●アイデアの保護・海外マシン 　��橋靖和氏は現在、ビデオゲームの製造、アミューズメントスペースの企画、経営を手がける富貴商会の代表を勤める。ご婦人の富貴子氏もまた、株式会社フウキの代表取締役として、今も業界の最前線に立たれている。アーケードゲーム「阿修羅バスターズ」、GBA「妖怪道」をつくった会社と聞けばうなずく方も多いだろう。 　お二人もまた、関西精機製作所の黄金期に、営業と営業事務で活躍されていたOBである。 秋も深まる11月初旬、水田氏のご紹介で、お二人にインタビューをさせてもらう時間をつくっていただくことができた。場所は京都・山科の富貴商会本社。また、お忙しい中、水田（健次）氏にも同席いただいた。 寺町：水田さんに最初にうかがったのが、キャスコなくして業界の発展はなかったということなんですが、そのあたりのお話からうかがえるでしょうか。 ��橋(靖和氏)（以下、特記ない場合はすべて靖和氏）：それはやはりね、ミニドライブとか、この業界のはしり的なものをつくってきたというところだね。 寺町：それはいままで、そういったものはなかったわけですよね？ ��橋氏：もちろん。商いではなく趣味の延長上であるとか、遊園地でそういうものを乗りたいということで手作りのものはあったかもわかりませんけれど、事業体として完成体をつくったのは、国内資本では関西精機がはじめてだったのかな？と思う。 　戦後、昭和30年。関西精機とナムコ。当時、中村さん（ナムコ創業者）がスタートされたとき、お父さんが鉄砲店をやられていた関係で、夜店にいったらコルク銃？そういうものからスタートされたと思う。詳しくは知らないけれど。その後5年か10年くらいたったあたりかな。木馬を三越の屋上に置かれたのがスタートだと思うね。 　 中村さんも大体月に１、2回は関西精機の方にお見えになって、古川社長といろいろ話をされて、ご自分自身の商売の何かにつなげられていたと思う。 　 やっぱり一番の飛躍は、インディ500という投影式のドライブゲームをつくったと。それはもう、今のドライブゲームの原点だからね。それは現在テレビに置き換わっただけでやることは全くいっしょの行為ですよ。 寺町：私はナムコのF-1ってのをよくやったんですが･･･。これは全く関西精機製作所のオリジナルですか？ ��橋：えっとね、その前におもちゃであったんですよ。子供さんのゲーム機械で。投影式の。それにヒントを得てつくられたということですね。これが世界中でビッグヒットしたと。 　その時にね、会社が一気にメジャーにあがっていった時期ですよ。当時セガなどが海外から来られてドンドン成長してこられて、一応「海外に持っていくものについてはセガが一番だ」と。いうような時代にインディというものが急にヒットしてしまったために、関西精機が独自にアメリカ、ヨーロッパに出していったわけですね。インディ500という商品を。 その時、セガにわたす機械が無いから、わたせないから、それでセガのいろんなメンツもあると。ということで、独自にセガはまねしたと思うんですよ。 関西精機はインディ500だったから、なんだったかな、「グランプリ」という名称で。ナムコは「レーサー」という名称で出したと思う。 「ゲームマシン」（アミューズメントプレス社刊)の660号の特集「TVゲームの歴史」によると、関西精機製作所は海外のメーカーにライセンスするほどの技術を持ちながら、特許を申請しても登録までに数年かかるという理由で、著作権や工業所有権、俗に言うパテントの類を積極的にとっていなかったことが暗示されている （別方面で確認したが、ミニドライブやインディ500といった代表作でさえ取得されていなかったらしい※）。 同紙によると、そうしたアイデアの保護というものは、関西製作所を支持するオペレーターの態度という、頼りないものに委ねられていたそうだ。似たような製品が続出するのも当然のことだった。 僕自身も少し力がついてきて、独立してから海外に行くようになった。その時、あれ?これ関西精機の機械とは違うのか？と思う原点が多くの部分であったんですよ。なるほど。古川さんがこれを見てこれをつくられたのか、誰かから聞いたり写真で見聞きしてつくられたのかは知らないけれど、関西精機も当時のアイデアとか技術力であるとか、全部じゃないですよ、いくつか海外に原点があったということね。ミニドライブの原点も･･･。 水田：あ!あったの? ��橋：大きなもっとあれの何倍も大きなベルトがまわっていくものがあって、ウイルスさんがおられたから、ウイルスさんからきかれたかもしれないけれど、原型的なものはあったのかなあ?と。 水田：やっぱり向こうの方がすすんでいたと。 ��橋：それはやっぱりね。けれど、それは商いだし、全部が全部コピーじゃないから。（寺町注：インディ500は関西精機製作所オリジナルです） 水田：関西精機のお手伝いをしていたウイルスさんという、オーストラリアの方が当時おられてね。個人で各国をはしりまわっていた人。ゲームを買ったり売ったりされていた。もう亡くなったんだけど。うちの会社はもうウイルスさん、ウイルスさんということで。 寺町：そのウイルスさんがこんなゲームがあるとか紹介したんでしょうかね? ��橋：それはあると思います。僕は直接、その席にいたわけじゃないからわからないけれど、こんな機械、あんな機械つくったらどうや？というのはあったと思います。 ほんとすごい方でね。今思うと、すごい機械をたくさん関西精機にもってこられてたよ。レーザーを持ってきたの知ってた？ 水田：レーザー光線だろ？ロビーで。日本ではじめてみた。 ��橋（富）：私は会議室で視聴?したよ。ホログラフィーと。 ��橋：ホログラフィーもね。「ガンスモーク」という。酒場のドアが開いて、銃を撃ったら･･･ 寺町：ひょっとして敵がアニメで倒れる奴ですか？ ��橋：そうそう。あれも関西精機が初めて。 ��橋（富）：あれすごかったもんねえ。 寺町：僕もなぜか覚えがあるんですよ。 ��橋：へえ?、そう。まあ、昔は生産されても5年10年持っていたからね。すごいですよね。 で、レーザー光線も、どこか外国の博士だったんだろうね。サントラが入って来たなあ。レーザーをだすために、スピーカーの一番ぶれるところに、アルミ箔をはってそこにレーザー光線をあてて、で、レーザー光線がスピーカーがぶれることによってその映像をだすという、すごいものを持ちこみをされてきたよ。 だから、ああいうものをね、中村雅哉さんがおっしゃったみたいに、それこそ東京大学の電子工学を出たような 人材が必要性があるんだということを古川社長がわかっておられたら、ほんとうに、いまみたいなことはなかったと思う。僕らもやめないでそこにおったと思うよ。きっと。 水田：それが結局あれやね。学生からアイデアを募集したりしてるやろ？ ��橋：そうそう。そこらがうちらとの違いやった･･･ね。 ※インディ500W型のパンフレットには、日・英・米・独・仏など特許出願中という表記も見られる。 型によるのだろうか?

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