Rock Listner's Guide To Jazz Music


Curtis Fuller


With Red Garland

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1957/5/14

[1] Seeing Red
[2] Stormy Weather
[3] Cashmere
[4] Slenderella
[5] Moonlight Becomes You
[6] Roc & Troll
Sonny Red (as)
Curtis Fuller (tb)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Louis Hayes (ds)
カーティス・フラー2枚目のリーダー・アルバム。プレスティッジの看板ミュージシャン、レッド・ガーランドを従えた故にこのアルバム・タイトル。内容もプレスティッジ+ガーランドの組み合わせから想像できる通り、気軽なジャム・セッション風のオードドックスなハード・バップ。いや、むしろテーマなどを聴いているとビバップの香りすら漂う古さを感じなくもない。全体的におとなしい演奏が多くてあまりパッとしないけれど、柔らかいトーンで吹くフラーのソロ・パートは長く用意されていてそれなりにいい味を出しているし、ガーランドならではのスウィングするピアノも楽しめる。ソニー・レッドのアルトは特筆するほどのものではないものの、張りのある音は全体のバランスを取るにはちょうど良い存在。イージーな演奏でフラーを楽しみたい人には良いアルバムではあるものの、グループとしての演奏のまとまり、アルバムとしての完成度、録音、すべてにおいてブルーノートの作品と比べると数段落ちる。(2007年2月28日)

The Opener

曲:★★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★★☆
評価:★★★★★
[Recording Date]
1957/6/16

[1] A Lovely Way
              To Spend An Evening
[2] Hugore
[3] Oscalypso
[4] Here's To My Lady
[5] Lizzy's Bounce
[6] Soon
Curtis Fuller (tb)
Hank Mobley (ts)
Bobby Timmons (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
ジャズでは時々、バラードで始まるアルバムがある。ジョン・コルトレーンのプレスティッジ時代のアルバム「Settin' The Pace」「Standard Coltrane」「Stardust」などはまさにその典型。落ち着いてジャズでも聴きたいなあと思っているときに、期待通りにリラックスさせてくれる。ブルーノートにおけるカーティス・フラーの初リーダー・アルバムである本作もまさにそう。アナログ時代にはB面の1曲目であった[4]もバラードで、しかも両曲ともフラーのワン・ホーンによる演奏でトロンボーン独特の甘い音色が堪能できる。他の曲もブルースなどのリラックスした曲が多く、フラーのトロンボーン奏者としての持ち味が良く出ており、これに合わせるモブレーのリラックスしたテナーと、後のティモンズとは一味違う落ち着いたピアノがこれまた絶妙にマッチ。伸び伸びとしたジャズ・トロンボーンを堪能したい方にはとにかく是非聴いてもらいたい1枚。アルバム通して飽きずに聴ける完成度はさすがブルーノートといったところ。クセはないけど味わい深さが魅力の1枚。(2006年6月3日)

Bone & Bari

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1957/8/4

[1] Algonquin
[2] Nita's Waltz
[3] Bone & Bari
[4] Heart And Soul
[5] Again
[6] Pickup
Curtis Fuller (tb)
Hank Mobley (ts)
Bobby Timmons (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
トロンボーンはジャズにおいて重要な楽器ではない。言ってしまえばあってもなくてもいいようなもの。他の管楽器と違って、一音一音区切って息を吹き込まなければならないという楽器の特性から、速いパッセージを吹くのが難しく、それを要求されるハードバップでは他の楽器に追随するのが難しいから。そのあたりが極端に人材が少ないことの原因でもある。そんな中にあってカーティス・フラーは、トロンボーンならではの個性的な音を操るハードバップ時代を代表する名トロンボーン奏者として君臨する実力者。それでもトロンボーン独特の音色を生かすフォーマットというのはなかなか難しく、アルフレッド・ライオンはさまざまなアイディア(編成)でフラーの録音を残している。このアルバムはそんな中でもバリトン・サックスとの2管編成という低音楽器にフォーカスした個性的な1枚。より低い音域のバリトンと組み合わせることでフラーを際立たせようという狙いは成功していると言える。しかも、テイト・ヒューストンのバリトンが結構迫力があって単なる引き立て役に終わっていないところも良い。フラーのワン・ホーンによる軽快な[4]、バリトンで甘いバラードを朗々と歌い上げる[5]もこのアルバムの聴きどころ。リズム・セクションはブルーノートの看板メンバーとあって質は保証されている。特に低音楽器に囲まれることで浮き上がるソニー・クラークの哀愁を帯びた軽快なピアノが印象的。フラーとヒューストンの見せ場[4][5]以外、曲はフラーのオリジナルというのもブルーノートらしく作曲家としてのフラーを楽しむこともできる。フラーはハードバップの作曲家としてもう少し評価されてもいいような気がする。(2007年4月21日)

Vol.3

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1957/12/1

[1] Little Messenger
[2] Quantrale
[3] Jeanie
[4] Carvon
[5] Two Quarters Of A Mile
[6] It's Too Late Now
Art Farmer (tp)
Curtis Fuller (tb)
Sonny Clark (p)
George Tucker (b)
Louis Hayes (ds)
「Blues-Ette」と並んでフラーの最高傑作の呼び声が高い本作。しかしながら、発売されたのは録音後3年も経過してからだったそうで、そうだとすると恐らくアルフレッド・ライオンはもうひとつ何かが足りないと思っていたのかもしれない。アート・ファーマーとの組み合わせとなるとジャズテットを連想するけれど、本作は[6]を除いて全曲フラー作で音楽家としてのフラーの個性が出ているのが特徴。個人的にはファーマーはあまり個性や特別なものは感じないんあだけれど、ここではそのクセのなさが吉と出ている。フラーの出番は当然多く、ハードな演奏から丸みのある柔らかいトーンまで駆使してその実力を存分に発揮。特に[4]のインテンポからのハード・ボイルドなムードがなんともカッコいい。注目はリズム・セクションでソニー・クラークのブルーなトーンと、極太のゴムを弾いているかのような音が個性的なジョージ・タッカーのベースが印象的。クラークとフラーは実に相性がいい。全体としてはハードバップの枠を一歩も踏み出ていないオーソドックスなサウンド/演奏なので、フラーの曲と各人のプレイが楽しめるかがポイント。(2007年1月12日)

Blues-Ette

曲:★★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1959/5/21

[1] Five Spot After Dark
[2] Undecided
[3] Blues-Ette
[4] Minor Vamp
[5] Love Your Spell Is Everywhere
[6] Twelve-Inch
Curtis Fuller (tb)
Benny Golson (ts)
Tommy Flanagan (p)
Jimmy Garrison (b)
Al Herewood (ds)
遥か昔、TV-CFでも使われた[1]を筆頭に、柔らかで洗練されたハーモニーが支配する、ベニー・ゴルソンとの共同製作とも言える定盤アルバム。トロンボーンとテナー・サックスは共に音域が低く落ち着いたムードになるうえに相性が良いことから他でもよく見られる組み合わせで、このアルバムでもその組み合わせの良さが存分に出ている。曲の良さ、親しみやすさの点でも魅力たっぷり。トミー・フラナガンの洗練されたピアノと、ジミー・ギャリソンの太く主張するベースも脇役以上の存在感。何よりも曲やアレンジの良さが際立っていることもあって、実はフラーのトロンボーン奏者としての実力とは別の次元で評価されている気もする。耳当たりが良すぎて刺激を求めると物足りなさを感じることもあるけれど、グループとしてのバランスも良く1枚のアルバムとして完成度は高い。(2006年6月3日)