より良い音楽を楽しむためのピアノの音が、「騒音源」 とされることがあります。
ご近所に迷惑をかけず、心おきなくピアノ演奏をするために、ピアノの防音について 問題点とその対策をまとめてみました。
お悩みの方の参考になればと思います。
ピアノ防音の必要性
音漏れの種類
ピアノ音の音洩れには、以下の種類があります。
空気伝播 | 共鳴板から出る音が、空気中を伝わって漏れる。 | 窓・換気扇など |
個体伝播 | ピアノのキャスター(脚)から床へ振動が伝わり、建物構造物伝わって漏れる。 |
床・壁・天井など |
二次個体伝播 | 室内のピアノ音圧が部屋の壁を振動させ、個体伝播と同様の音漏れをする。 | ****** |
音漏れの実際
一般的に鉄筋のマンションは密閉性はよいが、固体伝播による音洩れが多く、
標準的なピアノの室内音量は85~90dB程度で、近隣への音洩れは、次項で示す騒音規制基準値より、
鉄筋マンションで10dB前後、木造住宅で15~20dB前後オーバーしていることが多いため、
人間の聴覚的には基準値の2~4倍大きく聞こえるのです。
木造住宅は、空気伝播、固体伝播の両方に起因しています。
日常生活における音の大きさ騒音レベル=dB
静か | 日常生活音 | うるさい | きわめてうるさい | |
↑ | 無響室 0dB | |||
音量小 | 深夜の住宅地 30dB | 水洗トイレ 60dB | ||
ささやき声 35dB | ピアノUP 85-90dB | |||
普通の声 55dB | ピアノGP 100dB | |||
テレビ音声 50-70dB | 新幹線車内 70dB | |||
昼間の住宅地 45dB | 目覚まし時計 70dB | 犬の鳴き声 90dB | ||
オーディオ 70-80dB | どなり声 90dB | |||
音量大 | 掃除機 70-75dB | 地下鉄電車内 90dB | ||
↓ | 子供の笑い声 80dB | 地下鉄駅構内 95dB |
騒音規制基準値
東京都の場合、公害防止条例における騒音対策基準値は以下の通りです。
第一種区域 (住宅専用・文教地区) |
午前 40dB 夕方 40dB |
日中 45dB |
第二種区域 (住居専用・無指定区域) |
午前・夕方・夜間 45dB | 日中 50dB |
第三種区域 (商業・準工業及び工業地域) |
午前・夕方 55dB 夜間 50dB |
日中 60dB |
第四種区域 (繁華街指定地域) |
午前・夕方 60dB 夜間 55dB |
日中 70dB |
いろいろな防音の方法とその特徴
対策の手法別に見る防音の方法
ピアノ防音の方法には、大きく分けて以下の方法があります。
あわせて簡単に特徴も見てみましょう。
1. | 音源対策法 | ピアノ本体に、吸音・遮音材、脚部にゴム製インシュレーターをセットする。 |
2. | 部分防音工事法 | 窓、ドア、吸気ダクト等、音漏れが明確な部分のみ、防音工事を施す。 |
3. | 全体防音工事法 | 部屋全体に防音工事を施す。 |
4. | 音源デジタル化 | いわゆるデジタル式消音ピアノを取り付ける。 |
上記各項目別に見る主な特徴
1.最も安価で、かつ確実に効果の望める方法です。
鍵盤タッチは全く変わりません。しかし、音色の変化する製品もあるため注意が必要です。
また、防振ゴム台は、ゴム硬度と構造により、大きな効果差がでるため、ただゴムであれば良いと言う訳ではありません。
2.一般的に、費用の割には、効果の出にくい方法です。
この方法を行う場合は、音洩れ箇所を的確に把握した上で、工事を行うことが大きなポイントとなります。
3.最も望ましい方法ですが、費用がかなりかかります。
一般のご家庭でこの方法を行う方は少ないでしょう。賃貸住宅などの場合は、なおさら難しくなります。
4.最近はサイレントピアノも増えてきました。
デジタルですから、当然音量調整も可能なのですが、アクションは動作しているため、
その音が階下に伝わり、ガタガタとうるさいとも言われます。また、後付けもそれなりに高価なものです。
防音対策の検討順序とそれぞれの手順
1.ピアノの設置場所の再検討 … まずは、 ピアノの設置場所を変えてみる。
2.音源対策法を検討 … 次に、最も安くて効果のあるこの方法を検討。
3.構造的音洩れの原因究明と部分防音工事 … 費用は20~30万程度。
4.部屋全体に完全な防音工事を施す … 費用は坪当たり70~80万円程度から。
通常の音洩れトラブルは、 上記 1、2 の方法でほとんど解決しているようです。
当事務所でお勧めする防音材は、効果と併せて音色、残響率等も調節できます。
3、4の防音工事は、部屋の設計段階から行なわなければ、思うような効果が出ないのが現実です。
信頼できる測定器を持った専門業者へ依頼するのが良いでしょう。
ピアノ防音法選択のための自己診断
どの程度の防音対策を必要とするか、以下の表にしたがって自己診断してみましょう。
ピアノの音漏れは、住居の構造、環境、演奏者により異なるものですが、
以下の表中右にある、★印の条件においては、現在の音量から10~15dB減衰する対策を目安に、
○印の条件に当てはまる方は、より詳しい検証が必要ですので、別途ご相談ください。
近隣の状況 |
現在、苦情・トラブルが発生している。 近隣の方の、生活・職業に配慮を要する。 |
★ ★ |
練習量とその時間帯 | 音大生・音大受験生、レッスン室主催の方で、1日2時間程度。 深夜・早朝にも練習する必要がある。 |
★ ○ |
住居の構造 | マンションや密接した一戸建て住宅。 密閉していても近隣の生活音が聞こえる。 |
★ ○ |
防音の費用と効果
防音対策の施工例
防音の具体的な方法の費用と効果を、当方にて実測検証した結果をもとに見てみましょう。
鉄筋コンクリート造(SRC)5階建てマンション3階6畳和室の例
防音の方法 | 費用 | 効果(dB) | 備考 |
部屋全体の防音工事 | 200~300万円 | 35~38dB | 施工会社によるバラつき |
ピアノメーカー製 簡易防音室 |
150万円から | 37~42dB | 室内残響率に注意 |
ピアノ本体の防音材 (ピアノテックス)と 防振ゴム台を装着 |
8~9万円 | 36~40dB | 防音工事に迫る効果 |
ピアノ本体の防音材 (ライトテックス)と 防振ゴム台を装着 |
5万円程度 | 38~42dB | 簡易防音室に迫る効果 |
防振ゴム台のみを装着 | 1万円程度 | 43~46dB | 階下への振動をカットする。 マンションでは必須の対策。 |
弱音器装置 (マフラーペダル) |
既存 | 44~48dB | 室内音量は低下するが、階下での音量は実は変化がないに等しい。 |
窓の二重サッシ化 | 15万円程度から | 43~48dB | 窓が弱い時には効果大。総合効果は期待ほど大きくないケースが多い。 |
デジタル消音器後付け | 10~20万円程度 | (データなし) | アクション打弦ショックは伝わる。 |
木造や鉄筋コンクリート(RC)造の場合、 建物自体の防音性が低いため
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造ほどの効果が得られない場合があります。
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最適な防音の方法とは?
以上の結果から、最適な防音法は、予算が許せば部屋全体の防音工事をする方法と言えますが、
意外と安価な防音材と防振ゴム台を併用する、音源対策法も有効であることがわかります。
この方法は、デジタル技術の発達する以前から行われてきたもので、その効果は現在でも充分通用するものです。
防音対策は、建物の構造にかなり依存する部分がありますので、現状のピアノ設置場所でピアノの実際の音量を測定し、
漏れている箇所でも同様に音量を測定し、その差から建物の防音性能を判断することが理想です。
ご紹介した商品については、防音用品通販ページにてご注文を承ります。