革の物作りを始めてみませんか。革の物作りをするときの基礎知識や作業工程の一例を紹介します。
革物作り入門
トップページ
一窓店舗 工房・教室 リンク
革物作り入門 工具について
革と福祉
メール
-TUZIE-
革物作り入門トップ
革への誘い
革を始めよう
簡単な実技紹介
革物作りの実技
基礎知識
TUZIE 解説
??!!
疑問質問
TUZIE実験室
実験室1 鉄染み
実験室2 布海苔
実験室3 皮鞣し
実験室4 手縫糸




TUZIE実験室その2
フノリを作る


 革のコバや床の磨きに使われるフノリ。合成ノリに押されて使用されることが少なくなってきました。革の世界では、磨きに使われることが多いフノリですが、以前は生活の中の必需品でしたし、また今でも伝統工芸の世界には欠かすことのできない名脇役です。

 むかしは、日常的な紙の接着・布の洗い張り・洗髪などに使われていたようです。また工芸の世界では、染色・織物・七宝・陶芸などをはじめとして、いろいろな分野に使われていますね。

 大相撲の力士のまわしの下がり(絹製)を固めているのもフノリだそうです。筆の形を整えて固めているのもフノリ。和菓子の落雁を固めるのにもフノリが使われるそうですし、ソバのつなぎにも良いのだそうです。

 そんなフノリですが、国内でフノリを製造しているのは、いまや数少ない業者に限られているようです。

 フノリは食品としても食卓にあがりますが、おもに東北・北海道で食用にされることが多いのだそうです。健康食として紹介されることもあるようですが、それほどよく食べられていると言うことでもないようです。私の地元では、スーパーに行くと乾燥したフノリの袋詰め商品が、ごく普通に販売されています。全国的にはいかがなものなのでしょうか。

 むかし読んだ本には、フノリは「水に晒し、日に晒して」作ると書いてあったような記憶がありました。ある日仕事をしながら、「なんだか作ることができそうな気がするなー。」と思った私は、でたらめにフノリ作りを始めたのでありました。いつも、このような衝動は突然やってくるのであります。



フノリ作り フノリ作り
 上の左の写真のように、袋入りの乾燥フノリを買ってきました。20グラム入りで230円くらいでした。あまり食べることがないので、今回はあらためて試食もしました。お吸い物に入れ、また酢の物にしていただきました。味という味はありませんが、加熱しすぎなければ歯ごたえも良く、それなりにおいしく食べることができるようです。

 上の右の写真は、水で戻したところです。このように紅い海藻なのですね。紅藻類と言うようです。光合成をする時に必要としない光の波長の色になるのですって。(そのうち、知ったかぶりして誰かに教えちゃおう。)フノリにも種類があるようなのですが、フクロフノリやマフノリが一般的なようです。買ってきた商品は、ほとんどフクロフノリのような気がするのですが、マフノリも混ざっているのかもしれません。残念ながら詳しい知識がないので、よくわかりません。

 水で戻したあと、塩気を抜くためによーく水洗いしました。ネットで探した一文によると、海藻自体に含まれる塩分濃度は0.1〜0.2%くらいのようなので、何度か良く洗いさえすれば、それほど塩分を気にする必要はないのではないかと思いました。そう思いつつ、大丈夫だろうかと、口にして味見をしてしまった私です。

フノリ作り フノリ作り
 日に晒し始めるとすぐに、色が抜け始めるんですよー。これにはびっくりしました。お日様の力ってすごいですね。色が分解?されて抜けるためには、どうやら水気が必要らしいのです。水を補給しないでそのまま乾かしてしまうと、端のほうの色素がそのまま残ってしまいました。

 それで霧吹きで水を何度も補給しながら日に晒すと、比較的よく色が抜けるようでした。それと、水を補給していると「糊化」が進み、全体がとろっとしてくるんです。どうやらこれが大切らしいのです。あとで煮溶かす時に、たぶん溶けやすくなるのだと思われます。

 上の左の写真は、日に晒して間もない時です。右の写真は、日に晒して1日目の夕方の写真です。こんなに白くなりました。

フノリ作り フノリ作り
 上の左の写真は、2日目の朝の写真です。夜の間にも少し水気が飛んだようです。2日目は水気を補給しないでこのまま干しきります。右の写真が干しあがったところです。市販のフノリと近い仕上がりになっていますね。水気が飛んで、すっかりボリューム感がなくなって、量が少なくなってしまいました。

フノリ作り
 干す作業は、ザルの上でドーナツ型にフノリを広げて行いました。このままドーナツ型にはがすことができた時は気持ちよかったですねー。1回目のフノリ作りが、実は失敗しまして、これは再挑戦した2回目のフノリです。市販のフノリと比べると、端のほうの脱色がうまくいかなかった点もあったのですが、実際に使ってみると市販のフノリと変わりなく使うことができました。





フノリ作り
 最初は、でたらめに作り始めて、むかし読んだ本のいい加減な記憶から、何日もかけて何度も水と日光の晒し作業を繰り返すと思っていました。ところが、2日もやると、フノリが溶けてしまってほとんど姿がなくなってしまいました。

 これはどうも違うと思って、ネットで調べたのですが、色素は薬品で抜くと書いているくらいで、他に参考になるような記述はありませんでした。唯一参考になったのが、むかしの東京でのフノリ作りのぼやけた写真で、どうも水をまいているのです。最初の失敗から考えても、水をまくのは合理的だったので、早速試しました。フノリ作り2回目の挑戦。教室の合間を縫って、霧吹きでシュッシュッと水まき。

 短い昼休みに図書館へダッシュして、すぐにフノリ作りについて書いてある本を見つけて、フムフム納得! 色抜きは、現在では過酸化水素と苛性ソーダの水溶液を使うのだそうです。それ以外はだいたい違いはないようでした。

 先に調べればいいようなものなのですが、私はいつも失敗してから調べるタイプなのです。それに調べようと思った時に図書館が開いているとは限らないわけでありまして、図書館まで1分のところに住んでいるとはいえ、不便だなーと思うこともしばしばあるのであります。調べごとをしていて思うのですが、ネットでもいろいろな調べものはできますが、まだまだ図書館のほうが役に立つことがたくさんありますね。

 実は古い記憶では、フノリ作りは3週間くらいかかることになっていたのですが、実際にはさしたる手間もかからず2日でできました。量が少ないので簡単に作ることができたように思います。今回は、食用の乾燥フノリを30〜35グラム使用して、できた晒しフノリは22グラムでした。手間もそれほどかからずに作ることができて、私にとっては好結果の楽しい実験でした。

 でもこれが、販売するほど大量に作るとなると、まったく違った作業になることでしょうし、形を整えて出荷できる状態にするまでには、相当の時間と労力がかかると思われます。

 私が図書館で読んだ本によると、三重県に6軒と兵庫県に1軒のフノリの製造業者があるようです。東京フノリは、平成4年に製造を中止したと書かれていました。(他の地域についての詳細は、本の文章からは不明です。)また、フノリの原料の産地には、和歌山と長崎が上げられていました。長崎五島列島のフノリが特に良いのだそうです。(私が今回の実験に使ったのは、おそらく東北か北海道で取れたものです。)

 自然の恵みのフノリ。お手軽な合成ノリ剤と比べると面倒なところもありますが、もっと見直されて良い物ではないでしょうか。

 市販の晒しフノリは、染色材料として流通しているものが購入しやすいと思われます。革のクラフトに関係した業者ですとS社が定番で扱っています。

トップページ
一窓店舗 工房・教室 リンク
革物作り入門 工具について
革と福祉
メール
-TUZIE-