CRT & レココレ
Presents:

Vol. 32
『地下室』より愛を込めて〜ボブ・ディラン&ザ・バンド Night〜

アメリカン・ロックの偉大なる分岐点。ボブ・ディラン&ザ・バンドが1967年、ウッドストックで行なった伝説の宅録セッション『ベースメント・テープス』の全貌を、最新リマスター海賊盤4枚組などを駆使しつつ解明する。Vol.31の『ラスト・ワルツ』Night に続く、ザ・バンド強化月間第2弾! 前回からの居残りゲスト、われらが鈴木慶一さんと、『ベースメント・テープス』ハード・リスナーの本“レコスケ”秀康くんとのトークバトルにも注目です。

2002年5月16日(木) at 東京・新宿LOFTプラスワン
OPEN 18:30 START 19:30
ゲスト: 鈴木慶一(ミュージシャン)、本秀康(イラストレーター)
出演: 萩原健太(音楽評論家)、寺田正典(レコード・コレクターズ編集長)
料金: 1500円(ワンドリンク付き)
問い合わせ: LOFTプラスワン 03(3205)6864
Daddy & The Surfbeats
萩原健太がメンバーの一員であるサーフ・インスト・バンド、ダディ&ザ・サーフビーツの最新ライヴ情報です。
6月22日(土)
水道橋・東京倶楽部
19:30-
with 東京バニーズ
萩原健太のポレポレナイト
Vol. 1
萩原健太のギター・マニア

ルーツ・ミュージック愛好家の隠れ家的な多国籍レストラン&バー、代官山「ポレポレ」で、萩原健太がDJパーティをやります。第1回目のテーマは萩原健太の好きなギタリスト大特集。ジェームス・テイラー、ポール・マッカートニーらアコースティック・ギターの名手から、ジェームス・バートン、アルバート・リーらカントリー・ロック・ギターのウルテク奏者、さらにエイモス・ギャレット、アルバート・コリンズ、ブライアン・セッツァーなど、ひとくせある連中のプレイを、おいしく飲んだり食べたりしながらみんなで思い切り楽しみましょう。奏法解説とかも、あり?
2002年5月18日(土) at 東京・代官山ポレポレ(東京都渋谷区代官山町12-1 三栄ビル2F)
OPEN 18:30 START 19:30
問い合わせ: ポレポレ 03(3690)6636
Kenta's Programs
萩原健太がDJ/司会/選曲をつとめるレギュラー番組のご案内です。

ミュージック・プラザ第2部ポップス(オールディーズ)(NHK-FM 毎週月曜日16:00〜18:00)
リクエストは「〒150-8001 NHK-FM ミュージック・プラザ第2部ポップス 月曜日 萩原健太」まで
ソングライター・ファイル(スターデジオ 毎月1回放送)
萩原健太のNothing But Pop!(選曲のみ。USEN-CS BF-52ch)
MUSICAスペースシャワーTV 毎週水曜 21:00〜22:00に初回放送。リピートあり) with 永積タカシ、池田貴史(Super Butter Dog)

The Last Waltz The Last
Waltz

The Band
(Rhino/Warner)
2002.5.8

 ゴールデン・ウィーク、忙しくて。なんだか最近、ずいぶんと仕事してるなぁ。えらいなぁ、俺(笑)。プロ野球も盛り上がってるし。スカパー系のチャンネルを導入していると、ほとんどの試合が見られるし。メジャーリーグもあるし。むちゃくちゃ楽しいけど、時間がないぞー。そんな中でも、たくさん新譜CDを買っていて。こっちも盛り上がっていて。けっこういい盤が多い。このページで紹介したいといつも思っているんだけど。その願いもかないません。

 まあ、趣味のページなので、大目に見てやってください。今後、なるべく頻繁な更新を心がけます。つーか、今までも頻繁な更新を心がけてはいたんだけどさ(笑)。

 まあ、いいや。前にも同じようなこと書いた気がするし(笑)。で、今回のピックアップ・アルバム。やっぱ、今はこれしかないでしょ。先月のCRT/レココレ・イベントでもテーマに取り上げたCD4枚組。ザ・バンドが1976年の感謝祭の夜、自らのライヴ活動休止にあたってゆかりの先輩・同輩ミュージシャンたちを多数集めて開催した伝説のイベントの記録だ。78年に当夜の模様をドキュメントした映画のサントラ盤という形でリリースされたアナログ3枚組に、ライヴ音源、リハーサル音源、スタジオ・デモなど未発表音源24曲を追加している。間もなく出る『レコード・コレクターズ』が“ラスト・ワルツ”の特集号みたいなので、詳しいことはそちらを参照していただくほうがいいかも。ぼくも巻頭の文章を書かせてもらいました。

 その巻頭記事のテーマってのは、「“ラスト・ワルツ”は何の終わりだったのか」。ただ、今回CD4枚組にアップグレードされたこの盤を聞いていて思ったんだけど、このイベントって、実は何ひとつ終わらせたわけじゃないんだよね。映画やライヴ音源を通じて今“ラスト・ワルツ”を追体験してみると、ここに登場してくる音楽もミュージシャンも、ほとんど今なお現役感を失わずに活動している連中ばっかりで。ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ドクター・ジョン、ヴァン・モリソン、スタジオ・セットのほうに登場するエミルー・ハリスなどなど。

 リチャード・マニュエルとリック・ダンコが他界してしまったために続行不可能になってしまったザ・バンド本体とか、やはりすでに亡くなってしまったマディ・ウォーターズとかも含めて、彼らは“ラスト・ワルツ”以降も素晴らしい活動を展開し続けた。当然、ここに記録された25年以上前のパフォーマンス群は、今のぼくたちの耳にもいきいきと現役の躍動感を伝えてくれる。

 唯一、何かが終わったのだとすれば、それは他のバンドのメンバーに相談もなく独善的にライヴ活動の停止を宣言し、このイベントを企画して、一介のバンドマンから音楽ビジネス界に深く足をつっこんだプロデューサー様へと華々しく転向したロビー・ロバートソンくらいのものだろう。ザ・バンドを愛するってことは、ほとんどすべての楽曲を作ったとクレジットされているロビー・ロバートソンを愛することでもあるのだけれど、そのロビーこそがザ・バンドをつぶした張本人でもあって、もしかすると彼がもっともザ・バンドのことを過小評価していたのかなとも思えて…事は複雑だ。

 そんなロビー・ロバートソンの監修によって再構成されたのが今回の4枚組。なもんだから、映画同様、彼にとって都合の悪い部分は今回もカットされている。“完全盤”を売りにしているものの、基本的にはアナログ盤の構成を踏襲。当日の演奏が実際のセットリスト通りに収録されているわけではなく、しかもリチャード・マニュエル必殺の「ジョージア・オン・マイ・マインド」とか、歌い出しを失敗した「キング・ハーヴェスト」とか、ヘルム=マニュエル=ダンコのヴォーカルが交錯するライヴ版「ラスト・ワルツのテーマ」とかは今回も収録されずじまい。残念だけど。

 しかし、今回はついにボブ・ディラン&ザ・バンドのパフォーマンスが完全収録された。これはうれしい。これまで出ていたオリジナル『ラスト・ワルツ』に収められていたディラン&ザ・バンドの演奏は「連れてってよ」「アイ・ドント・ビリーヴ・ユー」「いつまでも若く」「連れてってよ(リプライズ)」の3曲4トラックだったのだけれど、これ、まあ、ブートとかで聞いている人はご存じの通り、実際のライヴでは「アイ・ドント・ビリーヴ・ユー」の前に「ヘイゼル」がはさまっていた。その流れの全貌が今回ついに公式に世に出たわけだ。

 これがね、いいんだ。このディラン&ザ・バンドの4曲5トラックを聞くだけのために本4枚組を買っても損はない。断言します。既発表の4トラックはこれまでも何度も何度も聞いてきたのに、「ヘイゼル」が一発入るだけでこんなに違うのかと呆然とする。つーか、これがないと意味なしのパフォーマンスだったんだなぁと思い知る。全体がある種メドレーのように構成されているんだから、オリジナル・アナログ発売時に削るなよ。無理してでも入れとけっての。アナログ盤のときのプロデューサーって誰だっけ? あ、ロビーか。まったくよぉ。

 他にもザ・バンド単体での「ドント・ドゥ・イット」とか「アケイディアの流木」とかニール・ヤングを迎えた「風は激しく」とか強力な未発表音源あり。既発音源ながら、リチャード・マニュエルとヴァン・モリソンがそれぞれ独自のブルー・アイゾ・ソウル感覚を炸裂させつつ激突する「アイルランドの子守歌」も、やっぱりすごいし。たまらん毎日です。



 その他、最近よく聞いているニュー・リリースの中からほんの一部、列挙しておきましょう。

Little Feat Waiting For Columbus
Little Feat
(Rhino/Warner)

 もともとのアナログ2枚組をむりやり2オン1CDにするため、「ドント・ボガート・ザット・ジョイント」と「ア・ポリティカル・ブルース」の2曲が、なんと『ザ・ラスト・レコード・アルバム』のCDの空き部分に追いやられるという、ひどい目にあっていた傑作ライヴの完全版。おまけに、78年の段階でライヴ盤に収録すべくミックスダウンされていながら最終的な選曲からは漏れてしまっていた5曲、81年のコンピ『ホイ・ホイ!』に収録された3曲、および今回のCDリリースに合わせて新たにミックスされた2曲がボーナス追加されている。すべて本編同様、77年8月のワシントン公演とロンドン公演からのライヴ音源だ。タワー・オヴ・パワー・ホーン・セクションを従え、ファンク、ジャズ、ニューオリンズR&B、ゴスペル、ブルース、カントリーなどを刺激的に融合した独自のグルーヴを大爆発させている。

Wilco Yankee Hotel Foxtrot
Wilco
(Nonesuch)

 レコード会社ともめまくったあげく、すでに完成していた新作アルバムのマスター・テープを5万ドルで買い上げレコード会社を離れてしまったウィルコ。当然、アルバム発売は無期延期。その際、何らかの経緯で流出した新作の収録曲が去年ネットを駆けめぐったりしていたけれど。ここにきて、ようやくノンサッチとの契約が実現。めでたく幻の新作がリリースされることとなった。バンド単体としては99年の『サマー・ティース』以来。その間、ドラマーが変わったり、本盤を最後に名ギタリスト、ジェイ・ベネットが脱退してしまったり……と、ウィルコを取り巻く状況は大きく揺れ動いたのだけれど、しかしジェフ・トウィーディがいる限り、ウィルコはウィルコ。めざす音世界は揺るがない。といっても、オルタナ・カントリー色はもはや皆無。この辺がジェイ・ベネット脱退の大きな要因って気もするけど。その分、トウィーディの内省的なポップ感覚が爆発。ジム・オルークらのサポートも受けつつ、レディオヘッドに対するアメリカからの回答、とでも言いたくなるような深い世界を見事に作り上げている。

Tom Waits - Alice Alice
Tom Waits
(Anti)
Tom Waits - Blood Money Blood Money
Tom Waits
(Anti)

 2枚同時リリースされたトム・ウェイツの新作。どちらも録音は去年から今年にかけてらしいが、『アリス』は92年にハンブルクで初演された同名ミュージカル、『ブラッド・マネー』は00年にコンペンハーゲンで初演された演劇“Woyzek”…いずれもロバート・ウィルソン監督のもと制作された舞台のためにウェイツが書き下ろした楽曲をそれぞれ自演したものだ。主にアヴァンギャルド・ジャズ系の、一癖ある連中を従え、独特のトム・ウェイツ・ワールドを編み上げている。今回は、アイランド移籍後のウェイツ作品に共通していた、ヴォーカルをわざと煤けたような音質にしたりするローファイなアプローチはほとんど聞かれない。少々アヴァンギャルドなアプローチを展開する曲でも、音はけっこうハイファイ。ウッドベースの音圧とか、しゃがれまくった強烈な歌声の深みとかが、しっかりスピーカーを震わせてくれて。ぐっと腰にくる。音質も含めてアルバム全体を演出するのではなく、今回はあくまでも楽曲自体を聞かせたいということなのだろうか。ただ、アサイラム時代によく聞かれたタイプの必殺のバラードとか、しかし当時ならば普通の流麗なストリングス・セクションで彩ったであろうところを、パンプ・オルガンとストロー・ヴァイオリンなどのアンサンブルで朴訥に聞かせてみたり。泣ける。

Neil Young Are You Passionate?
Neil Young
(Reprise)

 スタジオ盤としては2年ぶりになる新作。9.11に触発された「レッツ・ロール」をはじめ、どひゃーっとロックするニール・ヤング節もちょっと入っているけれど、今回の目玉は何度かツアーにも同行しているブッカー・T・ジョーンズとドナルド・ダック・ダンの参加だから。彼らが参加したソウル・テイストの楽曲こそが聞き物だ。メロディは『ハーヴェスト』〜『ハーヴェスト・ムーン』系の優しいニール・ヤング調。それをいぶし銀のソウル/R&Bサウンドが包み込む、と。悪いわけがないよね。去年のライヴでもクレイジー・ホースをバックに披露していた新曲「クイット(ドント・セイ・ユー・ラヴ・ミー)」が、ブッカー・Tらを迎えてまた別の表情をたたえていたりして。最高っす。

Sheryl Crow C'mon C'mon
Sheryl Crow
(Interscope)

 シェリル姐さん、スタジオ盤としては実に4年ぶりとなる新作だ。基本的には全編変わらぬシェリル節。持ち前のクラシック・ロック趣味に貫かれた“いい曲”が目白押しだ。相変わらずはすっぱでブルージーな歌声も炸裂。文句なしの仕上がり……。なはずなんだけど。何かが足りない気もする。久々の新作ってこともあって慎重になりすぎたのだろうか。自分の過去の持ち味を再検証し、それらを緻密に再構築したような感触がどの曲にも聞き取れて。ドン・ヘンリー、レニー・クラヴィッツ、リズ・フェア、ディキシー・チックス、エミルー・ハリスといったゲストの選び方にもその辺の意図が見え隠れしている。おかげで、これまで彼女のアルバムにそこはかとなく、しかし魅力的に漂っていたオルタナ感が消失してしまったような気がする。まあ、あまり深く考えず、よくできたポップ・ロック盤として楽しむのが正解なんだろうけど。



The Association
Brendan Benson
Joey Ramone
Say It Loud!
Willie Nelson
American Roots Music
Rickie Lee
CCR
Jay Farrar
Hank Williams Tribute
Borderline
Carole King
Bob Dylan
Washington Square Memoirs
Brian Wilson
Buffalo Sprinfield
Whiskeytown
Lucinda Williams
Brian Setzer
The Beach Boys
Ron Sexsmith
Jason Falkner

[ Top | Pick List | Archive | e-mail]


Kenta's
Nothing But Pop!

To report problems with this site or
to comment on the content of this site:
e-mail kenta@st.rim.or.jp


Copyright © 2002 Kenta Hagiwara