「技術編・道具編」
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1.縫い目の数が合わないのですが。
この手のこと何度も尋ねられました。それぞれの部品を別々に穴あけしているのですね。そういうやり方もありだとはもちろん思いますが、接着してから一緒に穴あけをすれば、問題解決です。
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2.接着には何を使いますか。
部品同士の接着は、合成ゴム系のボンドあたりから試してみてはいかがでしょうか。裏革を貼り込んだりする時は、ゴムノリも併用すると良いかもしれません。酢酸ビニル系の水性ボンドも、機能的で便利です。
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3.縫い代は何ミリですか。
小物は3ミリくらいで良いのではないでしょうか。あとは物に合わせてですね。自分できれいだと感じる幅で良いと思います。
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4.手縫いのロウはロウソクでも良いですか。
悪いとは言えないかもしれませんが、粘りが足りないのではないでしょうか。ビーズワックスを使うのは粘りがあるからだと思います。やはり、ビーズワックスがお勧めです。
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5.革は何でふくらませるの。
成形された市販品を見てのご質問です。一般に木型などの型を使って成形します。やはり木が準備しやすいのではないかと思いますが、現物を使っても良いです。テキストでは洋書の「メイキングレザーケース:1」に、解説や図解がたくさん掲載されています。参考にしてください。
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6.仕上剤は何が良いですか。
とっても難しい質問です。お手軽には水性ニスなどがあります。それで柔らかすぎたりべとつき感が出る場合は、スプレー式のラッカーなども有効かもしれません。革らしさを求めるのなら、オイルによる仕上げも良いですよ。素材・技法・目的によって使い分けるしかないので、これと言った答えはありません。ごめんなさい。
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7.コバ磨きのノリ剤は何が良いですか。
磨くためのノリ剤は、手軽に作ることのできるCMCをとりあえずは勧めていたのですが、最近はトコノールという製品を勧めることも少なくありません。すぐに使うことができるので簡単ですし、磨き上がりも早くきれいなようです。ちなみにCMCは粉になっていて、水かぬるま湯に半日くらいかかって溶けるものです。トコノールは、硬化しないような合成樹脂が主成分のようですね。製造元の技術の方の話ですと、天然のフノリも入っているそうです。
私は天然のフノリを使っています。お湯で煮溶かして使います。興味のある人はお試しください。
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8.コバ磨きのノリ剤は乾かしてから磨くのですか。
意外に多いのがこの部分なのですが、ノリ剤は湿っているうちに磨いてください。乾いてしまうと効果がなくなります。水気が大切なんです。
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9.革を漉く手工具が欲しいのですが。
カタログに小型の革漉き工具があります。それとは別に、革包丁は革漉きとも言われる道具ですから、革を漉くのに使いやすい刃物です。どちらも慣れが必要な工具です。
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10.家庭用ミシンで革は縫うことができますか。
ある程度は縫えると思います。昔ながらの足踏みや、モーターの強い物であれば調整しやすいと思います。ジグザグミシンは針が安定しないので、直線ミシンが本当は良いですね。
針は革用の貫通力の強い物が使えると良いと思います。押さえを強く調整して、押さえ金をテフロンに替えます。それから上糸調子も強めにした方が良いかもしれません。糸にシリコンオイルを施すとさらによいですね。
針が思うように準備できないかもしれません。家庭用ミシンの革用針はあまり充実していないので。私は母の足踏みミシンを工業用の針を取り付けられるように改造しましたが、最初ミシン屋さんに相談したところ、とんでもないと部品の調達を断られました。それで、仕方がないので自分で針棒の溝を削りました。たまたまうまくいきましたが、失敗する可能性もあるのでお勧めできる方法ではありません。針棒を職業用の物に替えれば何とかなるはずなのですが、部品の規格が違っているかもしれません。
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11.この模様は何ですか。
カービングのパターンについてのご質問です。わかりにくいところがありますが、植物をモチーフとした唐草模様です。独特に様式化と抽象化が進んでいる部分があって、わかりにくいところがあるのです。革の世界の伝統的な装飾模様です。
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12.カービングは難しいですか。
技法は、湿らせた革を叩くという単純なものですが、それなりに難しいかもしれません。でも、楽しいものですし、簡単すぎないところがおもしろいところでもあります。
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13.カービングの着色や陰影の付け方はどうするのですか?
メールでのお問い合わせがいくつかありました。
カービングの染色は、一般的な革の染料でできます。色の入れ方によって濃淡の演出もできます。水性の染料であれば、色の浸透性がそれほど高くはないので、革の圧縮度の違いで自然と濃淡を出すこともできます。簡単なところでは、ウェスなどを使って拭き染めすると、凸面だけ濃い染色ができますね。工夫次第でいろいろな表情になります。
メールで問い合わせてくださった人たちの知りたいことは、おそらくバックグランド(以下BG)やその他のツールで叩いた凹面への陰影のつけかただと思います。この部分も染料や絵の具でペイント感覚で処理することが可能だと思いますが、一般的に広く行われている方法にペースト染料などによるサビ入れがあります。
靴墨のようなペースト染料を革に塗り込んだ後、ウェスで拭き取ります。革の上に直に使うと、同系色の濃淡になります。また、仕上剤などで凸面の防染をしてからペースト染料を使うと、凸面が革の地色で残り、すっきり感のある明るい仕上がりとなります。
細かな工夫をすることで、より効果的な着色ができます。いろいろと工夫してみてください。
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