接着はとても大切な工程です。何をどのように接着するかによって、適する接着剤が変わりますし、同じ作業をするに当たっても、使用する接着剤によって作業性が異なります。
誰もが知っているような、一般的な内容になりますが、接着剤について簡単に説明します。
「ゴムノリ」
ゴムノリはあまり接着力を必要としない接着に使います。伸びがよく、塗りやすいノリです。接着後も、革があまり硬くなりません。
へりの折り返しに使いやすいですね。裏革を接着する時も、強度の必要のない部分に使います。
ゴムノリは接着する革の両面に塗布します。そして、十分に乾かしてから接着します。
「合成ゴム系ボンド」
合成ゴムのボンドは、普通のゴムノリよりも接着力の強い接着剤です。やはり、両面に塗布してから十分に乾かし、べとつき感が引いてから接着します。乾燥が不十分な状態で貼り合わせると、接着強度が弱くなり、その後の作業にもよくない影響が出る時があります。
厚塗りされたりはみ出したりしたボンドは、コバ磨きなどの時に、磨きの邪魔をしてコバがきれいに仕上がらない原因となります。接着剤の塗り方の上達が、作品の仕上がりの向上にもつながります。
合成ゴム系のボンドには、おもに黄色いタイプと透明なタイプがあります。全ての製品がそうだというのではありませんが、私が使った範囲内の透明なボンドは、やや塗布しにくい面がありました。私は黄色いボンドを使っています。
同じ黄色いボンドでも、商品により塗布する時の感じや、接着力や接着可能時間は異なるようです。自分で使いやすい製品を見つけてください。
以上は、有機溶剤を使用したボンドですが、水性の合成ゴム系のボンドというのもあります。私は1種類しか試したことがないのですが、接着力はあまり強くはありませんでした。でも、両面塗布の乾燥後に接着というのは、作業性が優れているので、水性という安全性を考えると、リハビリや教育現場には適する接着剤かもしれません。性能の向上や、低価格化が進めば、使用される機会が増えるかもしれませんね。
有機溶剤を使用した接着剤は、容器に入れていると溶剤が抜けて硬くなってきます。完全に固まってしまうと、捨てることになりますが、ある程度は溶剤を加えることによって適度な硬さに戻すことが可能です。
接着剤用の溶剤は、トルエンとヘキサンの混合物です。引火性も中毒性も高い物がありますので、十分に気を付けて使用してください。もちろん管理責任もあります。
接着剤を使用する時の換気などにも、十分に配慮してください。 |
「水性ボンド」
酢酸ビニル系の水性の接着剤です。木工用ボンドや手芸用ボンドとして販売されている接着剤にも、同様の物が多いですね。乾燥後は透明になり、やや硬さが出る点は共通の性質です。
乾燥後に硬くなるために切削性がよく、切り口の始末の時に合成ゴムのボンドのように接着剤が伸びて出てくるということもありません。造形的な作品で磨く工程が大切な場合などは、重宝する接着剤だと思います。接着力も十分にあります。多めに塗ると、片面塗布で接着することができるので、その点も便利な時があります。口金の溝に入れる接着剤としても、よく使われています。
だだし、貼り合わせた時の初期接着力が、合成ゴム系のボンドと比べると弱いので、用途によっては使いにくいと感じる時もあります。乾燥性の異なる製品が販売されています。塗布してから接着するまでの時間も考えて、使用する製品を選んでください。
ちなみに私は、乾燥性の異なる接着剤を混ぜて使っています。そういえば、でんぷんノリと酢酸ビニル接着剤を混ぜて、それを水で薄めたノリを製本用の布の裏打ちの接着に使用するというのもありました。他の水性接着剤とも混ぜて使うことができるのですね。
硬くなった時には、水を加えることもできますが、水を加えると急激に粘度が低下する性質があります。水を加えなくてはならない場合でも、ほんの少しずつ様子を見ながら加えていかないと、柔らかくなりすぎてしまいます。
「両面テープ」
お手軽接着剤の代表です。製品としては、非常に接着力の強い物も製造されていますが、皮革の加工に使用されるのは、ごく一般的な接着力のものです。通常のDIYショップで見かけるものとの違いといえば、テープの幅に狭い物があるということでしょうか。
強度のそれほど必要としない部分に、使用することになります。ミシン仕立ての縫製前の固定という意味合いの強いものだと思いますが、ミシンの針の落ちる部分にはテープがこないように接着することが大切です。針に粘着剤が付いてしまい、縫製不良の原因になります。ある程度はシリコンなどで防ぐこともできるようですが、テープを縫わないことが何よりですね。
以上の他にも、皮革の接着にはいろいろな接着剤を使用することか可能です。接着剤も、どんどん新しい製品が製造されて、最新の製品はよほど気を付けていないと、把握することすらできません。一般のお店では小売りされない、業界用の製品がどの分野にも必ずありますし。
古くは、漆・膠・小麦粉系の盤石ノリなども接着剤として使用されました。現在はあまり使用されていないと思われます。 |
「ノリベラ」
どの接着剤を塗布する場合でも、何で塗るかは重要ですね。自分にとって使いやすいノリベラをがあると、作業がしやすいです。
私は樹脂製のヘラが好きです。白い硬質の製品を使っていますが、素材はポリプロピレンか何かなのだと思います。ヘラに付いた接着剤を剥がす時も楽ですし、適度な弾力もあります。
形状になかなか良い物がないため、市販の製品を加工して使っていますが、レザークラフト業界に独自の物があっても良さそうな気がしています。レザークラフトのカタログには、市販のパテベラをノリベラとして掲載していることが多いようです。
ヘラの他にも、ブラシなども接着剤の塗布には便利です。
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