2004年2月の映画  戻る


シービスケット

2003年 アメリカ 138分
原作 ローラ・ヒレンブランド
監督・製作・脚色 ゲイリー・ロス(「カラー・オブ・ハート」
撮影監督 ジョン・シュワルツマン
音楽 ランディ・ニューマン
出演 トビー・マグワイア(ジョニー・”レッド”・ポラード「スパイダーマン」「カラー・オブ・ハート」)/ジェフ・ブリッジス(チャールズ・ハワード「サンダーボルト」「スターマン」「ビッグ・リボウスキ」)/クリス・クーパー(トム・スミス「アメリカン・ビューティー」「真実の囁き」「ボーン・アイデンティティー」「アダプテーション」)/エリザベス・バンクス(マーセラ・ハワード)/ゲイリー・スティーブンス(ジョージ・”アイスマン”ウルフ)/ウィリアム・H・メイシー(”ティック・トック”マクゴローリン) ウィリアム・H・メイシー
メモ 2004.2.28 千日前敷島シネポップ
あらすじ
1933年近代アメリカの試練”大恐慌”は長期化し人々は疲弊していた。その頃一頭の馬と3人の男たちが出会う。馬の名はシービスケット。血統はいいのだが小柄でのんびり屋の馬は”性根をたたき直すため”厳しく調教され混乱していた。騎手のジョニー・”レッド”・ポラードは大恐慌のために無一文になった両親から16才で厩舎に預けられた。両親は泣く泣く本人のためを思ったのだが見捨てられた気持ちから抜け出せない。育ちはよかったのだが金のためにボクサーをしてボロボロになりたがるほどすさんでいる。調教師のトム・スミスは根っからの西部の男だ。カウボーイは前世紀の遺物になっている。それでも生き方を変えるつもりは、ない。大富豪のチャールズ・ハワードはアメリカンドリームを体現した自動車王だったが一人息子を皮肉にも自動車事故で失う。喪失感は埋められない。そんな根無し草の一頭と3人はアメリカ一の競走馬実現のために進みはじめる。触媒となったのはひとりの女性だった。(大恐慌の悲劇とアメリカンスピリットがこれでもかっと出てくるがここは目をつぶりそれもこれもあんたらもアメリカ史であると認めよう)
感想
「ミスティック・リバー」がくせ球とするなら「シービスケット」は直球勝負の映画だ。小品ながら名作。映画館で見る事を強くお薦めする。
さぼてんは競馬というと「緑園の天使(もしかして、、、、古すぎ? エリザベス・テーラーとミッキー・ルーニーの1945年の作品)」を思い浮かべるというほどお馬さんには疎い。でも疾風(ハヤテ)のように馬が疾走するのを見るのは好き。「テラコッタ・ウォリア」もかっこいいよ。「シービスケット」は地響きさえ感じられる。息が詰まる。  マスクをかぶっている馬の顔ってちょっと間が抜けていてちゃめ。この馬は目で物を言っている。
パンフの解説にもあったように「ウマもよければヒトもいい」のだ。主役4人はいわずもがな。騎手ジョージ・”アイスマン”ウルフ役のゲイリー・スティーブンス。静かながらほんまもんの勝負師の目だ。ウルフが緊張なら緩和はラジオDJのウィリアム・H・メイシー扮する”ティック・トック”マクゴローリン。この生き方はさぼてんのあこがれだな。このヒトだけで映画が出来そうだ。そしてほとんどセリフのない影のように寄り添っている黒人のサム。主人に忠実で坊ちゃんのフランキーをかわいがっていたように(恐らく)同じようにシービスケットの事もかわいがって誇りに思っている。
一番好きなのはトム・スミス(クリス・クーパー)が野宿をしているところに現れたハワード(ジェフ・ブリッジス)に「腹が空いているのか」と聞く所。アメリカ魂を感じる。
最後はシービスケットの視線になるんだよ。開放された爽快感が心憎い演出だ。本当に完成されている。と思ったらハワード(ジェフ・ブリッジス)が宿敵ウォーアドミラスのオーナーが「完璧な馬だ」と言ったのに対し「完璧なものなどない」と夜中に言うよな。「完璧なものってないんちゃうん」なにやしら矛盾があるやなしや・・・(またもやハスから見てしまう悪いクセ)
 
2月11日の祭日、千日前敷島シネポップに「シービスケット」を観にいく。水曜日レディースディを甘く見ていたんだよな、これが。満席。すごすご帰る。今日梅田のナビオTOHOプレックスにまたもや「シービスケット」を観にいく。10分も前に行ったのに満席。それから御堂筋線で難波に駆けつける。3度目の正直やっと見れた。そのかいあったよ。
おすすめ度★★★★1/2
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ミスティック・リバー

2003年 アメリカ 138分
原作 デニス・ルヘイン
監督 クリント・イーストウッド
脚本 ブライアン・ヘルゲランド
撮影監督 トム・スターン
美術 ヘンリー・バムステッド
出演 ショーン・ペン(ジミー・マーカム)/ティム・ロビンス(デイブ・ボイル)/ケビン・ベーコン(ショーン・デイバイン)/マルシア・ゲイ・ハーデン(セレステ・ボイル)/ローラ・リニー(アナベス・マーカム)/トーマス・ギーリー(ブレンダン・ハリス)/エミー・ロッサム(ケイティー・マーカム)/ローレンス・フィッシュバーン(ホワイティー・パワーズ)
メモ 2004.2.19 千日前弥生座
あらすじ
ボストンの労働者地区イーストバッキンガムの路上で3人の少年が遊んでいた。11歳の3人がうちたての生コンに自分たちの名前をいたずら描きしている。そこへ男が恫喝する。手錠をじゃらじゃらさせて警官のようだ。男たちは母親しかいないデイブを車に乗せて連れ去っていった。行方不明の4日後デイブは自力で脱出する。デイブの身の上に何が起こったのかは明らかにされなかったが、その出来事は3人に暗い暗い影を落とす。もはや遊ばなくなった3人に25年が過ぎた。36歳になった3人はまた運命にからめとられる。被害者の父、捜査する警官、そして容疑者として。
感想
暗い・・・・重い・・・重苦しい・・・・重厚。ほんでもってわかりにくい、、、、むつかしい
泣く泣くと聞いていたけれどそんな事は、ない。とても感動するという事も、ない。どの人にも感情移入がしにくい。硬い殻があって、安易に他人が差し出す手を拒否しているみたい、な映画だ。深く暗い川のようにその底にはなにが沈んでいるか見通せない。 人々は幸せになろう勝ち組みになろうとあがいている。
 
 
「長い間の負い目をあの二人はふっきったみたい。気が軽くなったって人の心はこわいね。」とさぼてんが言うと一緒に映画を見たお方は「違うんちゃう? 新しい傷をだかえるんちゃうかな。これでは終わらないみたいな。」  う〜ん。なるほどな。
おすすめ度★★★1/2
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飛ぶ教室

2003年 ドイツ 114分
原作 エーリヒ・ケストナー「飛ぶ教室」
監督 トミー・ヴィガント
脚本 ヘンリエッテ・ピーパー/フランツィスカ・ブッフ/ウィッシー・ライヒ
撮影 ペーター・フォン・ハラー
美術 インクリット・ヘン
音楽 ニキ・ライザー/ビーバー・ギュラッツ
出演 ハウケ・ディーカンフ(ヨナタン)/テレザ・ウィルスマイヤー(モナ)/フィリップ・ペータース=アーノルズ(マルティン)/フレデリック・ラウ(マッツ)/ハンス・ブロイヒ・ヴトケ(ウリー)/フランソワ・ゴシュケ(セバスティアン)/ウィルヒ・ノエテン(ベク”正義”先生)/セバスチャン・コッホ(禁煙)
メモ 2004.2.15 梅田ガーデンシネマ
あらすじ
ライプチヒの聖トーマス校は少年合唱団が有名だ。寄宿舎には孤児のヨナタン、両親が離婚する首席のマルティン、貴族の息子ウリー、いつも腹をすかせているマッツ、理系のセバスティアンがいた。子供、大人、男女を越えた友情の物語だ。
感想
ヨナタンが空港で荷物を取ろうとすると犬がボックスに入れられたままくるくる手荷物コンベアを回っている。置き去りにされたのだ。映画ではヨナタンは孤児院の前に捨てられた事になっているけれど、原作では4つの時にニューヨークの港からたったひとりで船に乗せられる。祖父母がハンブルグで出迎えるからといって父は去っていった。ところがハンブルグの港で船長さんと待てど暮らせどおじいさんとおばあさんはこない。何年も前に死んでしまっていたから。というのが犬にアレンジされていたのか。
 
映画を見終わって「飛ぶ教室」を再読する。百回くらい読んだかもしれん。「ふたりのロッテ」とともに今でもたまに読みたくなる本なのだ。今読んでも生き生きしている。両大戦間、ヒットラー前夜の1933年に書かれた小説。ケストナーには独特の味わいがある。どちらかというとドイツ人らしく暗いめ。映画の方は不幸なエピソードをさらっと流していた。「子供の涙はけっして大人の涙より小さいものではないのです!」「不幸にあっても恐れずそれをまともに見つめるようにしてください」卑怯者になるな勇気をもてと言っているのだな。 エーリヒ・ケストナーは両親が結婚7年目に出来たひとりっ子でありお父さんは遺伝的な父ではないと言われている。「私が子供だった頃」を読んでも両親特に母親に溺愛され幸せでありながらいささか複雑な家庭だったよう。早熟で子供でありながら大人であったような。両親の愛の間でバランスをとるのに腐心している。原作では影が薄めの「拳闘家志望」のマッツが映画ではとても魅力的だったのに驚いた。子役の力だな。
おすすめ度★★★1/2
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ニューオーリンズ・トライアル RUNAWAY JURY

2003年 アメリカ 128分
原作 ジョン・グリシャム「陪審評決」
監督 ゲイリー・フレダー(「デンバーに死す時」「コレクター」「サウンド・オブ・サイレンス」
脚本 ブライアン・コペルマン&デビッド・レビン/リック・クリーブランド/マシュー・チャップマン
撮影 ロバート・エルスウィット
衣装 アビゲイル・マレイ
音楽 クリストファー・ヤング
出演 ジョン・キューザック(陪審員ニック・イースター)/ジーン・ハックマン(被告側陪審コンサルタント・フィッチ)/ダスティン・ホフマン(原告側弁護士ローア)/レイチェル・ワイズ(謎の女マーリー)/ブルース・デイビソン(被告側弁護士ケーブル)/ブルース・マッギル(ハーキン判事)/ジェレミー・ピーブン(原告側陪審コンサルタント・ローレンス・グリーン)/ニック・サーシー(ドイル)/ジェニファー・ビールス(教師・陪審員レンベック)
メモ 2004.2.1 千日前セントラル
あらすじ
ニューオーリンズで全米注目の陪審員裁判が始まる。原告は銃乱射事件で夫を失ったセレスト・ウッド、対する被告は銃製造会社のヴィックスバーグ社。今だかつて銃メーカーが裁判に負け賠償金を支払った事はない。この戦いは one or nothing であり一度でも負ければ全米で訴訟を起こされ会社の屋台骨がへし折れるそーな。陪審員選任は裁判の前哨戦・・・・・どころかそれで全てが決まってしまうとばかりに陪審コンサルタントなるものが暗躍する。中でも勝ちっぱなしの伝説のコンサルタント・フィッチ(ジーン・ハックマン)は手段を選ばす陪審員候補をつけまわすわ過去を洗うわ脅すわ罠にかけるわ。誰だって叩けばほこりは出るのである。そして自分は売り物になると考える陪審員も現れるのである。
感想
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」・・・・か。いやはや仁義なき戦いだな。2006年陪審員制度が導入されたあかつきには日本もこうなるのか?
アメリカで陪審員による正式事実審理(トライアル)は全体の数パーセントらしい。日本に導入された場合の試算では裁判員6人(補充2人)では選任されるのは年間1200人にひとりくらいだそうだ。友に裁判員に選ばれる事を危惧している人がいてこの間ちょっとだけその話をしていたら、何しろ時間的にも肉体的にも拘束されるのが大変だからだそうだ。仕事はどうなるのだ?パーネル ホール の「陪審員はつらい」だな。考えてみれば最高刑が死刑・無期の重大裁判ばかりだから内容的にもおぞましくてやわな神経がもたんかもしれん。ミステリにどっぷり漬かっているさぼてんが言うと片腹痛いかもしれんが。のみならずプライバシーが侵害されるという重大事もおこりかねない。いや、おこるだろうな。そらおとろしい。この制度でエリートにもインテリにもそこらへんのにいちゃんねーちゃんおやじおばん、さぼてんにも真の民主化とやらが根付けばよいのだが。(ところで今回の大阪府知事選の投票率って・・・いったい・・・)
おすすめ度★★★★1/2
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