EMS対空双眼鏡 Part. 3

超広角!倍率可変で星空散歩

公開:2012年3月16日〜
更新:2015年1
月11日 *対物レンズ 55FL を追加 しました。

アイピース: Baader Planetarium Hyperion 36mm
 

素敵なアイピースが追加になった! (2012年3月16日)

 EWV 32mm像面歪曲が気になったので、手持ちのEWO 40mm に交換、大変に具合良く使用していた。倍率は、6.3倍、実視界11°だが、最低有効倍率(口径÷7は7.1倍なので、口径は射出瞳径(7mm)×倍率 = 43.8mmとなってしまう。では、もう少し焦点距離の短いアイピースを使って射出瞳径を小さくし、口径を有効に活用したらどうだろう。

 という訳で、Baader Planetarium Hyperion 36mm の登場となった。これだと、見掛け視界が72°、6.9倍、実視野10.4°、射出瞳径は7.2mmとなり、口径は48mmとなる。また、このアイピースは 、この手の中では軽量(420g)で最大径が58mmと使いやすい。 美人・小顔対応だ。実際にアイピースを手にしてみたら、光がスカーッと抜けていて、いかにも良く見えそうな感じだ。アイ・レリーフも20mmあり、眼鏡を掛けたまま星図と双眼鏡を往復できる。

 で、実際に見てみたら、これが嬉しくて笑ってしまう程ピッタリだった。周辺像の乱れもあまり気にならないし、近くのマンションの壁の玄関灯群の、まあ美しい事! 夜景を見ていて飽きる事が無い。実視野はEWO 40mm より若干狭くなるが、見掛け視界が広くなったのが功を奏している。空も一段と暗くなって、星が映える。 また、アイピースの重量が左右2個で160g軽くなったので、天頂付近を見る時の操作性も向上した。EWO 40mm も、これはこれで実に良いのだが、Hyperion にするとコントラストが1段アップし、像がくっきり引き締まる。これは、アイピースの性能の差というよりも、鏡筒(焦点距離)や射出瞳径全てが絡んだ相性の結果だろうと思う。カタログ上は、EWO 40mm の見掛け視界は69°、Hyperion は72°となっているが、実際に見比べると3°どころか、10°は違っているように感じる。つまり、EWO 40mm の見掛け視界が公称値より随分狭いのではなかろうか。以前から69°??と思っていたが、上げ底なら程々にしてもらいたいところだ。

  口径 f 焦点距離 倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径
 

50mm

5

250mm          
EWO     40mm 6.3 11° 69° 20mm 8mm
EWV     32mm 7.8 10.9° 85° 20mm 6.4mm
Hyperion     36mm 6.9 10.4° 72° 20mm 7.2mm
NAV-HW     17mm 14.7 6.8° 102° 16mm 3.4mm
Docter UWA     12.5mm 20 4.2° 84° 18mm 2.5mm
Ethos     8mm 31.3 3.2° 100° 15mm 1.6mm
Ethos     3.7mm 69 1.4° 110° 15mm 0.7mm

EWO/Hyperion で超広角双眼鏡。それ以上で、小型EMS-Bino!

 一応、Hyperion がデフォルト。EWO 40mm は2”で最大実視野が得られる貴重なアイピースの一つなので、もちろん双眼望遠鏡でも活用。それにしても、双方アイピースを交換して見比べて、実に楽しい! 見たい対象があって見るのか、見る楽しさのために対象を見るのか、結局どっちも楽しいんですね〜。

 

雲台を変更 (2012年6月4日)

 Manfrotto の雲台がモデルチェンジ中で、501HDV が廃番になった。モデルチェンジしたMHV502AH はさらにカッコ良くなったが、さらに大きくなり、何故かカウンター・バランスは弱くなった感じがした。501HDV は安売りされているが、遂に定価の半額近くなっていて、これは、どう考えても“買い”だ! だって、対荷重6sのカウンター・バランス付きのヴィデオ・雲台が1万5千円ちょっとなんて、ありえないではないか。という訳で、これがP.S.T.双眼の雲台となり、P.S.T.双眼で使われていたGITZO G2380 をこの双眼鏡の雲台に換えた。

 この双眼鏡は、アイピースの重心が雲台から離れているので、Manfrotto 701HDV で天頂付近を見る時には、しっかりネジを締めないと勝手に上を向いてしまう。これがGITZO G2380改善された。また、雲台も三脚も.GITZO だから、デザインもバッチリ合致!

 

これ、何だかわかりますか? - Bino Checker 2 (2012年10月2日)

 またまた、松本さんが面白いものを創った。1 1/4サイズの筒なのだが、間にストッパーがあるだけ。これをどうやって使うかというと、一端を双眼装置に入れ、もう一端を双眼望遠鏡に入れる。光軸が合っているかどうか、一発で判明する、というもの。コロンブスの卵だ!

 で、実際に覗いてチェックしてみた。そのまま覗くよりは、ルーペで拡大した方が見え易い。いろいろなルーぺがあるが、NEAFでゲットした景品のルーペ (フルネル型・写真右)がピッタリだった。 光軸調整ノブをいじると像がダブって見え、光軸が合うと、像はピタリと一致し、スカッと見える。その瞬間は、北島選手ではないが、「超、気持ちイイ〜!」 。
 名付けてBino Checker 2。あって困る事はありません。

 

修理 (2012年11月7日)

 双望会の参加は機材が満載で、積み込むのが大変だった。機材を並べて順番に積む時、うっかり、お尻でこの双眼鏡を倒してしまった。三脚に装着すると双眼鏡の高さは1.1mあり、そこから約3sの物体がそれなりの角速度で倒れるので、衝撃はそこそこある。双望会の会場で見てみたら、見事に光軸がずれていた。また、目幅調整ノブを動かすと、引っ掛かりが生じていた。どうも倒れた衝撃で、このあたりがやられたようだ。

            *双望会では、良い像を見せられなくて、どうもすみませんでした。

 そこで、松本さんに修理に出した。幸い、ダメージは目幅調整の所の金属の棒が曲がっただけ、との事で 、ここを矯正してしっかり直って帰ってきた。もし、換えの同じ部品があったら、交換すればすぐに直るところだが、松本さんによると、この曲がった棒を真っ直ぐにして修理した、との事。曲がってしまった回転する棒を実用レヴェルに真っ直ぐにする、というのは、相当難しいと思うのだが、このあたりは流石だ。夜、届いたが、あいにく雨。チェックできない。


これ、月ではなく、太陽です。

  翌朝、水墨画のような濃霧の朝景色でチェックしたが、バッチリ。何といっても屈折双眼の良いところは、眼の延長、極めて自然に情報が入ってくる事だ。しかも、その情報が格別な世界なのだ。

 

雲台がManfrotto 502AHへ (2013年10月31日)

 昨年の6月にP.S.T.双眼 の雲台が変更となった影響で、このEMS対空双眼鏡の雲台がGITZO G2380 となったが、今年の10月末にP.S.T.双眼一式を手放してしまった。その後、ヨドバシカメラで、再度Manfrotto 502AH をチェックしてみたら、カウンター・バランスが有効で、しかも、アームを逆向きに装着しなくても、しっかり天頂を向く事がわかった。video撮影の時の雲台が無くて困っていたので、G2380 は本来の使用目的のvideo雲台に戻し、502AH をあてがう事にした。

 というのも、この対空双眼鏡はアイピースがそれなりの重量があり、全体の形がL字形なので、常に対空双眼鏡が天頂を向く方向に力が働く。これを防ぐためには、動きを硬くするように垂直方向のトラクション・ノブを締め、また、上方向を見る場合には、さらにきつめにノブを締める必要があった。つまり、フリー・ストップ感が損なわれていた。502AH のカウンター・バランスは有効で、垂直方向のトラクション・ノブを丁度良い所にセットするとフリー・ストップ感がかなり改善され、使い勝手が随分良くなった。また、水平方向の動きのフィーリングと固定した時の感触は天下一品! 以前、店頭でチェックした物は不良品だったのだろうか?

 雲台は大きくなったが、重量はG2380 と同じ1.6s。今年の双望会には、これでデモ。ただ、この対空双眼鏡は、めっぽう夜露に弱い。真っ先に失神してしまう。使用しない時はきちんとカヴァーし、見る時だけ外すようにしないといけない。

 

重心の調整 (2013年11月9日)

 普通にEMS対空双眼鏡を載せると、双眼鏡の重心が後にあるので、双眼鏡が自然と天頂を向いてしまう。その対策のために導入した雲台なのだが、アイピースの垂直ラインと三脚の中心ラインを合わせると、指1本でスーッと動くフリー・ストップが実現する。雲台の先っちょに双眼鏡があるので、見た目は今一だが、やはり機能優先。これで行く事にした。双望会では、見た目を優先して双眼鏡を固定したので、動きは今一硬めだったが、反省。

 

ファインダーの交換+アイピースの追加 (2013年12月2日)

 

 双望会のフリー・マーケットで、Sky Surfer III を\2000でゲットしたので、これに交換した。取り付けは、何かのオマケでもらった超小型ボールヘッドを利用して行った。写真のアイピースは、Hyperion 36mm ではなく、31mm。広角仕様は36mmで実視野10.4°。しかし、広がった散光星雲を見るには、31mmで射出瞳径を6.2mmに抑えてコントラストを上げた方が良いので、このアイピースが追加になった。横浜の空でチェックしたら、口径が大きくなったように微光星がより見えるようになった。

  口径 f 焦点距離 倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径
 

50mm

5

250mm          
Hyperion     36mm 6.9 10.4° 72° 20mm 7.2mm
Hyperion     31mm 8.1 8.9° 72° 18mm 6.2mm

   

クイック・シューを外した (2014年5月15日)

 今までは、この三脚と雲台はフィールドスコープと兼用になっていたので、すぐに上部が置換できるように、クイックシューVelbon QRA-635L をかませていた。このフィールドスコープは、普段はObsession 18" UCファインダーとして使用していて、その装着にはこのクイックシューを使用していたためである。また、以前の雲台は双眼望遠鏡の目幅調整部分と若干干渉していたので、クイック・シューを装着する事で回避していた。ところがその後、フィールドスコープの雲台がZitzo G2180 となり、また、この場合には三脚は大活躍のGitzo のトラベラー GT1542T を使用するので、この対空双眼鏡にはクイック・シューは不要となった。加えて、今度の雲台は、目幅調整部分と干渉しない。

 という訳で、クイック・シューを外した。元来、この雲台の装着プレートがクイック・シューのようなものなので、今まで二重になっていた訳だし、お陰で不安定な要素が一つ減り、見た目もスッキリした。これでまた、さらに完成度が高まった!

  

フィルターBOX内蔵2”延長筒 (2014年6月15日)

 BORG 125SD-Bino で、フィルターBOX内蔵2”延長筒の習作が成功を収めた。では、本機の場合はどうか? M57/60延長筒S 7602 を省き、2インチホルダーSを装着すれば、2”延長筒はオリジナルの44mmから49mmと5mmだけの延長ですみ、OK。
 
広角仕様はHyperion 36mm で実視野10.4°だが、広がった散光星雲を見るには31mm を使うので、このフィルターBOX内蔵2”延長筒が有用となる。これで、これからは、おっくうがらずにフィルター・ワークが楽しめるようになった。

  

フィルターBOXの組み込み (2014年9月4日)

 上記、フィルターBOX内蔵2”延長筒の習作が成功を収めた。 APM-Bino ではNAV-HW 17mm で焦点が出ないので、松本さんにEMS 接続アダプター の加工と特性アイピース・ホルダーの製作を依頼した。どうせなら、と本機も同じ仕様にしてもらった。

 

 習作では、EMS ユニットとの接続には、2インチホルダーSSII 7501 を使用したが、松本さん特性の接続アダプターでは1mm短く、光路長は10mm。ここは、1mmでも短くなったら、大いにありがたいところ。また、アイピース・ホルダーの長さは 、常用のアイピースHyperion に必要最小限の28mmとし、バンド・クランプ。以上は、ネジの切り方も考えられているので、アイピース固定ネジは6時方向、フィルター交換ノブは、左は10時、右は2時方向で、逆ハの時形、また、このフィルターBOX内蔵延長筒本体の固定は、左は9時と6時、右は3時と6時方向にネジが出ていて、フォーカス操作で干渉する事は無い。ちなみに全長は53mmとなった。


フィルターのケースは、友人が所有していたものを譲ってもらって、めでたく全て収納。また、フィルターは、特性2”アイピース・トランクに全て収納できる(乾燥剤、防カビ剤、クロスは取って撮影)。

 とまあ、いつもながら鉄壁の完成度で流石! フィルターは、今は、CLS、UHC、OIII、笠井Hβ、NDフィルター:(Kenko のZeta シリーズ、52mmがあるので、直にフィルター・リングに装着)4×、8×のラインアップ。また、今後の希望的展開としては、最初からアイピース・ホルダーにフィルター・ケース7518 を挿入できるスリットを設けていただけたらありがたい。そうすれば、BORG フィルターBOXn 7519 を購入する必要が無いから。

 

対物レンズ 55FL (2015年1月11日)

  この対空双眼鏡を手にしてからすぐ、口径50〜60mm、焦点距離250mm以下の高品位対物レンズの登場を望み、Part.1でも、その事に触れていたが、4年経ち、やっと登場した。その名は55FL。 口径は5mm upしたが、焦点距離は同じ250mm! そしてフローライトである。この対空双眼鏡は、それこそ口径77mmだって置換できるが、この対空双眼鏡の目的は、低倍率、超広角なので、焦点距離が長くなると、意味が無くなる。55FL なら同じ焦点距離 なので、超広角のまま、画質の向上が期待できる。


55FLとミニボーグ50

 ところで、口径の5mmのupは、本器の場合どうなのだろうか? というのも、Hyperion 36mm で射出瞳径は7.2mm、31mmでも6.2mmあるので、対物が55mmとなると、それぞれ7.9mm、6.8mmにもなってしまう。また、ミニボーグ50でも、像は 相当優秀なので、これを交換する価値はあるのだろうか? まあ、これは当然試さない訳にはいかないので、注文。百聞は一見にしかず、だ。

 さっそく装着してみた。デザインは、ミニボーグ50の方がいい。せっかくコンパクトなのに、55FLだと、全長が間延びしてしまう。で、覗いてみると、、、何と、ピントが出ない! 同じ焦点距離だというのに、どういうこっちゃ?


対物・先端側から(左)と装着側(右)

 55FL が長いのは、フードのせいかと思いきや、外してみて理解。フードの長さは、ほぼ同じだった。つまり、ミニボーグ50では、装着する部分からすぐに対物レンズがあるが、55FL では、2cm以上、奥にあった。これではピントが出ない。そこで、とりあえず、フィルターBoxを外して像をチェックしてみた。納得。やはり1ランク上だった。月でも色収差はグッと抑えられる。また、今は見ごろなc/2014 Q2 ラヴジョイ彗星でも、広がりが大きく、見ごたえがあった。

 さて、どうするか? 松本さんに相談したら、双眼鏡の延長筒+EMS側フランジを撤去し、メス接続にすると、14o光路長が稼げる、との事(ただし、第1ハウジングの開口端の3方にセットビス加工が必要)。しかし、 それでもギリギリ。この本体は、ミニボーグ50で設計され、特化しているので、あまりいじりたくないところだ。また、今のミニボーグ50の像だって、相当すばらしいのだ。という訳で、これはこのまま使う事とし、55FL は、それ用の対空双眼鏡を考える事にしようか??

          

   続く.....!

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