Dialogue | ||
![]() 曲:★★★ 演奏:★★★★☆ ジャズ入門度:★ 評価:★★★☆ |
[Recording Date] 1965/4/3 [1] Catta [2] Idle While [3] Les Noirs Marchant [4] Dialogue [5] Ghetto Lights [6] Jasper |
Freddie Hubbard (tp) Sam Rivers (ts, ss, bcl, fl) Boboy Hutcherson (vib、marimba) Andrew Hill (p) Richard Davis (b) Joe Chambers (ds) |
既に新主流派ヴァイブ奏者として数々のセッションをこなし、演奏者としては評価を得ていたボビー・ハッチャーソンの初リーダー作。サイド・メンとしてさまざまなグループに順応してきたハッチャーソンがどのような作品を作るのかという点に興味が湧くけれど、メンバーを見ればわかる通りここで展開されているのは一筋縄ではいかない独自のフリー・ジャズ。特にボーナス・トラックの[6](この曲が唯一のフォービート)を含めて4曲を提供しているアンドリュー・ヒルのカラーが濃厚で、ピアノでも奇妙なコードワークを駆使したり浮遊感を前面に出したりと個性を全開させている。他の2曲はジョー・チェンバース作でこちらも想定通りのフリー・ジャズ系、というかかなり解体された演奏になっている。にもかかわらずヒルの曲の方がクセがあって聴き手を突き放している感じがなんだか面白い。ハッチャーソンはマリンバも交え、演奏面でリーダーとしての存在感は抜かりなくアピール。ハバードはここではフリー系のテクニカルな演奏を聴かせており、この種のハバードが好きな人には堪らない内容になっている。また見逃せないのはサム・リヴァースが楽器を使い分け縦横無尽の活躍をしていること。ジョー・チェンバースにいつものような疾走感がないのは、乗れないリズムの曲ばかり([6]を除く)だから。そして、この息詰まる空間を埋めるのに最適なリチャード・デイヴィスの骨太ベースが突き上げる。このアルバム、ハッチャーソンの音楽性そのものなのかと訊かれると「No」と答えざるを得ないけれど、新主流派によるフリー・ジャズとしては非常にレベルの高い1枚として推奨できる。ただし聴き手を選ぶアンドリュー・ヒルのアクの強さにはご注意を。(2007年1月8日) |
Components | ||
![]() 曲:★★★ 演奏:★★★★ ジャズ入門度:★★ 評価:★★★ |
[Recording Date] 1965/6/10 [1] Components [2] Tranquillity [3] Little B's Poem [4] West 22nd Street Theme [5] Movement [6] Juba Dance [7] Air [8] Pastral |
Freddie Hubbard (tp) James Spaulding (as, fl) Boboy Hutcherson (vib、marimba) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Joe Chambers (ds) |
新主流派のスター勢ぞろいという趣き、そして聴き手の期待に応える「ハードバップの明らかに次」なフレッシュでスピーディな演奏の[1]にまずは顔が綻ぶ。ところがこのアルバムはそういう勢いで押す曲はこれ1曲限り。以降もやはり新主流派的な演奏ではあるけれど、ミドル/スローテンポな曲で聴かせることに主軸を置いたものになっている。[4]でブルースに取り組んでいるところも意図的に狙った感じ。ここまでのアナログで言うA面がハッチャーソンのオリジナル。そして[5]以降がジョー・チェンバースのオリジナル曲で、解体されたフリー・ジャズが展開されていく。こちらも毒々しさや激しさはなく抽象的に聴かせる趣向で、カタルシスを求める向きには合わないアルバムになっている。メンバーの凄さの割りにほとんど話題にならないのはそのわかりにくさが原因に違いない。とはいえ、ハッチャーソンがやりたかったのはこういう音楽だったという主張を感じることができるし、オリジナリティを評価したい。(2016年8月28日) |
Happenings | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★ ジャズ入門度:★★★★ 評価:★★★★ |
[Recording Date] 1966/2/8 [1] Aquarian Moon [2] Bouquet [3] Rojo [4] Maiden Voyage [5] Head Start [6] When You Are Near [7] The Omen |
Boboy Hutcherson (vib、marimba) Herbie Hancock (p) Bob Cranshaw (b) Joe Chambers (ds) |
60年代を代表するヴィブラフォン奏者、ボビー・ハッチャーソンの代表作。ハービー・ハンコックを擁したカルテット編成でホーンが入っていないだけにハッチャーソンの存在がより引き立つ仕上がりになっている。ヴィブラフォンという楽器は、こと音色ということに関しては表情が乏しく、ミルト・ジャクソンという偉大な先人がいるだけに、アルバム1枚を通して自分の色を打ち出して主役を張るにはそれなりの表現力が試されることになる。アップテンポでクールに切れる[1][5]、スローでリリカルな[2][6]、ラテン的なリズムの[3]、フリー・ジャズの[7]と、[4]を除いてすべてがハッチャーソンの手によるバラエティ豊かなオリジナル曲のおかげでそんな懸念点を見事に払拭。幅広い曲を演奏しても全体を通して1本筋の通ったサウンドになっているのは、ひとえにハッチャーソンの力量とアルフレッド・ライオンのプロデュース力のおかげでしょう。ホーンのないジャズはブローイングという聴きどころを持たないためにイージーに流れてしまうものになりがちだけれど、このアルバムには良質の緊張感があるところが魅力。また、この編成によって際立っているのがハンコックのピアノで、バッキングに回ったときのイマジネーション溢れるプレイはさすがと唸ってしまう。新主流派ヴァイブのひとつの到達点と評しても過言ではない秀作。(2006年12月14日) |