被団協新聞

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「被団協」新聞2011年 12月号(395号)

2011年12月号 主な内容
1面 『被爆者という生き方』継承を
被爆者の資料収集・発信の基地に ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会発足記者会見

「制度見直しに最大限努力する」/小宮山厚労相と第2回定期協議
第23回谷本清平和賞 坪井代表委員が受賞
2面 原発からの撤退求める要請 電力各社本店に申し入れ<続報>
3団体の統一要求書 /厚労相との第2回定期協
現行法改正賛同議員署名
非核水夫の海上通信88
3面 被爆者を受け継ぐ
人類の良心を信じる越智さんの心 「正しい戦争などない」の言葉胸に

東京原爆展 7000人が来場
被爆者交流会に75人 /広島県北広島
4面 まどから
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『被爆者という生き方』継承を
被爆者の資料収集・発信の基地に
ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会発足記者会見

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(右から)肥田舜太郎、大江健三郎、安斎育郎、岩佐幹三、木戸季市の各氏

 「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」準備会が、会の発足に向けた記者会見を11月25日都内で開きました。呼びかけ発起人の安斎育郎(立命館大学名誉教授)、岩佐幹三(日本被団協代表委員)、大江健三郎(作家)、肥田舜太郎(日本被団協顧問)の4氏が出席し、発言しました。

 はじめに、司会の木戸季市日本被団協事務局次長がこの会の設立に至った経緯を紹介し、続いて4氏が発言。「被団協の結成宣言を初めて読んだとき、涙が出るほど感激した。この被爆者運動の基本精神を、平和を愛する一人一人に届け、貴重な資料を活用し情報発信する基地としたい」(岩佐幹三さん)。
 「被爆者は二度と被爆者をつくらないため、亡くなった人々を記憶しつつ世界の現状を変えていくという運動を続けて来られた。世界中でヒバクについて切実に考え直されている今、頼りになるのが被爆者という生き方だ、それを新たに継承し直そうという訴えは真っ直ぐに受け止められる。文学をやっている人間として原民喜など原爆を経験した作家の作品をもう一度読むことも会の仕事の一つにしていきたい」(大江健三郎さん)。
 「一人一人の個の体験の集積の上に社会的記憶を築き上げ、人間の顔をしたムーブメントとしたい。趣旨に賛同する誰もが参加しうるこの会に、財力、時間、知恵、得意技などそれぞれの力を提供していただき、それらを束ねて若い人々に伝えられるよう努力したい」(安斎育郎さん)。
 肥田舜太郎さんは「生きる意欲も奪ってしまう放射能被害を伝え、核と手を切り、安全で平和な世界を打ち立てたい」と語りました。
 会の結成総会は12月10日(土)13時半〜東京・四ツ谷の主婦会館プラザエフ8階で。総会後15時半からの大江健三郎さんによる記念講演には、どなたでも参加できます。

「制度見直しに最大限努力する」/小宮山厚労相と第2回定期協議

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(右から)久保山栄典さん、坂本治子さん、小宮山厚労相

 厚生労働大臣と日本被団協、原爆症認定集団訴訟全国原告団、同弁護団連絡会との2回目の定期協議が11月18日厚労省9階省議室で行なわれました。2010年1月以来、1年10カ月ぶりの定期協議には、小宮山洋子大臣ほか健康局長ら4人、日本被団協、原告団、弁護団から15人が出席、午後5時半から1時間余にわたって協議しました。全国から被爆者、支援者、弁護士など60人余が傍聴席につき協議を見守りました。

 協議は、小宮山大臣、田中熙巳日本被団協事務局長のあいさつで始まり、久保山栄典さん(埼玉県原爆被害者協議会副会長)と坂本治子さん(東京都原爆被害者団体協議会)の2人が被爆体験、訴訟体験について証言しました。あらかじめ被団協、原告団、弁護団3者が大臣あて提出していた「原爆症認定に関する統一要求書」(2面に概要)について宮原哲朗弁護団事務局長が説明、小宮山大臣が回答し、その後厚労省側と3者代表の協議が予定の1時間をこえて行なわれました。
 注目された大臣の回答は、厚労省の従来の見解を超えるものはありませんでしたが、くりかえし“みなさんのご要望は真摯に受けとめたい”とのべました。
 現行法改正については、現在、進行している原爆症認定制度の在り方に関する検討会の結論をうけ制度の見直しに最大限努力したいとしました。
 原爆症認定訴訟の判決や新しい審査の方針に反し、認定申請の大量却下が続いているのは、被爆距離など別基準で判定しているのではないかとの問いについて、司法の判断を一般化することはできないと聞いているが、どうしてこのようなことになっているのか詳しく聞いてみたいとのべるにとどまり、局長は、結果としてそうなった、機械的に判定しているわけではないとしました。
 認定申請を審査している医療分科会の委員を一新すべきではないかとの問いに、誠実に審査していただいており一新すべきという意見は当らないとしつつも、以前の審査基準にこだわっている委員がいるのではないかとの懸念については詳しく聞いて必要な事があれば対応したいとしました。
 原爆被害に対する国の償いについて、厚労省の方針とまったく違うので、この場で何か言うことはできないとしました。
 定期協議については前回から1年10カ月かかったことについて申し訳ないとし、次回は来年秋ごろを事務方で検討しているとのべ、定期協議までの間、事務レベルで協議するための担当副大臣または政務官をおくことについては検討するとのべました。

第23回谷本清平和賞 坪井代表委員が受賞

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 日本被団協代表委員の坪井直さん(86歳)が、財団法人ヒロシマ・ピース・センター(鶴衛理事長)の第23回谷本清平和賞を受賞、11月13日に贈呈式が行なわれました。
 鶴理事長は、病身を押して国内外で被爆体験を語り、核兵器廃絶と世界平和を訴えつづけてきた坪井さんの功績をたたえました。記念講演で坪井さんは、爆心地から1・2キロの路上で被爆し、大やけどを負った体験を証言。人の命の大切さと戦争反対、核兵器廃絶を強く訴えました。
 同賞は、原爆で親を失った子どもの支援活動に尽力した広島流川教会の故谷本清牧師の遺志を継ぐため、1987年に創設。これまでに故森瀧市郎さん、吉永小百合さん、新藤兼人さんなどが受賞しています。

原発からの撤退求める要請 電力各社本店に申し入れ<続報>

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四国電力要請

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東北電力要請

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北海道電力要請

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北陸電力要請

 原子力発電からの撤退を求める電力各社への要請が、ひき続き、日本被団協の各ブロックが担当して行なわれています。
 四国電力へは10月25日松浦秀人代表理事と香川、高知、愛媛の各会長ほかが要請。被団協の要請書とあわせて四国4県の被爆者の会会長連名の要請書も提出し、被爆体験を踏まえて原発撤退への思いを訴えました。
 東北電力へは11月4日田中熙巳日本被団協事務局長と青森、秋田、岩手、宮城、新潟の代表が要請。「福島原発の事故は人ごととは思えない」など、廃炉を迫りました。
 北海道電力へは11月4日越智晴子北海道被爆者協会会長と札幌市の会会長ほかが要請しました。北電側は、自然エネルギーの導入に言及したものの、安定供給に難があるとし、「国策」でもある原子力発電は継続との姿勢を崩しませんでした。
 北陸電力へは11月9日大和忠雄代表理事と静岡、愛知、岐阜、三重、富山、石川、福井の代表が要請。「放射線被ばく者をこれ以上つくるな」などと訴えました。
 同様の要請を、山梨では、県原水爆被害者の会の高橋健会長が共同代表を務める「核兵器・原子力問題を考える懇談会」が10月12日東京電力山梨支店に行ないました。石川では県原爆被災者友の会が、他団体とともに10月13日県知事に対し行なっています。

3団体の統一要求書 ―― 厚労相との第2回定期協

 厚労相との第2回定期協で日本被団協、全国原告団、全国弁護団連絡会の3団体が厚労相あて提出した統一要求書は、次のようなものです。
 第1回定期協議で、情報開示など一定の前進がみられたものの、最も重視していた認定基準の再々改定については前進が見られず、依然として被爆者援護法の趣旨や集団訴訟の判決と明白に矛盾する審査が継続されており、早期の援護法改正のみならず、審査基準の早期再改定が必要であることがますます明らかになったとして4項目を要求しています。
1、定期協議開催の方法について
2、認定基準と認定実務に関する要求
 (1)現行の審査の方針の再々改訂
 (2)審査結果の開示の充実
 (3)医療分科会の委員の入れ替え
3、被爆者援護法の改正
 (1)援護法の抜本的改正について
 (2)原爆症認定制度検討会について
4、定期協議の開催時期と事前あるいは事後の協議

「厚労相との定期協議」とは
 原爆症集団認定訴訟を終結するにあたって2009年8月6日、当時の麻生太郎総理大臣と日本被団協代表が交わした確認書第4項で決められた協議です。同項は次のことを決めています。「厚生労働大臣と被団協・原告団・弁護団は、定期協議の場を設け、今後、訴訟の場で争う必要のないよう、この定期協議の場を通じて解決を図る」。この確認書にもとづく厚労相との第1回協議は、2010年1月14日、長妻昭大臣のもとで行なわれました。第2回は2011年1月に行なわれることになっていましたが、厚労省側の都合で延期されていました。

現行法改正賛同議員署名

(続報 11月25日現在)
衆議院
和田 隆志 民主党 広島 7区
平山 泰朗 民主党 東京 13区
坂口 岳洋 民主党 山梨 2区
田村 憲久 自民党 東海 比例
塩川 鉄也 共産党 北関東比例
宮本 岳志 共産党 近畿 比例
こくた恵二 共産党 近畿 比例
富田 茂之 公明党 南関東比例
参議院 (数字は選出年度=平成)
市田 忠義 共産党 比例 22
井上 哲士 共産党 比例 19

被爆者を受け継ぐ 人類の良心を信じる越智さんの心 「正しい戦争などない」の言葉胸に

北海道被爆者協会会長 越智晴子さん ―― 塾講師 中井桂子さん

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越智晴子さん(左)と中井桂子さん(右)=11月6日北海道被爆者協会事務所にて

 北海道被爆者協会会長の越智晴子さん(88歳)から中井桂子さん(40歳・塾講師)へ。11月6日同会事務所で、「いつも隣にいるけれどまとまった話を聞くのは初めて」という、事務局の平真知子さんも聞き手に加わって、3時間を超える語りとなりました。
 越智さんは1923年生まれ。父は医師、神戸で開業していました。軍医で広島にいた兄に頼まれ、薬品を届けに行き滞在中被爆、22歳でした。戦後は夫の実家のある北海道で、北海道被爆者協会創立時から運動を続けてきました。「語るために生かされている」と越智さんは話します。
 中井さんの感想です。


母への思い
 原爆投下直後、越智さんが倒壊した自宅のがれきにうまってしまい、死を覚悟したときに「もう一度お母さんに名前を呼んで欲しいと思った」というのを聞いて、2人の娘を持つ身として、胸が締め付けられました。
 いったい、どれだけの人が、あの広島で、長崎で、そして日本中、いえ海外の戦地で、そんな思いとともに命を落としていったのか…。本当に戦争はしてはいけない、原爆など二度と使ってはいけないと強く思わずにはいられません。

人としての思い
 被爆直後、やっと助けられ軍のトラックに乗り避難所に向かうときに、越智さんは別世界になってしまった広島の街をみながら「終戦したら、この爆弾のことを世界中の人が知るだろう。そうしたら戦争はなくなるだろう。自分は死ぬけれど、戦争のない世界が来るための犠牲になるのなら、笑って死ねる」と思ったそうです。この言葉は私にとって衝撃でした。あのとき越智さんは、原爆投下後の日本や人類の良心を疑わなかった、ということです。
 私が育った千歳市は自衛隊の町で、米ソ冷戦時代には、夜中に何度も自衛隊機がスクランブルにでる戦闘機音が響き渡ったものでした。「戦争が始まるのではないか、そうしたら、千歳が真っ先にやられる」と不安がる私に、母が「人類は二度と核爆弾など使わないし、日本はもう戦争はしない。世界はそんなにバカではないとお母さんは信じているのよ」と話したことを思い出しました。

被爆者の方々に感謝
 被爆者の戦後がいかに多くの苦難を乗り越えなくてはならなかったか、越智さんの「突き飛ばされて倒れて、立ち上がった、と思うやまた突き飛ばされる感じ」という言葉からも想像に難くありません。そんな中を生き延びてきた被爆者のみなさんに、「生きていてくれてありがとう」と心から思いますし、平和のために身を削って活動しておられる被爆者の方々に本当に感謝しています。

母親として
 私は、「平和で安心して暮らせる日本」を子どもたちに、未来に、引き継いでいきたいと考えています。そのためにも、守りたい子どものいる母親の一人として、一人でも多くの人に原爆被害を伝えられるよう、越智さんの「正しい戦争などない」という言葉を胸に、努力を重ねていきたいと思います。

東京原爆展 7000人が来場

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 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)は、東京都庁第一本庁舎45階の南展望室で、11月3日から7日までの5日間、「伝えようヒロシマ・ナガサキ 東京原爆展」を開催しました。都庁展望室で4回目。入場者は7000人にのぼりました。
 今年の原爆展の特徴は東京の被爆者が描いた被爆当時の絵36枚を展示したことです。「原爆と人間展」パネル、昨年国連本部で展示された原爆展パネルとともに、現物資料なども展示しました。
 都内の観光名所でもある展望室には、欧米やアジアから訪れた人々、社会科見学の小学生も入場。中国残留孤児だった人50人も観光で来場し、その中の多くの人がパネルに見入り、通訳ボランティアと被爆者を交えた交流がはじまり、戦争被害者の思いを共感し合っていました。(東友会)


被爆者交流会に75人=広島県北広島町

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 広島県北広島町原爆被害者の会は10月27日、75人が参加して被爆者交流会を開きました。
 箕牧会長が「1942年12月の真珠湾攻撃による開戦から70年。そして広島、長崎の原爆で多くの身内を亡くし、泣き叫びながら私たちは生きてきた。日本被団協では、国に対し原爆死没者への補償、被爆者全員への手当支給などについて国に要求している」と報告。来賓の竹下町長のあいさつのあと、日本被団協の坪井代表委員が講演しました。現行法改正を求める署名も全員で行ないました。

まどから

 「相談のための問答集」No.28ができました。1冊400円(50冊以上のとき300円、送料別)です。お申込みは中央相談所まで。

手帳取得できました

 本紙「証人探し」390号に掲載した木村留吉さんと、392号に掲載した橋本光雄さんに、手帳が交付されました。
 みなさまのご協力、ありがとうございました。

運動強化募金のお願い

 日本被団協結成55周年の今年、私たちは現行法(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律)の改正を求める要求「原爆被害者は国に償いを求めます」を決定しました。原爆の最大の犠牲者である死没者に対して国の償いを求め「ふたたび被爆者をつくらない」という誓いを国に立てさせること、日本が世界の核兵器廃絶への動きの先頭に立つことを求めるものです。
 今年3月に起きた東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故による被災者の方々の姿に、私たちは自らの苦悩を重ね、政府および東京電力に対策を求めました。
 私たちの現行法改正要求は、過去の被害を償わせることによって、未来にわたって、あらゆる核被害を拒否する意思をもったものです。全国で要求実現のための国民運動を展開していきます。
 今月号に付録として同封した「お願い」もご覧のうえ、皆さまの大きなご支援をいただけますようお願い申し上げます。
日本被団協