●古川謙三氏を訪ねる

 こうして、水田様御夫妻からはじまったインタビューは、橋様御夫妻のお話でいちおうのピリオドをうつことができた。インタビューの途中までまったく乏しかった資料や写真も、とらっとろーど/2001(別ページ)でキャスコゲームのパソコン版を製作された(株)テクノブレイン様のご好意により、今までにない充実をみせることができた。
営業職と技術職というそれぞれの視点からインタビューというのも実は以前からの宿願で、個人的にも実に満足度の高いインタビューになったと思う。

 ただ、しかし・・・
 日々内容が厚みを増すごとに、払拭できないひとつの引っかかりが出てきた。関西精機製作所の創業者・古川謙三氏へのアプローチである。


 古川氏はすでにかなりの高齢で、今はもう静かにご隠居されているらしい・・・という話は取材中端々で耳にしていた。創業者がご健在である以上、「こういうインタビューを発表するのですが」と、一言断りを入れる努力をするのが筋というものではないか。また、都合のいい話だが、もしよければ、このインタビュー企画に参加していただけるよう働きかけてみては・・・。
しかし、偶発的にスタートした企画であるとはいえ、今からでは取材の順番が違う。キャスコの歴史を書くなら、本来、古川様の話が骨組みになるべきだろう。さらに、今まで構成してきたインタビューは、古川様に必ずしも歓迎されるべき話ばかりではないのだ。
橋(富)氏曰く「そりゃあ、技術者だからしっかり内容は読まれると思いますよ」。さて・・・どうしたものか。

 いや、答えはひとつだろう。創業者の足跡を汚さぬためにも、ここは古川氏の思うところを併記する努力をするべきなのだ。迷う私に
橋(富) 様はこうも言ってくださった。「自分のことを聞いてもらえるんだからね。それはうれしいと思うわよ」。

 とにかくここまでの経緯と思うところのすべてを、古川氏に書簡で届けることにした。そして数日後、あらためて確認と主旨を説明させてもらい、ついに、古川氏と奥様のご了承をいただいた。伝説との邂逅。
年は明けて平成15年1月、のことである。



古川謙三氏

 緊張の面持ちで対面した古川謙三氏は・・・もの静かで気品あふれる紳士だった。それでいて時折見せられる気さくな笑顔。実は前出「とらっとろーど」のインタビューで、古川氏の音声が収録されていない理由にも怖気づいていたのだが・・・、何のことはない、それは単にお言葉数が少ないだけとわかりホッとした。(^^(お若い頃から無口だそうである)。
  古川氏の静かなひと言ふた言に、同席していただいた奥様や、次女の睦子様がフォローされる形で取材は進む。ここらの構成が基本的に寺町のモノローグになっていくのはそういうことである。






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