Rock Listner's Guide To Jazz Music


M.J.Q (Milt Jackson)


Concorde

曲:★★★★
演奏:★★★★
初心者向け:★★★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1955/6/2

[1] Ralph's New Blues
[2] All Of You
[3] I'll Remember April
[4] Gershwin Medley:
 Soon
 For You, For Me, Forevermore
 Love Walked In
 Our Love Is Here To Stay
[5] Softly, As In A Morning Sunrise
[6] Concorde
Milt Jackson (ts)
John Lewis (p)
Percy Heath (b)
Connie Kay (ds)
ビートルズ、レッド・ツェッペリン、クイーン・・・これらのロック・グループに共通しているのは、メンバー・チェンジがなく、また、そのメンバーでなければ起きない奇跡の化学反応があったこと、そして活動期間がある程度長いという点にある。ジャズは、極論すれば決められたフォーマットの中で演奏を追求することが基本であるため、一定のメンバーで活動を続けることはマンネリに陥ることを意味し、故にグループで音楽を創造し発展させるという概念がない。マイルス・デイヴィスの「黄金のクインテット」、ジョン・コルトレーンの「至高のカルテット」のような例外は、グループとして独自の音楽を追求したいというリーダーの創造意欲を実現するためのものであるとはいえ、やはり極論すれば他のメンバーはリーダーの志向する音楽を表現するための手足のような存在で従属関係がはっきりしている。前述のロック・グループにはメンバー間の力関係こそさまざまな形態があるものの、従属関係がないところがマイルスやコルトレーンのグループとは大きく異なる点と言える。そんなジャズの世界で(ほぼ)固定メンバーで活動し続けた唯一のグループこそがモダン・ジャズ・カルテット。モダン・ジャズという一般的な名詞と4人組という言葉を組み合わせただけの簡素な名前を持つこのグループは、その活動時期中のメンバーの主戦場がグループにあり、聴けば一発で、「あ、MJQだ」とわかるグループとしての個性を持ち合わせいる。その音楽は刺激こそないものの他のジャズでは味わえないロックとは対極的な上品な味わいがあり、ジョン・ルイスのクラシック趣味と、ブルースを基本にしながらもどんな音楽にも対応できるミルト・ジャクソンの個性の組み合わせによるケミストリーをベースに堅実なベースとドラムがサポートするというもの。BGMとしても成立する軽さと聴きこむことにも耐える豊かな音楽性があり初心者からベテランまでカヴァーする懐の深さがある。一方で冒頭のロック・グループが音楽性の発展を模索し、新しい音楽を創造し続けたことと比較すると、MJQのそれは基本的に最後まで変わることがなく、同じメンバーによるグループで新しい音楽を追求するという点において、ジャズはロックの足元にも及ばないという結論に至ってしまう。尚、フーガの手法を用いた[5]は出色でMJQの個性を象徴する名演。(2007年1月25日)

Fontessa

曲:★★★★☆
演奏:★★★★
初心者向け:★★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1956/1/22
1956/2/14

[1] Versaillers
[2] Angel Eyes
[3] Fontessa
[4] Over The Rainbow
[5] Bluesology
[6] Willow Weep For Me
[7] Woodyn You
Milt Jackson (ts)
John Lewis (p)
Percy Heath (b)
Connie Kay (ds)
MJQの魅力が遺憾なく発揮された1枚。クールで知的、ユーモアも忘れないその世界はジャズ初心者でも十分に入りやすいものでありながら、初心者向けガイド・ブックで大きく取り上げられることはあまりない。その品の良さが敷居を高く感じさせているのかもしれないけれど、難解さやもったいぶった感じは一切なく、お高くとまっているわけでもないのもこのグループの良いところ。本作ではジョン・ルイスの才能が益々発揮され、その欧州的味わいは格別。ミルトのヴァイブは、そんなルイスの志向性を十分に理解した美しさを振りまきながら、一方で[5]のようなルーツを見せることも忘れない。なんて褒めておきながら、熱狂という言葉が最も似合わない、もっと具体的に言うとジャズ・クラブが最も似合わないグループに僕は熱中することなく、たまに聴くといいなあと思う程度。あと、どのアルバムを聴いてもイメージに大差がないので何枚も聴いてみようという気が起きない。でも、好きな人にはそんなところがたまらないはず。(2007年1月27日)

No Sun In Venice

曲:★★★★☆
演奏:★★★☆
初心者向け:★★★★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1957/4/4 [4]
1957/8/24 [1]-[3][5][6]

[1] The Golden Striker
[2] One Nevwe Knows
[3] The Rose Truc
[4] Cortage
[5] Venice
[6] Three Windows
Milt Jackson (ts)
John Lewis (p)
Percy Heath (b)
Connie Kay (ds)
ロジェ・ヴァディム監督の映画「大運河」のためにジョン・ルイスが書き下ろした曲で構成されたM.J.Q代表作のひとつ。彼らを語る上でよく出てくるキーワード「バロック」「対位法」といったクラシックの手法が遺憾なく発揮された曲と演奏で、他のM.J.Qのアルバムと較べても室内楽的で典雅なムードが強い。ミルト・ジャクソンの持つ黒いフィーリングは抑えられ、ジョン・ルイスのカラーが前面に出ている。ルイスの作風が好きな人には大変な名作と映るに違いない。僕にとってM.J.Qの魅力はルイスの音楽性にミルトの黒さがうまく混ざり合っていることにあると思っているので、ルイスの色が強すぎる本作は正直なところちょっと微妙。唯一別時期に録音された[4]を除くと、ここには黒人ジャズの持つグルーヴィーさはまったくといっていいほどない。ただ、こんなに美しくリッチなジャズというのもそうは見当たらないのも確かで、そんな世界でもうまくやりこなしてしまうミルトの才能に感心してしまう。高級レストランのBGMに使っても全く問題のない品の良さは他に得難いものがあり、そんなジャズをお求めの方には大推薦したいアルバム。(2014年1月7日)

Milt Jackson Quartet

曲:★★★★
演奏:★★★☆
初心者向け:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1955/5/20

[1] Wonder Why
[2] My Funny Valentine
[3] Moonray
[4] The Nearness Of You
[5] Stonewall
[6] I Should Care
Milt Jackson (ts)
Horace Silver (p)
Percy Heath (b)
Connie Kay (ds)
書物によるとミルト・ジャクソンはリーダーになりたくなかったという。面倒なことを引き受けたり、責任を取ったりするのが嫌だったからそうで、そういう意味でMJQというのは居心地が良かったに違いない。卓越した才能を持った、ヴィブラフォンというマイナー(=競争相手の少ない)楽器の、しかも突出した実力者であれば次々にリーダー作を吹き込んでも良さそうなものなんだけれど、そんな理由からかミルト・ジャクソンのリーダー・アルバムは実に少ない。一方で僕はMJQのお上品さにあまり馴染めないところがあって、ミルトの演奏で好きなアルバムと言えば「Miles Davis And The Modern Jazz Giants」や「Bags & Trane」あたりとなってしまう。要はミルトの持ち味であるブルース・フィーリングが濃厚に出ている演奏の方が好み。このアルバムでは、MJQのメンバーからジョン・ルイスの代わりにホレス・シルヴァーを入れるという個人的には実に好ましい編成で、聴けば演奏も期待通りの黒さで申し分ない。収録時間がわずか31分というのがちょっと物足りないけれど、その分気軽に聞けるし、透明感溢れる音色で濃厚なブルース・フィーリングを醸し出すというミルト流の黒さを満喫できるのがなによりも魅力的。(2008年2月10日)