2003年6月の映画  戻る


合衆国最後の日 Twilight’s Last Gleaming(黄昏の最後の輝き)

米国 1977年 144分
監督 ロバート・アルドリッチ
脚本 ロナルド・M・コーエン/エドワード・ヒューブッシュ
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
撮影 ロバート・ハウザー
出演 バート・ランカスター(ローレンス・デル)/バート・ヤング(ガルバス「ロッキー」)/ポール・ウインフィールド(ポーウエル )/チャールズ・ダーニング(スティーブンス大統領)/リチャード・ウィドマーク(マッケンジー将軍)/メルビン・ダグラス(ガスリー国防長官)/ジョセフ・コットン(レンフル−国務長官)
メモ 2003.6.29 レンタルVHS
あらすじ
1981年11月16日日曜日の朝、大統領は平和に髭を剃っていた。その頃米国空軍のミサイル基地サイロ3は脱獄囚4人に占拠される。首謀者はデル元将軍。他の囚人は金目当てだが、デル元将軍は米国がベトナム戦争に参戦した本当の理由を国民に発表する事を要求する。ベトナム戦争で亡くなった兵士や傷ついた兵士を代弁しつづけたデル将軍は米国軍と政府から問題児扱いされ罠にはめられ刑務所に入れられていた。米国政府の首脳陣は6年前に負けた戦争の亡霊に脅かされる。
ねたばれ感想
米国の良心を代表しているのは信念を持つデル将軍(バート・ランカスター)ではない。9基のミサイルはソ連の各都市をターゲットとしている。いかに追いつめられたとしても、他国に核ミサイルを発射する事を脅しに使う人物が米国を救えるはずがない。それでは米国は国際社会の一員とはいえない。しかも憂国している将軍はマッケンジー将軍(リチャード・ウィドマーク)との確執を抱かえている。男のメンツ争いだ。ソ連と米国の冷戦と同じだとこの映画は言っている。
米国の良心を代表していたのは大統領(チャールズ・ダーニング)だったのだろう。国益とは何かを鋭く問うサスペンス映画。国際社会での国益とは商売と同じだ。商品を売ることでお客さんにも喜んでもらう。自分も少し潤う。いつも自分だけが儲けてひとり勝ちしてはあかんねん。「えーもんやから買え」と押しつけてもだめ。誠意をもたなあかんし、騙されてもあかん。身を守るために辛い事もある。そして従業員に生活させなあかん。そやけど働いている人にささえて貰わななりたたんはずやねん。正面玄関に会社更生法を申請したからと張り出されるまで知らんかったではあかんねん。そやのに国民が選んだ大統領を捨て駒に使う。
キム・ジュンイル総書記は北朝鮮の顔やけど、官僚や軍人が支えているから崩壊せえへんねんね。一部のエリートだけが牛耳っていても国体はなんとか保つ事はできる。対岸の火事やないねん。
おすすめ度★★★★
戻る

シカゴ CHICAGO

  アカデミー最優秀作品賞、最優秀助演女優賞他
米国 2002年 113分
監督 ロブ・マーシャル
脚本 ビル・コンドン
撮影 ディオン・ビーブ
衣装 コリーン・アトウッド
出演 レニー・ゼルウィガー(ロキシー)/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(ヴェルマ)/リチャード・ギア(ビリー・フリン)/ジョン・C・ライリー(エイモス) /クイーン・ラティファ(看守長ママ・モートン)/ルーシー・リュー
メモ 2003.6.26 心斎橋ビッグステップ・パラダイススクエア
あらすじ
ロキシーはショウの世界に憧れている。それにつけ込んだ男と夫がある身で浮気までしてしまった。しかし騙されたとわかった途端後先考えずに男を撃ち殺してしまう。舞台どころか刑務所へ直行。しかし上昇志向の強い女は諦めないのだ。これは神が与えたチャンスだとプラス思考。というのも浮気をしていた夫と妹を撃ち殺したダンサーのヴェルマが刑務所にいながらマスコミに派手に名を売っているのを間近に見たから。敏腕弁護士を雇ってあの人無罪になりそうだもんね。
感想
時は1920年代、ならずものとショウビジネスの街シカゴを舞台としたピカレスク法廷物。。パワー溢れる歌と踊りもついとります。
ロキシー(レニー・ゼルウィガー)がマリリン・モンローに、ヴェルマ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)がライザ・ミネリに見える。刑務所での女囚ダンスがよいな。女囚のひとりが外国人なのか英語が話せずろくな弁護も受けられない。薄幸で「ダンサー・イン・ザ・ダーク」みたいなの。この国は自己主張しないと大変な事になるのだな。
ミュージカルに疎いもんで早い展開のダンスと歌が楽しかった。短めでよかったです。
 
こういう結末のストーリーが、大資本をつぎ込み大スターを投入しキンキラキンの大映画となり第75回アカデミー賞を6部門も受賞したのか。今この時期に。(自分たちの目から見て)沈む物を石とみなし浮かぶ物を木とみなす米国の司法制度は真実にはそれほど感心がないってのを全世界に大宣伝しているのか? イラクで核処理施設が見つかったって話もとんと聞かないし。「人生は芝居だ」と楽しきゃいいのよ。弱肉強食の世の中なのよ。ってそれでいいのか。ハテ。一抹の疑問が。やぼかしら。日本は米国の批判ができる身の上かよーって言われそうだな。
おすすめ度★★★★
戻る

スキャンダル SCANDALO

イタリア 1976年 107分
監督・脚本 サルバトーレ・サンペリ
脚本 オッタジオ・ジェンマ
撮影 ヴィットリオ・ストラーロ(「地獄の黙示録」)
出演 リサ・ガストーニ(エリアーヌ)/フランコ・ネロ(アルマン)/レイモン・ベルグラン/クラウディア・マルサーニ
メモ 2003.6.19 レンタルDVD
あらすじ&感想
昔々その昔ひとりの少女が映画雑誌スクリーンを読んでおりました。雑誌をなめるように読めないタチの少女は文章を斜め読みぱらぱらめくっていたのですが、ある映画紹介に(・・)。。。「大学教授夫人が経営する薬屋の床で雑役夫の下働き男と・・・・」「性の奴隷・・・」「官能のめくるめく世界・・・・」。そんなそんなことって。なんて事・・・なんて刺激的なんでしょ。はれほれはれ。
という事で長らく頭の隅っこに残っておりました。題名は「スキャンダル」。主演男優は「フランコ・ネロ」。キーワードは「薬屋」。「スキャンダル」という映画はいくつかありますから間違えないようにしましょ。一度深夜放送していたのですが例のごとく録画を忘れ見ずに死ねるかとまで昇華された映画を今回DVD化されてめでたく拝見できたのですよ。大事な事は無修正版とか。男にいたぶられインテリの教授夫人は全裸で夜の歩道を歩くというシーンがあるのですね。無修正でございました。聞くところによると2バージョンあるそうです。スクリーンに書いてあったあのシーンがなかったという事は(待ってたんかい)このDVDは残念ながら「よりエロチックで過激」ではない方かもしれませぬ。監督さんは「青い体験」「若妻の匂い」のイタリアンえろちっくの巨匠サルバトーレ・サンペリとか。
 
劇画家宮谷一彦の「イカルスの罠」が少し似ている。インテリ家族に侵入してくる異物。勝ち気で貞淑な妻を狂わせ若い娘に触手を伸ばす所が。
おすすめ度★★★★★
戻る

花嫁の父 Father of the Bride

米国 1950年 94分 モノクロ MGM
監督 ビンセント・ミネリ
脚本 フランシス・グッドリッチ/アルバート・ハケット
製作 パンドロ・S・バーマン
出演 スペンサー・トレイシー(スタンリー)/ジョーン・ベネット(エリー)/エリザベス・テイラー(ケイ)/ドン・テイラー(バックリー・ダンスタン)
メモ 2003.6.15 BS2録画
あらすじ
宴の残骸後に疲れ切った男がひとり。結婚式について語りはじめる。娘を持つ父にとって恐怖の嵐は前触れもなく3ヶ月前に襲ってきた。どこの馬の骨ともわからん男と結婚すると娘のケイが言い出したのだ。父親のスタンリーがあたふたするのを尻目に母親のエリーは「ケイの相手としては不足だけれど」といいながらも結婚するのを既定の事実として舞い上がっている。さっそく「いいドレスが雑誌に載ってたわ。」と言い出す始末。相手の男の事はどうでもえーんかい。ところが残念な事に26才の恋人バックリーは貯金もあるし若くして経営者だしお金持ちの育ちの良い男だったのだ。ケチのつけようがない。
「私の時代は終わった」と悟りの境地のスタンリーだったがショックはまだ序の口。消耗戦のはじまりだ。婚約披露宴も結婚式も結婚披露宴もすべて花嫁側持ち。かわいい娘を泣く泣くやるのに金までかかる!。こんな理不尽な事って。。。。みーんな知っているのに何故婚約披露宴をしなきゃならん?とボヤキながらもスタンリーはバーテンで大忙し。花嫁の父を経験済みの友達連中は「ビッグショーは女の独断場だ。今後の君の役目は支払いだけだ。(君の番だよ、ご同輩)」と面白そうに言う。やっと飲み物を作り終えて居間に出てみれば客は帰った後。妻には「どこにいたの。みんな私に押しつけて。使えない人ね。」と言われる始末。後は教会だ、花だ、楽団だ、カメラマンだ、付き添いだ、リハーサルだ、コーディネーターだと怒濤のように押し寄せる請求書の山また山。結婚式への招待者292人、披露宴の招待者280人!。その人数がこの家のどこに入るというの?
感想
えらく面白い。昔見た時よりも今の方が笑えた。これも年の甲羅すか。。。。スペンサー・トレイシー最高。コメディタッチのホームドラマと思いきや悪夢の結婚式のシーンとかがはさまれていてね、あえいでいる心象風景がシビアなのにおかしいの。スティーブ・マーチンの「花嫁のパパ」は本作品のリメイク。
 
米国の家庭は男の人が財布を握っていて、女の人は「あたし消費する人」。それって楽なようないちいち買った物を報告しないといけない立場が弱いような。
おすすめ度★★★★★
戻る

ガラスの手を持つ男(アウター・リミッツ) DEMON WITH A GLASS HAND

米国 46分
監督 バイロン・ハスキン(「黒い絨氈 」)
脚本 ハーラン・エリスン
出演 ロバート・カルプ(トレント)
メモ 2003.6.8 レンタルビデオ
あらすじ
米国のTVシリーズウルトラゾーンアウター・リミッツの一話。あの有名な「これはテレビ受像器の故障ではありません。」で始まる古典白黒SF。
10日前に成人の姿で生まれてきた男は誰かに追われている。1000年後の未来の地球は宇宙から襲来したカイバ人に攻められ一ヶ月で征服される。殲滅される寸前地球人は一夜にして姿を消した。ただひとりの男を残して。その男トレントは1000年前の地球へと時空を越えてやってくる。彼が人類最後の希望の☆なのだ(どこかで聞いた事のある話だ)。彼を殺そうとカイバ人も時間鏡を使って時空を越え追ってくる。トレントの左手はガラスで出来ていて親指と小指しかないその左手が言うには、カイバ人に捕らわれている3本の指がそろえば謎はとけ人類は救われるらしい。
感想
似てる。Tで始まる某有名映画に(それは「ターミネータ」)。カイバ人はアーノルド・シュワルツネッガーとは比べ物にならないほど非力やけど。こんなしょぼいのにやられた未来の地球人って・・・。カイバ人は地球人の姿に似せてやってきたと言うけれどどなたさんを手本にしたんやら。目の回り真っ黒でパンダに似ている。時間鏡はどうやってこの世界に持ってきたの?とか、ラストはそれで人類は救われるの?つじつまはあうの?と思うものの驚きの詩的なラストであった。
おすすめ度★★★1/2
戻る

アバウト・シュミット ABOUT SCHMIDT

2002年 米国 125分 ソニー・ビクチャーズ
監督 アレクサンダー・ペイン(「ハイスクール白書−優等生ギャルに気をつけろ!」
脚本 アレクサンダー・ペイン/ジム・テイラー
原作 ルイス・ピグレー
撮影 ジェームズ・グレノン
音楽 ロルフ・ケント
美術 ティム・イップ
出演 ジャック・ニコルソン(ウォーレン・シュミット)/キャシー・ベイツ(ロバータ)/ダーモット・マルロニー(ランドール「リビング・イン・オブリビオン」「グッバイ・ラバー」)/ホープ・ディヴィス(ジニー・シュミット「隣人は静かに笑う」「ワンダーランド駅で」)/ハワード・ヘッセマン(ラリー「グリッドロック」)/レン・キャリオー(レイ)
メモ 2003.6.4 OS劇場
あらすじ
米国中西部オマハに住むウォルター・シュミット66才は本日をもって会社生活をリタイアする。42年連れ添った妻とデンバーに住む一人娘ジニーがいる。若い頃に夢想したような企業家にはなれなかったが家もありお金もあり家族もありでまずまずだ。→人生の黄金期を迎えるはずだ→が何故か満たされない→第一妻のなす事する事いちいちイライラする→その上何故娘は遠くに住んでいるんだ? あのノータリンの婚約者は何だ? →ところがそんな悩みは”贅沢だったんだ”という出来事が起こる→私の面倒をみて欲しいと娘に頼む→娘は「私には私の人生があるのよ」とけんもほろろ→いじける→寂しい→妻を偲んでいたらパンドラの箱をあけてしまった→サイアク と濡れ落ち葉族はあまりにシビアな現実にじたばたあがく。
感想
ジャック・ニコルソン版「花嫁の父」(ちゃうちゃう)。やー見ほれてしまった、ジャック・ニコルソンに。6才のボクにそないなマジ話をしたかて・・・笑った。ほんまにファンになったぞ。私生活では「アンジェリカ・ヒューストンと別れたのは間違いだった」とか「自分のレストランのウェイトレスについ手が出てしまう」とか色々自分の弱さを自覚されているかもしれんが、それが役者の厚みになっているというか腰回りの厚みになっているというかなんというか。花嫁の父のスピーチは鳥肌もの。自分の気持ちと娘の気持ちと世間体のせめぎ合いの総括だ。そのニコルソンを向こうに回してのキャシー・ベイツの怪演も見物。
 
ジャック・ニコルソンの魅力とは、卓越した演技力、役柄への理解の深さ、奇人変人を嬉々として個性的な役柄をこなし、いくつになってもセクシーだとともに調子のいい時の少年っぽさだと思う。ナイーブなんだろうな。
おすすめ度★★★★1/2
戻る

ダブル・ビジョン DOUBLE VISION

2002年 台湾・香港・米国 109分 ソニー・ビクチャーズ
監督 チェン・クォフー
脚本 チェン・クォフー/スー・チャオピン
撮影 アーサー・ウォン
音楽 リー・シンヤン
美術 ティム・イップ
出演 レオン・カーファイ(ホアン)/デビッド・モース(FBIケビン・リクター)/レオン・ダイ(リー警部)/ラン・シャン(チャン博士)/レネ・リュウ(ホアンの妻・チンファン/ヤン・クイメイ(検死官)
メモ 2003.6.1 天六ホクテンザ1(映画サービスデー)
あらすじ
台湾・台北市内ニテ不可解ナ死体発見サル。オフィスデノ溺死。次ナルハ議員ノ愛人焼死。焼ケテイルノハ美女ノミ。三人目ハ米国真理教会ノ牧師。ナント腹ヲサカレテイタ。縫イ合ワサレタ腹ノ上ニ呪文アリ。外交問題ヲ憂慮シタ当局ハ米国ニ出動ヲ要請スルナリ。
感想
一度見ただけでは理解ができん。中国の呪術信仰・道教(タオイズム)がキーになっている。おどろおどろしい。道教には「水責め」「火責め」「腸抜き」「心臓抜き」「舌抜き」の5つの地獄があるらしい。(「血の池」「針山」「釜ゆで」はないみたい。)。なにげにねたばれに入っていきますが少女は父親が欲しかったんだろうか。ホアンの娘もダダモノではない。あたった弾を曲げるんやから。病んだ2人の少女のせめぎ合いだったんだな。
 
パンフの解説がなかなか楽しい。まずは冒頭の映画評論家・佐藤忠男さんが妖しいあやしい。アジアの妖物・魑魅魍魎の話はええねんけど、本作「ダブル・ビジョン」への言及はゼロ。試写されていないのか言いたくないのか。次は『「ダブル・ビジョン」は直接的にも比喩的にも「双子の物語」だ』という一尾直樹さん(映画監督)。そらそうやろ。題名も「ダブル」やし双子が産まれてんねんから。三つ目は本誌編集の岸川真というお方。ちょっと古いサイコニック・ホラーをおらおらおらっとお奨めしてはります(やれやれ)。「サイコ」 「堕ちた天使−エンゼル・ハート」 「ローズマリーの赤ちゃん」 「恐るべき訪問者」(クラウス・キンスキー)。「エクソシスト」 「キャット・ピープル」 「キャット・ピープルの呪い」 「血を吸うカメラ」 「ディメンシャ13」 「歓びの毒牙」(ダリオ・アルジェント) 「本陣殺人事件」(田村高廣のではなく原作の方とか)。有名どころにマニアックな作品を混ぜている所が憎い。3作見ていないのが負けたではないか。(元々ホラー好きやないしと言い訳をぶつぶつ)。