Various Flower's Garden
名前の出てこない花や、たくさんの種類の花が印象的に登場する小説や漫画をご紹介しています。
<小説>
アラン・ガーナー 『ふくろう模様の皿』 評論社
ウェールズの古い屋敷で、アリスンと使用人の息子グウィンは天井裏に置かれていた不思議な模様の皿を見つけた。
同じ頃、アリスンの義理の兄ロジャは谷間の岩の近くで悲鳴を聞き、岩にあけられた穴に気づく。
屋敷に戻ったロジャは、アリスンが皿の模様がフクロウに見えると主張したことに驚かされる。彼女は皿の模様を紙にうつしてはさみで切り抜き、フクロウの形にしあげたのだ。
アリスンたちが皿を見つけたことに驚き、おびえるグウィンの母親。この土地のことをよく知っており、不可解な言動をするヒュー・ハーフベイコン。
アリスン、ロジャ、グウィンたちの間に起こるできごとは、遠くウェールズの神話ともつながりだして……。
そこで、彼らは、カシの花、エニシダの花、メドウスィートの花をつみ、これらの花をつかって、かつて見たこともないほど美しく、非のうちどころのない乙女をこの世によびこんだ。 (p.72)
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児童書の棚に置いてあるのが不思議なほどに、重苦しいファンタジーです。それでもラストの美しさは印象深く、映像でぜひ見てみたいほどでした。
サラ・スチュワート『リディアのガーデニング』アスラン書房
両親の仕事がうまくいかず、生活に困るようになったことで、リディアは町のおじさんの家にしばらく預けられることになった。
パン屋のおじさんはリディアを迎えてもにこりともしない人だが、リディアはおじさんの家にウインドーボックスがあったことを大喜びする。
パン作りについては全然分からないけれど、リディアはガーデニングが大好きだったのだ。
おばあちゃんに送ってもらった球根や種を植え、おじさんのお店で働いているエマにパンのこねかたを教わっているうちに、リディアはすごい計画を思いついて……。
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手紙で構成されている文章部分と、絵のバランスがとてもよいです!
おじさんのお店の中や外に少しずつ花がふえていき、おじさんも少しずつ変わっていく……。
とても素敵な絵本です。ラストもいいですね〜。
デミ 『皇帝にもらった花のたね』 徳間書店
花を大好きな人たちが住む国の皇帝が、ある時、花の世話をしながら、そろそろ世継ぎを選ばなければいけないと考えた。
そこで、国中の子どもたちに花の種を渡し、その種を大切に育てて、一年後に見せにくるようにと伝えた。皇帝はその子どもたちの中から世継ぎを選ぶのだ。
花が大好きな男の子ピンも、種を受け取り一生懸命育てたのだが、どうしても芽が出ない。みんなに笑われると思い、恥ずかしく思ったピンがどうしたかというと?
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花がたくさん出てくる絵本です。
ファージョン 「ヤング・ケート」(『ムギと王さま』) 岩波少年文庫
ヤング・ケートはお年寄りのドウさんの女中だった。仕事がすみ、牧場に行っていいかドウさんにきいてみると、ドウさんは「《みどりのおんな》に会うといけないからさ。……」と言って許してくれない。同じように、川にも森にも行くことを許してくれなかった。
しかし、ドウさんが死んだあと、別の場所に働きにいくために牧場を通ることになり……。
ジャネット・テーラー・ライル 『花になった子どもたち』 福音館書店
母親を亡くしたオリヴィアとネリーは、父親の仕事のために夏休みをミンテイーおばさんのところで過ごすことになった。おばさんは名の知られた園芸家だったというが、今は庭の手入れも満足にできないぐらいにすっかり年をとっている。
オリヴィアとネリーがおばさんの家に到着した日、父親は二人をさっさと置いてきぼりにしてしまう。妹のネリーはまだ五歳半で「ややこしい性格」をしているため、オリヴィアはネリーとおばさんがうまくいかないのではないかと心配していた。案の定、早速幾つかの問題が起きたが、思ったよりもずっとおばさんは話が分かる人間で、彼女たちは少しずつうまくいくようになった。
ある日のこと、ミンティーおばさんが彼女の庭で青いティーカップが埋まっているのを発見する。おばさんは古い庭ではこういうことがおこると言い、その他にもいろいろなものを見つけてはオリヴィアたちに教えてくれた。
おばさんがティーカップを見つけて間もなく、オリヴィアは昔今いる家に住んでいた作家が書いた本を発見する。それは『花になった子どもたち』の話で、花になった子どもたちを人間の姿に戻すには、庭に埋められたティーカップやポットを探し出すことが必要なのだった。
それを聞いたネリーは早速ティーカップとポットを探し始めて……。
花になった子どもたちは妖精のまじないにかかったまま、バラ、アヤメ、レディー・スリッパ、ルピナス、デルフィニウム、キスゲ、マツヨイグサ、フランスギク、チューリップの姿で、ずっと庭に咲いていました。 (p.65)
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夏に咲く花がたくさん出てきます。
魚住直子 『園芸少年』 講談社
自分でもおとなしい性格だと分かっていた達也は、同じようなタイプが集まっている学校を受験し、無事合格することができた。
学校に少しずつ慣れたある日、昼休みに学校をぶらついていた達也は、入学前に自転車を起こすのを手伝ってくれた少年に出会う。
彼はズボンを落としてはき、眉はほとんどないなど、達也の通う学校ではめずらしいタイプだった。しかも、彼との出会いがきっかけで達也は園芸部に入ることになってしまう。
最初は気が進まなかったが、水をやり、種をまいているうちに達也はどんどん植物に興味を持ち始める。
相談室登校の生徒も新たに部員に加わり、うまくいっているように見えた部活動だったが……。
知っている花が増えると、家の近所や通学途中の道路に、急に花が増えた。 (p.99)
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水をやっただけで葉っぱが元気になる、種を蒔くと芽が出てくる……よく考えると不思議ですよね!
夏目漱石 『三四郎』 岩波書店など
二人の女は三四郎の前を通り過ぎる。若いほうが今までかいでいた白い花を三四郎の前へ落として行った。三四郎は二人の後姿をじっと見つめていた。看護婦は先へ行く。若いほうがあとから行く。はなやかな色のなかに、白い薄(すすき)を染め抜いた帯が見える。頭にもまっ白な薔薇を一つさしている。その薔薇が椎の木陰の下の、黒い髪のなかできわだって光っていた。
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三四郎が、後に再会することになる女性との出会いのシーンです。
「白い花」とわざわざ何回も書いてあるので、頭にさしている薔薇ではないんでしょうね。
一体何の花だったのか、気になります。
青空文庫で読むことができます。
<漫画>
川原泉 「花にうずもれて」(『空の食欲魔人』収録) 白泉社
理性のたががはずれると、どこからともなく花を出現させてしまう花乃子は、一度花を出すところを目撃されて以来、人前で笑うこともできないでいた。ところが、家庭教師の広瀬さんはにこやかな人で(かつ、花乃子の笑顔を意地でも見たいと思っているので)、花乃子は対応に困ってしまう。
すると、ある日……。
須藤真澄 『振袖いちま』 偕成社
ひいおばあちゃんの形見の市松人形をもらったゆき。
生まれる前に亡くなったひいおばあちゃんのお人形に話しかけたゆきは、ぎょっとする。市松人形が自分は「いちま!!」と呼ばれていたと言い出したのだ。
しかも、この市松人形は小川のほとり(今は土手)に行くと、なぜか人間の娘の姿を取ることができるのだ。いちまはお友達(ひいおばあちゃんのこと)の夢をかなえると言い出し、ゆきはそのペースに巻き込まれてしまい……。
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ぶつぶつ言いながらもいちまの言うことをきいてしまうゆきがいいですね。
おまけについている切り抜いて遊べるドールハウスセットも可愛らしいです。
高橋留美子 「約束の明日」(『人魚の傷』収録) 小学館
人魚伝説を扱った連作短編の一つ。
真魚(まな)と旅することになった湧太は、昔世話になった女性の墓参りに行ったところ、その女性が60年前と変わらぬ姿で生きているとかつての知り合いに教えられる。
その女性、苗の許婚だった男は、現在苗の屋敷と周辺の土地を買い取り、苗をその屋敷に住まわせているようだった。
昔と変わらぬ姿で生き続ける苗の正体はとは?
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苗が人魚の灰をまいた場所は、冬でも赤い花が咲き乱れ、赤い谷と呼ばれています。
赤い花は芍薬のように見えますが、実際はどうなのでしょう?(牡丹のイメージともとれるような)
ご存知の方は教えてくださいませ。
TONO 「花の男」(『ナバナバパラダイス 犬童医院繁盛記』収録) 朝日ソノラマ
オルグの悩みは「体臭」。しかも、普通の汗のにおいなどではなく、毎日違う花の香りがするのだ。
恋人のローダには毎日違う香水をつけていると思われ、両親はオルグの汗をハンカチにしみこませて商売をしている。
ローダに嫌われたくないオルグが悩んでいるところに、ひとりの女性が現れて……。
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この作者の短編は切り口が面白いものが多いですが、これは笑える種類のものです。
TONO 「花ばかりの王国」(『ナバナバパラダイス 博士の魚たち』収録) 朝日ソノラマ
16の誕生日に一番すばらしい物を贈ってくれた人と結婚すると言い出したのは、王国の姫君本人だった。しかし、近隣諸国の諸侯からの贈り物が山となっても、姫君は言うのだ。
「私は美しいものしか愛せません」
大臣のリカは大変美しい若者で、姫君は彼と結婚したいという。条件は誰も見たことがないような美しい花を贈ること。
国中を探し回って美しい花を集めたリカに、姫君は冷たかった。どこにでもある花では満足できないのだ。
困り果てたリカのところに、弟子を探している少年が現れて……。
なるしまゆり 「トロピカル・ヴァンパイヤ」(『レプリカ・マスター』収録) 新書館
雪広の経営する生花店「ハニーポット」は、
大きなマンション群の北側すぐ向かいにあるという立地条件の悪さにもかかわらず、
常連客もつき、軌道にのりつつある。
日中影になって陽が当たらない場所をわざわざ選んだのには、
雪広の「兄」という大きな理由があって……。
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タイトルで分かるとおり、人間でない生き物も出てきます。
水木しげる 「妖花」(『ゲゲゲの鬼太郎2』) ちくま文庫
両親のいない花子のアパートの植木鉢に、毎年のように風に運ばれてきた種が花を咲かせた。その花は物干し台に咲きほこり、花子の部屋にも入ってくるのだ。その花は南方のジャングルに咲く花だという。
その花について妖怪医となのるねずみ男がやってきて調べようと言い、色々な忠告をするが、花子はその相談料の高さにためらってしまう。
結局花子は妖怪ポストに手紙を入れることにするのだが……。
杜野亜希 「嵐(テンペスト)を待っている」(『黒のチェックメイト』収録 白泉社
劇団グローブ公演の新解釈「テンペスト」は好評のうちに幕をおろした。成功記念パーティで、、ミランダ役の女優とエアリエル役の新人俳優の婚約が発表され、全ては順調かと思われた。しかし、突然の爆弾騒ぎが起き、パーティに集まった人々は、会場に閉じ込められてしまう。そこへ、エアリエルと名乗る犯人からのメッセージが届く。「お前たちへの復讐だ」と告げる犯人との駆け引きが始まった。
神林&キリカシリーズ第19弾。
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たくさんの「花」が出てきます。
山田睦月 「a wish flower」(『ミッドナイト・ロンリー・モンスター』収録) 新書館
体の弱いカナを心配するセツは、何とかしたいと、
村の魔法使いに相談に行く。
魔法が使えたらカナを喜ばせることができるのにというセツに、
魔法使いはタネを一つ渡すのだった。
そのタネの使い方は自由と教えられたセツは、
やはり普通にタネをまくことにするのだが……。
山田睦月 「月下美人」(『ミッドナイト・ロンリー・モンスター』収録) 新書館
友人の蘇枋がおかしいと聞かされた高乃は、蘇枋を観察することにした。
すると、授業中彼の口から葉っぱのようなものがはみ出しているのに気づく。
真相を問い質した友人たちに、
蘇芳は、ある朝空からうす茶色のかたまりがおりてきたと教えてくれたのだが……。
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月下美人がそのまま出てくる話ではありません。