現場日記16【子どものこと】
小学校の校庭の樹木剪定を市からの依頼で時々やる。
休み時間になると子どもらがばらばら飛び出してきて遊びだす。
木に登って剪定している真下に来ると、間髪入れずこう聞く。
「なにしてるんですか!?」
最初は可愛らしいと思って丁寧に応えていた。
「木の床屋さんだよ」とか「危ないからどいてね」とか。
何度目かからは聞こえないふりをした。
すると彼らは連れ立って大声で言う。
『な・に・し・て・る・ん・で・す・か〜!』
『考えろ!』
木の上から一喝する。
子どもらはきょとんとした顔をする。
働くオジサンが何で怒っているのか分からないのだ。
そのうち見るのに飽きてどこかへいってしまう。
しばらくしてまた別の一団がやってきて同じことを言う。
「なにしてるんですか!!」
児童公園の剪定もする。公園の樹木管理は数年に一回だから木は伸び放題に伸びている。一通り剪定し終えるとゴミの量は相当なものになる。パッカー車に入れていると放課後の子どもらが寄ってくる。パッカー車の積込み口を地獄の窯をみるように見入る。枝葉を入れながら、素知らぬふりをして近づき「うおらぁ!」と吼えながら足元すくって抱きかかえ、回転するゲートの中に放り込むふりをする。驚き怯える子どもの目を見て笑う。 「このおじさん怖ェ〜!」
子どもは全身活き鯵のように跳ねて興奮し、今度は一定の距離を保ってくれる。
自転車で毎朝通勤する道は小学校の通学路になっている。子どもらは道一杯に広がって歩く。いくらベルを鳴らしてもよけないし、よけても後ろをみないでランダムに動くからぶつかりそうになる。
「おらおらおら!」
子どもの波間を怒鳴りながらくぐりぬけてゆく。坂は立ちこぎで登る。登りきると平坦な畑道になる。その畑道で必ず会う小1くらいの女の子のふたり連れがある。ひとりが平安時代のお稚児のような顔をしている。ビョークを色白にしたような。その子をみてキュンとしながら一日がはじまる。
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