松村任三その人は、天文学とは関係のない学問分野の人ですが、日本の思想家として群を抜く「知の巨人」南方熊楠が、任三に深く関わっていた事実があります。
南方熊楠には、代表的な著作物として『南方二書』というものがあります。これは、熊楠が松村任三に当てた二通の手紙を、やはり日本を代表する民俗学者柳田国男が出版したものです。
熊楠については本文でも述べているように、彼の処女論文が天文に関するものでした。ロンドンで研究生活をしている中、『ネイチャー』誌に寄せられた読者の質問に、誰も答える様子がないので、なれない英文で書いたと本人が述懐するものです。
熊楠を天文学者の範疇に入れることはできないのですが、高萩出身の松村任三と南方熊楠がどのように関わっていたのか、興味深いものがあります。ここでは、熊楠の詳しい紹介は避けて、二人の係わり合いを紹介したいと思います。