまたま白髪+赤眼な外見であることを利用して勝手に影武者として演じ通した無名の方だったりしたらすげぇカッコいい。しびれる。
旅している間に妖魔が全く出て来ない、障害はいつも人間、だからな。王がいなくなってる訳じゃないはずなんだよな。王がいなかったらもっと妖魔うようよするよね。絶対。
ただなー。嵩里が(何かしらの策だとしても)勢いよく驍宗飛び越えちゃってるのに比べると李斎サイドは分が悪いですネ。国にとって民にとっては阿選だろうと何だろうと玉座に誰か座ってくんないとどーしようもない。だから本当に民を救おうとするなら嵩里の方が圧倒的にやることやってる感がしてしまう。ぶっちゃけ阿選にブッ殺されたっていい訳なんだよね麒麟としては。今の膠着状態よりは、次の泰果が実ってくれた方が解決が早いかも知れない。だから阿選に会うっていうのはすごく真っ当に感じる。李斎は驍宗と嵩里に拘り過ぎている。まーそりゃ阿選が王は納得出来ませんけどね。その気持ちは判るけど。
……あとは(3)(4)を楽しみに待ちます。けど買えたとしてもいつ読み終わることが出来るのだろう。遠い目。
私はあんまりキャラが好きとかないので、本当にあっさり驍宗が亡くなっていたとしてもそれはそれで…って方なので、どういう結末でも阿鼻叫喚はしない、と思う、多分。
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