Rock Listner's Guide To Jazz Music


Grant Green


First Session

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1960/11/16 [1]-[5]
1961/10/27 [6] [7]

[1] He's Real Gone Guy
[2] Seepin'
[3] Just Friends
[4] Grant's First Stand
[5] Sonnymoon For Two
[6] Woody 'n' You (take 4)
[7] Woody 'n' You (take 7)
[1]-[5]
Grant Green (g)
Wynton Kelly (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones  (ds)

[6][7]
Grant Green (g)
Sonny Clark (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)
ブルーノートのアルフレッド・ライオンに目をかけられたミュージシャンは数多くいるけれど、グラント・グリーンへの入れ込み方は尋常でなかったことは、ジャズではマイナーなギターという楽器であるのもかかわらず数多くのリーダー・アルバムを残したことから窺い知ることができる。このアルバムは、ライオンが最初にグリーンを録音したときのセッションで、いきなりマイルスゆかりの面々をそろえるところに力の入れ具合を見てとれる。しかし、内容はとりたててスペシャルな感じはなくグリーンの個性をうまく引き出せたという印象的はない。そのあたりが当時リリースされずお蔵入りしさせていた理由なのかもしれない。もちろんケリー、チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズのプレイに問題はない。ただ、グリーンと組み合わせる妙味が出ていないというだけのこと。後にアルバムを量産して、その振り幅が大きいグリーンにしてはアルバムとしての個性が薄く、ライオンにしてもうまくいかなかった企画があったという一例か。(2008年8月30日)

Grants First Stand

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1961/1/28

[1] Miss Ann's Tempo
[2] Lullaby Of The Leaves
[3] Blues For Willarene
[4] Baby's Minor Lope
[5] 'Tain't Nobody's Business If I Do
[6] A Wee Bit O'Green
Grant Green (g)
Baby Face Willette (org)
Ben Dixson (ds)
グラント・グリーン正式なブルーノート・デビュー作はオーソドックスなオルガン・トリオ。地味なドラマーと、ジミー・スミスほどは主張しないけれどソウル・フィーリングをしっかりと持ったオルガンという組み合わせによって、グリーンのブルース/ソウル・テイストが遺憾なく発揮されている。この種のアーシーなサウンドが好きな人にはたまらない内容で、グリーンのギターもエネルギッシュかつ軽快で申し分ないプレイ。編成や選曲など、企画で楽しめるアルバムが多いグリーンではあるけれど、このアルバムはグリーン本来のソウル・フィーリングとシンプルなギターを楽めるという意味で初期の最高傑作だと思う。(2008年9月20日)

Green Street

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1961/4/1

[1] No.1 Green Street
[2] 'Round About Midnight
[3] Grant's Dimensions
[4] Green With Envy
[5] Alone Together
[6] Green With Ervy (alt take)
[7] Alone Together (alt take)
Grant Green (g)
Ben Tucker (b)
Dave Bailey (ds)
グリーンは自分のことをジャズ・ギタリストだとは思っていなかったと言われている。ルー・ドナルドソンの回顧によればグリーンがジャズを聴いているところを見たことがなく、いつもR&Bを聴いていたという。このアルバムは、シンプルなトリオ編成でギターに焦点を当てた企画。フレージングも活気があって、やや不器用で、どこかポップなフィーリングを持つグリーンの個性が良く出ている。僕のようにロックから入ったリスナーの耳にはジャズ・ギターはすべて地味で同じように聴こえるけれど、このアルバムは数回聴いてみれば彼の独自性がわかると思う。ここでは、アルフレッド・ライオンの手によって普通のジャズを「演らされている」のだけれど、その枠の中でグリーンの個性が引き立つという、おそらく狙い通りの成果が出ているところが聴きどころ。その狙いを支えた立役者はベン・タッカーの弾力性あふれるベースであることに疑いはない。グリーンのジャズ・ギターを満喫できる好アルバム。(2008年9月27日)

Sunday Morning

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1961/6/4

[1] Freedon March
[2] Sunday Mornin'
[3] Exodus
[4] God Bless The Child
[5] Come Sunshine
[6] So What
[7] Tracin' Tracy
Grant Green (g)
Kenny Drew (p)
Ben Tucker (b)
Ben Dixon (ds)
決してうまく行ったとは言えない「First Session」同様にピアノ・トリオ+グリーンのギターという編成。メンバーの知名度を比べればこちらの方が断然下であるところは衆目の一致するところ、しかし結果はこちらの方が良いというところが面白いのと同時にグリーンの個性を象徴しているような気がする。つまり王道ハードバップ・ミュージシャンを組み合わせるよりも、ドリューやタッカーといった地味でありつつも少しクセのあるメンバーの方がグリーンの良さが生きてくる。そうはいってもあくまでもオーソドックスなジャズとして演奏されている範疇でのことで、そこがアルフレッド・ライオンの狙っているところでもあったように思える。このありふれた編成、普通のジャズの枠の中でグリーンのギターを味わうには良いアルバム。(2008年10月18日)

Grantstand

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1961/8/1

[1] Grantstand
[2] My Funny Valentine
[3] Blues In Maude's Flat
[4] Old Folks
Yusef Lateef (ts fl)
Grant Green (g)
Jack McDuff (org)
Al Harewood (ds)
ここではグリーンの泥臭いギターにオルガンとテナー・サックスという、ソウル系ジャスとしての定番的な編成。オルガン入りのグリーンのアルバムと言えば「Grants First Stand」「Am I Blue」、ジョン・パットンの「Let 'em Roll」のようにほとんどR&B/ソウルと言えるもの、またまったくテイストが異なる「Street Of Dreams」「Talkin' About」でのラリー・ヤングとエルヴィンとのシリアスでパワフルかつ緊張感溢れるものがあるけれど、本作は前者のソウルフル系の逸品。要はグリーンの本質に近い路線でコチラの路線が好きな人なら高く支持するはず。僕はヤング+エルヴィンのコンビネーションのスペシャル感が好きなんだけれど、この泥臭いアーシーさにも捨てがたい魅力を感じてしまう。(2008年6月29日)

Standards

曲:★★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1961/8/29

[1] You Stepped Out Of A Dream
[2] Love Walked In
[3] If I Had You
[4] I'll Remember April
[5] You And The Night
                And The Music
[6] All The Things You Are
[7] I Remember You
[8] If I Had You (alt take)
Grant Green (g)
Wilbur Ware (b)
Al Harewood (ds)
「Green Streets」に続いてトリオ編成ながらメンバーを入れ替えた。当然グリーンのギターをたっぷり聴けるけれど、メンバー間のマジックがないというかどうにも全体にパッとしない。お蔵入りしたのも納得。グリーンのトリオが好きでたまらないという人はともかく、それ以外の人にはあまり強くはお勧めできない。そもそもグリーンは音楽をクリエイトするタイプではなく、ギタリストとしての個性で楽しむタイプのミュージシャン。生かすも殺すも共演相手、選曲、企画次第ということを認識させてくれる一例と言ったら言葉が過ぎるだろうか。アルフレッド・ライオンが生きていたらこんな安易なタイトルにもなっていなかったんじゃないかと思う。(2008年11月14日)

The Complete Quartets With Sonny Clark

曲:★★★★☆
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1961/12/23 [8]-[13]
1962/1/13 [1]-[7]
1962/1/31 [14]-[19]

Disc 1
[1] Airegin
[2] It Ain't Necessarily So
[3] I Concentrate On You
[4] Things We Did Last Summer
[5] Song Is You
[6] Nancy (With the Laughing Face)
[7] Airegin (alt take)
[8] On Green Dolphin Street
[9] Shadrack
[10] What Is This Thing Called Love

Disc 2
[11] Moon River
[12] Gooden's Corner
[13] Two for One
[14] Oleo
[15] Little Girl Blue
[16] Tune-Up
[17] Hip Funk
[18] My Favorite Things
[19] Oleo (alt take)
Grant Green (g)
Sonny Clark (p)
Sam Jones (b)
Louis Hayes (ds [8]-[19:)
Art Blakey (ds [1]-[7])
ブルーノートのハウス・ギタリスト、グラント・グリーンにやはりブルーノートのハウス・ピアニストであるソニー・クラークを組み合わせてシンプルなカルテット編成で吹き込まれたのがこのアルバム。全部で3回のセッションから成っており、実際、アナログは3枚に分けて発売されていたらしい。さて、内容はというと、グリーンもクラークも持ち味が良く出ていてそれぞれの演奏は聴き手を十分満足させてくれるもの。しかし、この2人の組み合わせに特別なものを感じるまでには至っていないというのが僕の印象。共演者の組み合わせで面白さを生み出すのがブルーノートのウリであったことを考えるとやや不満を覚える。また、オリジナル曲を重視するブルーノートの精神からすると選曲もやや安易。それでも演奏そのものは気持ちよく聴ける。1月13日のセッションのみドラムがアート・ブレイキーで他の日とはリズムの雰囲気が違うのはさすがといったところ。ルイ・ヘイズのセッションとブレイキーのセッションを聴き比べてドラマーが違うとこう変わるというのを知るのにも良いサンプルかもしれない。(2006年6月3日)

The Latin Bit

曲:★★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1962/4/26 [1]-[7]
1962/9/8 [8] [9]

[1] Mambo Inn
[2] Mesame Mucho
[3] Mama Inez
[4] Brazil
[5] Tico Tico
[6] My Little Suede Shoes
[7] Blues For Juanita
[8] Grenada
[9] Hey There
[1]-[7]
Grant Green (g)
Johnny Acea (p)
Wendell Marshall (b)
Willie Bobo (ds)
Carlos 'Potato' Valdez (conga)
Calvin Masseaux (chekere)

[7]-[8]
Ike Quebec (ts)
Grant Green (g)
Wendell Marshall (b)
Willie Bobo (ds)
Carlos 'Potato' Valdez (conga)
特に強烈な音楽性を持っているわけでなく、どちらかといえば不器用な演奏で親しまれたグリーンに惚れ込んだブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンは共演者や曲に志向を凝らしてアノ手コノ手でさまざまなアルバムを作った。言い方が悪いかもしれないけれど、ここまでライオンに利用された人も珍しい。このアルバムでは全曲ラテン調で揃えて、泥臭いグリーンの別の一面であるポップな魅力を引き出す企画。これが見事にハマっていて、なんとも楽しく聴けるところがいい。グリーンはオーソドックスなピアノ・トリオと組み合わせて普通にジャズを演らせるよりも、このようにひと捻りした方が魅力が引き立つ。グリーンのギターにそれほど魅力を感じていなかったとしても、ラテン・ジャズが好きな人なら素直に楽しめるのがまたこのアルバムの良いところ。ブルーノート企画の中でも屈指の成功例。(2008年11月29日)

Feelin' The Spirit

曲:★★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1962/12/21

[1] Just A Closer Walk With Thee
[2] Joshua Fit De Battle
                            Ob Jericho
[3] Nobody Knows The Trouble
                              I've Seen
[4] Go Down Moses
[5] Sometimes I Feel Like A
                   Motherless Child
[6] Deep River
Grant Green (g)
Herbie Hancock (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)
Garvin Masseaux (tambourine)
グリーンはここまでピアノ・トリオを従えたアルバムをいくつか吹き込んでいるけれど、当時お蔵入りしたものが多かったことを示すように決して最適なフォーマットというわけではなかった。しかしこのアルバムは、ポップな曲を並べて楽しく聴かせることを狙っているために他の同編成のアルバムとはだいぶ違う仕上がりになっている。サウンドのカギはハービー・ハンコックのピアノ。ハンコックと言えば新主流派を代表するピアニストで、洗練されたプレイが売りである一方、ポップでファンキーなスタイルも別の一面として持っていた。そんなハンコックのポップ&ファンキーな一面がここでは全編に溢れていて、グリーンのギターと見事なマッチングを見せる。乗せられたグリーンは反復フレーズをいつも以上に繰り出して楽しげにプレイ。アルフレッド・ライオンの狙いが見事に成功した例で、グリーンのポップな一面が横溢したユニークさが魅力。(2008年12月20日)

Am I Blue

曲:★★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1963/5/16

[1] Am I Blue
[2] Take These Chains
                   From My Heart
[3] I Wanna Be Loved
[4] Sweet Slumber
[5] For All We Know
Johnny Coles (tp)
Joe Henderson (ts)
Grant Green (g)
John Patton (org)
Ben Dixson (ds)
世間の「黒いギタリスト」という評価のイメージを僕に納得させてくれたのがこのアルバム。 [1]からして純粋なジャズというよりはほとんどR&Bやソウルの匂い。トランペットとテナー・サックスはほぼアンサンブルの役割に限定、オルガンのバッキングが醸し出すムードとの相乗効果が実にアーシーなことこの上ない。例えばジョー・ヘンダーソンのブロウやウォーキン・ベースの躍動感といった典型的なジャズの楽しみ方を期待してしまうと明らかに肩透かしを食うことになる。だけど、このソウルフルな演奏に身を委ね、そこで弾かれるグリーンのギターを聴けば、王道的なジャズでないことなんて、どうでも良くなってしまう。確かにここには聴き手を唸らせるような技巧や熱いブロウはない。でも、ファンキーでクールな黒さは今聴いてもまったく古さなんて感じないし、これぞ黒人の血の成せる業と唸らずにはいられない。ケニー・バレルの「Midnight Blue」よりもこちらの方がディープなブルー。ソウルが好きな人にとってのジャズの入り口としても最良の1枚。(2007年1月19日)

Idle Moments

曲:★★★★☆
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1963/11/4 [1] [4]
1963/11/15 [2] [3]

[1] Idle Moments
[2] Jean De Fleur
[3] Django
[4] Nomad
Joe Henderson (ts)
Bobby Hutcherson (vib)
Grant Green (g)
Duke Pearson (p)
Bob Cranshaw (b)
Al Harewood (ds)
ギタリストとしてはともかく、音楽家としてグラント・グリーンの個性というのはもうひとつイメージがわかない。アルバムの性格はプロデューサーのアルフレッド・ライオンが決めていたからだ。ライオンの手によってさまざまな編成、さまざまな企画の録音を残してきた中でもこのアルバムの個性は際立っている。デューク・ピアソンのオリジナルが2曲、グリーンが1曲、そしてジョン・ルイス作の超名曲という構成。曲だけでなく、知的で洗練されたピアソンのピアノが全体のイメージを決定づけていると言える、というかピアソンあってのこのアルバムと評しても過言ではない。ボビー・ハッチャーソンはここではオーソドックスでブルージーなテイストを押し出していて、それこそ洗練度を高めたMJQ的なムードになりそうな感じになりそうなところにグリーンのギターが加わると、また違う独特な世界ができるから面白い。さらに、ジョー・ヘンダーソンまで加えてスペシャル感をダメ押しするところが、さすがアルフレッド・ライオン。そういう顔合わせの妙、その顔合わせでこそ出来上がるスペシャルな世界という点でこのアルバムのポイントは高く、いかにもブルーノート的な企画であると言える。表面的には耳あたりの良いムード・ジャズとしても聴ける一方でユニークな味わいを持つ、ある意味贅沢なアルバム。(2007年12月29日)

Solid

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1964/6/12

[1] Minor League
[2] Ezz-Thetic
[3] Grant's Tune
[4] Solid
[5] The Kicker
[6] Wives And Lovers
Joe Henderson (ts)
James Spaulding (as)
Grant Green (g)
McCoy Tyner (p)
Bob Cranshaw (b)
Elvin Jones (ds)
アルフレッド・ライオンは、グリーンに何度かエルヴィン・ジョーンズをぶつけている。エルヴィンとの相性には評価が分かれるところで、正式にリリースされたのがラリー・ヤングとの組み合わせに限られていることからライオン自身も必ずしもすべてうまく行ったとは思っていなかった可能性もある。このアルバムはお蔵入りの1枚で、そのラリー・ヤングが絡んでいないエルヴィン参加モノ、そしてこれがかなりイケる。スネアを軽くロールさせながら重量級グルーヴを押し出すエルヴィンと軽快でスピーディなクランショウのベースを下支えに、フロント・ラインとグリーンでスマートかつスムーズにカッコいいテーマとソロを奏で、マッコイが流麗な演奏を繰り広げる。よく見ればあの力感溢れるジョー・ヘンダーソンの名盤「Inner Urge」にスポルディングとグリーンを加えたメンバーではないか。だから演奏のムードに共通点があるのは当然のこと。人数の関係上グリーンの出番は少なめ、ソロはそれなりの存在感があるもののグリーンの資質が良く出たアルバムかという点では確かにあまり高い点を付けられないし、そこがお蔵入りの原因だったような気がするけれど、全体の演奏はフレッシュかつエネルギッシュで大いに楽しめる。(2009年2月28日)

Talkin' About

曲:★★★★☆
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1964/9/11

[1] Talkin' About J.C.
[2] People
[3] Luny Tune
[4] You Don't Know What Love Is
[5] I'm Old Fashioned
Grant Green (g)
Larry Young (oeg)
Elvin Jones (ds)
このアルバムはラリー・ヤングの「Into Somethin'」からサム・リヴァースを抜いた、あるいはグリーンの「Street Of Dreams」からボビー・ハッチャーソンを抜いた、という考え方ができる編成。オルガン・トリオはグリーンの得意フォーマットなんだけれど、このメンツだと生まれる音楽がふた味くらい違ってくる。ジミー・スミスよりもモダンなラリー・ヤングのオルガンをたっぷりフィーチャー、エルヴィンの骨太かつラウドでグルーヴィなドラムがスリリングなジャズに昇華させていて実にカッコいい。そんな共演者に触発されていつになくアグレッシヴなギターを弾いている[1]には他のグリーンのアルバムでは聴けない熱さがある。それ以外の曲ではそこまで勢いはないものの結果的にグリーンのアルバムとしては珍しく躍動感に満ちたギターを堪能できる仕上がりとなっている。もちろんバラードにおけるシンプルな響きも捨てがたい。バタ臭いグリーンのギターを好む向きにはミスマッチの声も聞かれるけれど、先鋭的な共演者を配することによってまた別のカラーを放っている名品。(2008年2月23日)

Street Of Dreams

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1964/11/16

[1] I Wish You Love
[2] Lazy Afternoon
[3] Street Of Dreams
[4] Somewhere In The Night
Bobby Hutcherson (vib)
Grant Green (g)
Larry Young (org)
Elvin Jones (ds)
オルガン、ギター、ドラムのオーソドックスな編成にヴァイブが加わった珍しい組み合わせといえばジョン・パットンの「Let 'em Roll」がある。パットンのアルバムはソウル・ジャズに意外性と独自性を与えてやろうという確信犯的な意図でヴァイブを加えている印象があるのに対して、このアルバムではあくまでもグリーンのギターを中心にヴァイブを加えることによってグループ・サウンドの幅を広げることを目指しているように思える。グリーンとハッチャーソンが重複しているにもかかわらず空気が違うのは、やはりラリー・ヤングのオルガンがソウル・ジャズとは一線を画すフレーズを発していることと、控えめでありつつもいつものグルーヴ感でリズムを支えるエルヴィンの存在が大きい。「Let 'em Roll」のようにハッチャーソンのヴァイブに異物感がない理由は共演者の違いに尽きる。もちろんグリーンの見せ場は多く、シングル・トーンでソウルフルなフィーリングを振りまくギターをたっぷりと披露。グリーンのギターがソウル色の薄いヤングと組み合わされることで光るというところに音楽の面白さ、奥深さを感じる。(2007年12月1日)

I Want To Hold Your Hand

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1965/3/31

[1] I Want To Hold Your Hand
[2] Speak Low
[3] Stella By Starlight
[4] Concovado(Quiet Nights)
[5] This Could Be The Star
                      Of Something
[6] At Long Last Love
Hank Mobley (ts)
Grant Green (g)
Larry Young (org)
Elvin Jones (ds)
これもエルヴィンとヤングの組み合わせで、ここではハンク・モブレーを加えた編成。ビートルズの[1]はそのモブレーの柔らかいフレーズとグリーンのポップなギターが醸し出すリラックスしたムードで演奏され、エルヴィンとヤングもそれに合せるような抑えたサポート。通常、のんびりと演奏されることが多い[2]は一転、エルヴィンとヤングらしいパワフルな演奏でモブレーはあくまでもモブレーのスタイルで力強くソロを展開、引き継ぐグリーンのギターもなかなかアグレッシヴ、そしてエルヴィンの迫力あるドラム・ソロがさらに盛り上げる。よく考えてみると、モブレーとエルヴィンの共演というのは珍しく、そこも本盤のひとつの聴きどころとも言える。[3]以降はリラックスした演奏が多く、中でもエルヴィンが軽快なブラッシュワークを聴かせる[5]が心地良い。異色の攻撃性を示す[2]を除けば、心地よモブレーのテナーとグリーンのギターに身を委ねる楽しみ方が相応しい好アルバム。(2009年4月4日)

Matador

曲:★★★☆
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★★
[Recording Date]
1965/5/20

[1] Matador
[2] My Favorite Things
[3] Green Jeans
[4] Bedouin
[5] Wives And Lovers
Grant Green (g)
McCoy Tyner (p)
Bob Cranshaw (b)
Elvin Jones (ds)
コルトレーン至高のカルテット晩年の時期に、そのエルヴィン・ジョーンズ、マッコイ・タイナーを従えたホーンレスのカルテットという企画。しかも考えようによっては暴挙とも言えるコルトレーンの十八番である[2]を取り上げているところに注目が集まる。その[2]を筆頭に、悪くはないんだけれど、この組み合わせならではのスペシャル感を出すことはできていない印象。当時のコルトレーン・カルテットは過激さを極めていたときで、それを考えるとエルヴィンとマッコイはずいぶんオーソドックスかつ軽快に演奏している。それでもどこか重苦しいムードは残っていて、あまりアクが強くないクランショウのベースとグリーンのマイペースなのんびりとしたギターのおかげで聴きやすく仕上がっている。地味で煮え切らない中途半端な感は拭えず、この音源がお蔵入りだったことには納得できる。(2009年5月9日)

Iron City

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★☆
評価:★★★
[Recording Date]
1967/?

[1] Iron City
[2] Samba De Orpheus
[3] Old Man Moses
    (Let My People Go)
[4] High Heeled Sneakers
[5] Motherless Child
[6] Work Song
Grant Green (g)
Big John Patton (org)
Ben Dixson (ds)
Savoyレーベルに残されたこのアルバムは、いわばよく共演してきたお馴染みのメンツによるオルガン・トリオ。パットンのR&B的なオルガンとグリーンのアーシーなギターの王道的組み合わせで、良い意味で何の工夫もないファンキーなテイストが横溢している。力みや緊張感とは縁遠い濃厚かつマッタリとした泥臭い世界、そしてポップな親しみやすさこそがグリーンの本領と考える向きには最高のアルバムになっている。これぞ普段着のグリーン。リラックスして楽しめる。(2009年6月6日)

Green Is Beautiful

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★★★
[Recording Date]
1970/1/30

[1] Ain't It Funky
[2] A Day In The Life
[3] The Windjammer
[4] I'll Never Fall In Love Again
[5] Dracula
Nlue Mitchell (tp)
Claude Bartee (ts)
Grant Green (g)
Emanuel Riggins (org)
Earl Neal Creque (org [3])
Jimmy Lewis (elb)
Idris Muhammand (ds)
Candido Camero (conga)
Richard Lendrum (bongo)
70年代のグリーンはアルフレッド・ライオンからの呪縛(?)から逃れ、ルーツであるR&B、ファンク路線を歩む。ブルーノート(プロデュースはフランシス・ウルフ、録音はRVG)からリリースされているこのアルバムはまさにその路線の始まりを告げるもので、エレキ・ベースが単純なリフを繰り返し、アーシーなオルガンにパーカッションを加えた大編成グループで、そのグルーヴを作り上げている。グリーンのギターはポップかつシンプルで相変わらず泥臭く、面白いくらい以前と変わっていないところに揺るぎないアイデンティティを感じる。JB、ビートルズ、バート・バカラックの曲を採り上げ、個々のプレイよりもバンド全体が醸し出す冗長な、でも心地よいグルーヴに身を任せて聴く心地よさがたまらない。(2009年7月25日)

Alive!

曲:★★★☆
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1970/8/15

[1] Let The Music Take Your Mind
[2] Time To Remember
[3] Band Introduction
                   by Buddy Green
[4] Smokie, Smokie
[5] Down Here On The Ground
Bonus Tracks
[6] Hey Western Union Man
[7] It's Your Thing
[8] Maiden Voyage
Claude Bartee (ts)
William Bivens (vib)
Grant Green (g)
Ronnie Foster
   (org [1][4][6]-[8])
Idris Muhammand (ds)
Joseph Armstrong (conga)
こちらもファンク、R&B路線のアルバムで、ヴァイブが入っているとはいえジャズ的なムードは極めて薄い。テナー・サックスもアーシーで泥臭く、そんなムードに身を任せるのが正しい楽しみ方のライヴ盤。それでも[8]でモード・ジャズの名曲を取り上げるところなどが面白く、グリーンがジャズの路線を歩んでいたのが必ずしも不本意でなかったこともなんとなく読み取れる。ここでのグリーンのプレイは可もなく不可もなくという感じなので、それを楽しみにする人は別のアルバムを求めた方がベター。ミドル・テンポ以下のマッタリした曲ばかり、起伏感はそれほどないこともあってマジメに鑑賞するというよりはレア・グルーヴ・ミュージックをBGMとして心地よく楽しむ趣向。(2009年9月5日)

Live At Club Mozambique

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1971/1/6,7

[1] Jan Jan
[2] Farid
[3] Bottom Of The Barrel
[4] Walk On By
[5] More Today Than Yesterday
[6] One More Chance
[7] Patches
[8] I Am Somebody
Clarence Thomas (ss, ts)
Houston Person (ts)
Grant Green (g)
Ronnie Foster (org)
Idris Muhammand (ds)
軽快なグルーヴからマッタリしたファンクまで味わえる心地よいライヴ盤。グリーンのギターは、相変わらず口数こそ多くないもののファンキーだし、軽いテナー・サックスと同様に軽くてパタパタしたドラムもこのグループのサウンドにマッチしている。ベース・パートを含めてオルガンのサポートは抜かりなく、そのグルーヴ感はまさにファンクのそれ。この時期のライヴといえばライトハウスの盤が有名なようだけれど、このアルバムだって実にカッコいい。表面的に騒がしくなくとも穏やかな抑揚があり、内から湧き出る熱さは十分に堪能できる。クール!(2009年11月14日)

Live At The Lighthouse

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1972/4/21

[1] Intruduction by Hank Stewart
[2] Windjammer
[3] Betcha By Golly Wow
[4] Fancy Free
[5] Flood In Franklin Park
[6] Jan Jan
[7] Walk In The Night
Claude Bartee (ss, ts)
Gary Coleman (vib)
Grant Green (g)
Shelton Laster (org)
Wilton Felder (b)
Greg Williams (ds)
Bobbye Porter Hall(conga, per)
ゆったりしたベース・ラインに乗ってメンバー紹介が始まるところから、いかにもライヴらしいムードが溢れ出てくる。録音時期がほぼ同じ、共にライヴ、しかもベース・プレイヤーも同じということもあってジミー・スミスの「Root Down」に近い空気が流れている。同じグルーヴが延々と続く長尺曲という構成も然り。つまり、ジャズというよりはグルーヴィなファンク・フュージョンで、そのホットなムードがセールス・ポイント。ウネるベースにスピーディなドラム、そこにオルガンが絡みグリーンのしつこいギターが切れ込む。思えば60年代のグリーンは悪い言い方をすればアルフレッド・ライオンに利用されていたといってもいいけれど、このアルバムはグリーンの主体性を感じる。いつも通りのシングル・トーンでもギター・プレイに生気が漲っているのはこの時代ならではのファンク・グルーヴがグリーンの「家」だったからではないだろうか。アルフレッド・ライオンが作り上げたグラント・グリーンとは別の、それでもやっぱりあのグリーンがここにいる。(2010年1月22日)

Easy

曲:★★★★
演奏:★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★
[Recording Date]
1978/4/17-20

[1] Easy
[2] Just The Way You Are
[3] Wave
[4] Empanada
[5] Nighttime In The Switching Yard
[6] Three Times A Lady
Jon Faddis (tp, flugelhorn)
Lew Soloff (tp, flugelhorn)
Hank Crawford (as, bs)
Karen Joseph (piccolo, fl)
Janice Robinson (tb)
Kiani Zawadi (tb)
Grant Green (g)
Wayne Morrison (g)
Jorge Dalto (p, elp)
Mario E. Sprouse (elp [6])
Mark Shuman (cello)
Anahid Ajemian (violin)
W. Sanford Allen (violin)
Paul Gershman (violin)
Matthew Raimondi (violin)
Buster Williams (b, elb)
Doug Wilson (ds)
Shanimba (per)
まるで70年代の売れ線ブラック・ミュージック。なんてったって[1]と[6]はコモドアーズの有名バラード、[2]はビリー・ジョエルの名曲というだけで狙っている路線が見えてくる。ストリングスやホーンのアレンジが実にイージー・リスニング的でそのテの音楽が好きな人には楽しめるんだろうけれど、いかんせんマッタリしすぎ。マイペースなところはさすがグリーンと言えるものの、70年代アメリカン歌謡曲の感は拭えない。[4] は、グリーンらしいソロが聴けたりしてそれなりに楽しめるけれど、ギター・ソロが終わるただのまったり音楽へ。パーティのときに小音量で流しておくBGM向けか。 (2010年1月22日)