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[問題]「対応」の下位類型として、以下の6概念が提示された。1.一意対応 2.一対一対応 3.写像 4.単射 (別名:一対一写像) 5.全射 6.全単射 これら「対応」の6類型は、どのような観点から分けられているのだろうか。 |
[文献]・小林『微分積分読本:1変数』2章3.(pp.54-55):逆関数が定義される条件を示すために、逆像の存在/非存在、逆像の一意性/非一意性という軸で、状況を分類。 ・松坂『集合・位相入門』第1章§3.B (pp.23-4); ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』2.1(p.27) ・彌永『集合と位相』§2.2(p.33)。 ・『岩波数学事典』項目57関係B対応(p.157) [左記設定の図解]![]() |
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[設定]ここでは、対応をf で表し、 対応f の始集合をA、終集合をB で表し、 始集合Aに属す元をa,a1,a2,a3,… 等々、 終集合Bに属す元をb,b1,b2,b3,… 等々で表す (つまり、a,a1,a2,a3,…∈A, b,b1,b2,b3,…∈B) という設定で、説明していく。 |
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[結論]結論から先にいうと、[ケース1-1] 始集合Aに属す元aに対して、終集合Bに属す元を割り当てないケース(つまり、f(a)=φとなるケース) [ケース1-2] 始集合Aに属す元aに対して、複数の「終集合Bに属す元」を割り当てるケース [ケース2-1] 『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』が複数となるケース [ケース2-2] 『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』が皆無となるケース(つまり、 f−1(b)=φとなるケース) のどれを排除し、どれを容認するかという観点から、 下表のように「対応」を分類したのが、 「一意対応」「一対一対応」「写像」「単射」「全射」「全単射」という「対応の6類型」に他ならない。 |
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・これら六つの「対応の下位類型」の包含関係を、ベン図で表すと、 下図のようになる。![]() |
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まじめな解説[対応の定義の確認〜様々な下位類型を発生させるテンプレートとして]・対応「f:A→B」の定義では、 [ケース1-0] 始集合Aに属す元aに対して、 終集合Bに属す元一個を割り当てるケース (1対1の割り当て) たとえば、f(a)={b} (右図) のほか、 [ケース1-1] 始集合Aに属す元aに対して、 終集合Bに属す元を割り当てないケース つまり、f(a)=φ となるケース(右図) (1対0の割り当て) や、 [ケース1-2] 始集合Aに属す元aに対して、 複数の「終集合Bに属す元」を割り当てるケース (1対多の割り当て) たとえば、f(a)={b1,b3}, f(a)={b1,b2,b3} (右図) も容認されていた。 だから、 [ケース1-1]や[ケース1-2]のような割り当てが f でなされていても、 f を「対応」と呼んで差し支えないのだった。 |
[ケース1-0の例] [ケース1-1] ![]() ![]() [ケース1-2の例] ![]() ![]() |
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・また、対応「f:A→B」の定義は、 [ケース2-0] 『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』 は一個だけ となるケース(1対1の割り当て) たとえば、 f−1(b)={a} (右図) のほか、 [ケース2-1] 『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』 が複数 となるケース(多対1の割り当て) たとえば、f−1(b)={a1,a4}, f−1(b)={a1,a3,a4}(右図) や、 [ケース2-2] 『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』 が皆無 となるケース (0対1の割り当て) つまり、f−1(b)=φ となるケース も容認していた。 だから、 [ケース2-1]や[ケース2-2]のような割り当てを、f がおこなったとしても、 fを「対応」と呼んで差し支えないのだった。 [対応の下位類型の分類基準]・以上の「対応の定義」を踏まえた上で、対応の下位類型 1.一意対応 2.一対一対応 3.写像 4.単射 (別名:一対一写像) 5.全射 6.全単射 を見直してみると、 これら下位類型はどれも、 対応の定義で容認された四ケース [ケース1-1] 始集合Aに属す元aに対して、 終集合Bに属す元を割り当てないケース つまり、 f(a)=φ となるケース [ケース1-2] 始集合Aに属す元aに対して、 複数の「終集合Bに属す元」を割り当てるケース [ケース2-1] 『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』 が複数となるケース [ケース2-2] 『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』 が皆無となるケース つまり、 f−1(b)=φ となるケース の いずれか、もしくは、すべてを、 排除する概念 となっていることがわかる。 ・つまり、 上記六つの「対応の下位類型」とは、 これら四つのケースのどれを排除し、どれを容認するか、 という観点で 切り出された概念である。 |
[ケース2-0の例] ![]() [ケース2-1の例] ![]() ![]() [ケース2-2の例] ![]() |
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・六つの「対応の下位類型」が、 [ケース1-1][ケース1-2][ケース2-1][ケース2-2]のどれを排除し、どれを容認するか を、実際に、書き出してみると、下表のようになる。
なお、[ケース1-1][ケース1-2]がともに排除された対応は、 例外なく、「始集合Aに属す元aに対して、終集合Bに属す元一個を割り当てる」[ケース1-0] ものになることに注意。 また、[ケース2-1][ケース2-2]がともに排除された対応においては、 例外なく、「『終集合Bに属す元b』を割り当てられた『始集合Aに属す元』は一個だけ」[ケース2-0] になることに注意。 * 分類の観点は、小林昭七『微分積分読本:1変数』2章3.(pp.54-55)を参考にした。 なお、ここでは、逆像の存在/非存在、逆像の一意性/非一意性の四つのケースにわけ、 このうち、逆像が存在しかつ一意であるばあいを、逆関数が定義されるケースとして明示(pp.54-55)。 ・これら六つの「対応の下位類型」の包含関係を、ベン図で表すと、 下図のようになる。 |
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・こうして、ベン図にしてみると、 6つの「対応の下位類型」は、複雑なかたちで折り重なっていて、分かりづらい。 理解を深めるためには、 それぞれの「対応の下位類型」の境界を把握するだけではなく、 複数の「対応の下位類型」の境界に挟まれた領域を把握したほうが、 よさそうだ。 ・そこで、以下では、ベン図に書き込んだ例1〜例7について、具体的にみていくことにする。 [例1]一意対応ではない対応 [例2]一意対応ではあるが、写像でも一対一対応でもない対応 [例3]一対一対応ではあるが、写像ではない対応 [例4]写像ではあるが、単射でも全射でもない対応 [例5]全射の写像であるが、単射ではない対応 [例6]単射であるが、全射ではない対応 [例7]全単射である対応 |
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[例1] 一意対応ではない対応・対応が、[ケース1-2]同一の「始集合に属す元」に対して、「終集合に属す元」複数個 という割り当てを容認するのに対して、 一意対応は、 [ケース1-2]同一の「始集合に属す元」に対して、「終集合に属す元」複数個 という割り当てを排除する。 ・つまり、 [ケース1-2]同一の「始集合に属す元」に対して、「終集合に属す元」複数個 という割当がなされていない「始集合と終集合との間の元の割当てかた」は、 「対応」と呼んでも「一意対応」と呼んでも差し支えないが、 [ケース1-2]同一の「始集合に属す元」に対して、「終集合に属す元」複数個 という割当がなされている「始集合と終集合との間の元の割当てかた」は、 「対応」とは呼べても、「一意対応」と呼ぶことは許されない。 ・だから、「一意対応ではない対応」とは、 実際に、 [ケース1-2]同一の「始集合に属す元」に対して、「終集合に属す元」複数個 という割り当てをやってしまっている対応である。 ・右図に示した例は、「一意対応ではない対応」。 f(a1)={b1,b3}、f(a2)=φ 、f(a3)={b1,b3} 、f(a4)={b2} となっていて、 元a1に対して、二元{b1,b3}を、 元a3に対して、二元{b1,b3}を、割り当てていることが、 「一意対応の定義」に反す。 |
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[例2] 一意対応ではあるが、写像でも一対一対応でもない対応・「一意対応」と呼ぶことが許された対応とは、「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」というルールを破らない対応だった。 ・「一意対応」に加えて、「写像」と名乗ることも許された対応は、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 というルールに加えて、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個いう割り当て[ケース1-1]をしてはいけない」 というルールも守った対応だった。 ・「一意対応」に加えて、「一対一対応」と名乗ることを許されたた対応は、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 というルールに加えて、 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]をしてはいけない」 というルールを守った対応だった。 ・だから、「写像でも一対一対応でもない一意対応」とは、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個を割り当てる[ケース1-2]」ことには、手を染めてないものの、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]」 と 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]」 については、 実際にやってしまっている対応のことである。 |
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・右図の「f:A→B」は、「写像でも一対一対応でもない一意対応」の一例。 f(a1)={b1}、f(a2)=φ 、f(a3)={b1} 、f(a4)={b1} となっていて、 元a2に対して、《終集合Bの元》を割り当てていない点で、 写像の定義から逸脱し、 《終集合の元》b1を、複数の『始集合に属す元』に割り当てている点で、 一対一対応の定義に反している。 しかし、どの「始集合に属す元」に対しても、 複数個「終集合に属す元」を割り当ててはいないので、 この対応「f:A→B」は、一意対応の定義の枠内にはある。 |
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[例3]一対一対応ではあるが、写像ではない対応・「一対一対応」と名乗ることを許された対応は、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]をしてはいけない」 という二つのルールを守った対応だった。 ・「写像」と名乗ることを許された対応は、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]をしてはいけない」 という二つのルールを守った対応だった。 ・だから、「一対一対応」だが、「写像」ではない対応とは、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]」 と、 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]」 には、決して手を出していないが、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]」 は、実際にやってしまっている対応である。 |
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・右図の対応「f:A→B」が、その実例。 f(a1)={b1}、f(a2)={b2} 、f(a3)={b3} 、f(a4)=φ。 となっており、 「『始集合に属す元』a4に対して、 『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]」 を犯すことで、「写像」から逸脱している。 なお、この対応「f:A→B」は、「写像」ではないのだから、 当然、単射でも全射でもない(単射も全射も、「写像」の下位類型)。 ・しかし、右図の対応「f:A→B」では、 f(a1)={b1}=一元集合 f(a2)={b2} =一元集合 f(a3)={b3} =一元集合 f(a4)=φ。 f−1(b1) ={a1}=一元集合 f−1(b2) ={a2}=一元集合 f−1(b3) ={a3}=一元集合 f−1(b4) ={a4}=φ だから、 |
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「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]」 と、 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]」 は、犯しておらず、「一対一対応」の枠内にはとどまっている。 ・定義上、「一対一対応」は、一意対応の一種なので、この一対一対応「f:A→B」を一意対応と呼んで差し支えない。 |
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[例4]写像ではあるが、一対一(一対一対応・単射)ではなく、全射でもない対応・「写像」と名乗ることを許された対応は、「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]をしてはいけない」 (要するに、「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」) という基準をクリアした対応だった。 ・「単射 (一対一写像)」と名乗ることを許された対応は、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]をしてはいけない」 (要するに、「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」) という「写像」の基準に加えて、 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]をしてはいけない」 という基準もクリアした対応だった。 ※「一対一対応」と名乗ることを許された対応とは、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]をしてはいけない」 という二つの基準をクリアした対応であるから、 「単射 (一対一写像)」と名乗ることを許された対応とは、 「写像」の基準と「一対一対応」の基準を同時にクリアしている対応だと言ってもよい。 ・「全射」と名乗ることを許された対応は、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]をしてはいけない」 (要するに、「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」) という「写像」の基準に加えて、 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が0個になる割り当て[ケース2-2]をしてはいけない」 という基準もクリアした対応だった。 ・ということは、 「『写像』ではあるけれども、『単射 (一対一写像)』でも『全射』でもない対応」とは、 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]」 「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]」 は全く犯していないが(要するに、どの同一の『始集合に属す元』に対しても、『終集合に属す元』1個を割り当ててはいるが)、 「同一の『終集合に属す元』を、複数の『始集合に属す元』へ割り当ててしまう[ケース2-1]」という振る舞いと 「同一の『終集合に属す元』を、どの『始集合に属す元』へも割り当てない[ケース2-2]」という振る舞いを 実際にやってしまっている対応のことである。 |
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・右図の対応「f:A→B」が、 「『写像』ではあるけれど、『単射 (一対一写像)』でも『全射』でもない対応」 の実例。 ・右図の対応「f:A→B」は、 f(a1)={b1}、f(a2)={b2} 、f(a3)={b1} 、f(a4)={b2} となっていて、 どの『fの始集合Aに属す元』に対しても、 『終集合Bに属す元』一個を割り当てており、 「写像」を名乗るための基準はクリアしている。 ・しかし、 f−1(b1) ={a1,a3} f−1(b2) ={a2,a4} f−1(b3) =φ f−1(b4) =φ となっていて、 |
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[ケース2-1]「『終集合に属す元』b1,b2を、複数の『始集合に属す元』へ割り当てた」という実績で、 「単射 (一対一写像)」を名乗るための基準に違反し、 [ケース2-2]「『終集合に属す元』b3,b4をどの『始集合に属す元』へも割り当ててない」という実績で、 「全射」を名乗るための基準に違反している。 |
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[例5]全射の写像であるが、一対一(一対一対応・単射)ではない対応・「全射」と名乗ることを許された対応は、 「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が0個になる割り当て[ケース2-2]をしてはいけない」 という基準をクリアした対応だった。 ・「単射 (一対一写像)」と名乗ることを許された対応は、 「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]をしてはいけない」 という基準をクリアした対応だった。 ・だから、「『全射』ではあるが『単射』ではない対応」とは、 すべての『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』1個ずつ割り当てており、 なおかつ、割り当てられずに売れ残った『終集合に属す元』も一つもないものの、 複数の『始集合に属す元』に対して、 同一の『終集合に属す元』を割り当ててしまっている対応である。 |
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・右図の対応「f:A→B」が、 「『全射』ではあるが『単射』ではない対応」の実例。 ・右図の対応「f:A→B」は、 f(a1)={b1}、f(a2)={b2} 、f(a3)={b3} 、f(a4)={b2} f−1(b1) ={a1}≠φ f−1(b2) ={a2,a4}≠φ f−1(b3) ={a3}≠φ となっていて、 すべての『始集合に属す元』に対して、 『終集合に属す元』1個ずつを割り当てており、 なおかつ、 割り当てられずに売れ残った『終集合に属す元』も一つもない。 だから、 この対応「f:A→B」は、「全射」と名乗るための基準をクリアしている。 ・ところが、 『終集合に属す元』b2を、二つの『始集合に属す元』a2,a4に割り当てており、 「単射」と名乗るための基準に違反している。 ・なお、右図の「『全射』ではあるが『単射』ではない対応」には、 「写像」「一意対応」と名乗る資格もある。 なぜなら、 「全射」と名乗るための基準は、 「写像」と名乗るための基準に、追加的な規制をかけたものであり、 「写像」と名乗るための基準は、 「一意対応」と名乗るための基準に、追加的な規制をかけたものであるから、 右図の「『全射』ではあるが『単射』ではない対応」に、 「全射」と名乗る資格がある以上、 「写像」「一意対応」の基準をパスしてしまっており、 「写像」「一意対応」と名乗る資格も認められるからである。 |
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[例6] 単射であるが、全射ではない対応・「単射 (一対一写像)」と名乗ることを許された対応は、 「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]をしてはいけない」 という基準をクリアした対応だった。 ・「全射」と名乗ることを許された対応は、 「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」 「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が0個になる割り当て[ケース2-2]をしてはいけない」 という基準をクリアした対応だった。 ・だから、「『単射』ではあるが『全射』ではない対応」とは、 すべての同一の『始集合に属す元』に対しては、『終集合に属す元』1個ずつ割り当てているが、 同一の『終集合に属す元』を複数の『始集合に属す元』に割り当てることはないものの、 少なくとも一つ以上の『終集合に属す元』が、どの『始集合に属す元』にも割り当てられないまま残る 対応である。 ・すると、「『単射』ではあるが『全射』ではない対応」では、 『始集合』のほうをみると、どの元も、一個の『終集合に属す元』とカップリングされ、 『終集合』のほうをみると、「一個の『始集合に属す元』とカップリングされた元」と、「相手のいない売れ残った元」の二種類がある ということになる。 *「同一の『終集合に属す元』を複数の『始集合に属す元』に割り当てることはないものの、 少なくとも一つ以上の『終集合に属す元』が、どの『始集合に属す元』にも割り当てられないまま残る」という基準の字面だけ見ていると、 「相手のいない売れ残った元」ばかりからなる終集合というのもアリじゃないかと思えるかもしれないけれど、 それだと、「すべての同一の『始集合に属す元』に対しては、『終集合に属す元』1個ずつ割り当てている」という基準が達成できないので、 ありえない) |
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・右図の対応「f:A→B」が、 「『単射』ではあるが『全射』ではない対応」の実例。 ・右図の対応「f:A→B」は、 f(a1)={b1}、f(a2)={b2} 、f(a3)={b3} f−1(b1) ={a1}≠φ f−1(b2) ={a2}≠φ f−1(b3) ={a3}≠φ f−1(b4) =φ となっていて、 『終集合』に、 どの『始集合に属す元』にも割り当てられない元b4が残っているので、 「全射」を名乗るための基準に反している。 |
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しかし、すべての同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』を1個ずつ割り当てているし、 一回たりとも「同一の『終集合に属す元』を複数の『始集合に属す元』に割り当て」ていないので、 「単射」を名乗るための基準はクリアしている。 ・なお、右図の「『単射』ではあるが『全射』ではない対応」は、「写像」とも「一対一対応」とも「一意対応」とも名乗る資格がある。 なぜなら、 「単射」と名乗るための基準は、 「写像」と名乗るための基準、または、「一対一対応」と名乗るための基準に、追加的な規制をかけたものであり、 「写像」と名乗るための基準、および、「一対一対応」と名乗るための基準は、 「一意対応」と名乗るための基準に、追加的な規制をかけたものであるから、 右図の「『単射』ではあるが『全射』ではない対応」に、「単射」と名乗る資格がある以上、 「写像」「一意対応」を名乗るための基準をすでにパスしてしまっているからである。 |
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[例7]全単射である対応(対応のすべての下位類型の定義を満たす)。・「全単射」と名乗ることを許された対応は、以下4条からなる基準をクリアした対応だった。第1条「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』複数個という割り当て[ケース1-2]をしてはいけない」 第2条「同一の『始集合に属す元』に対して、『終集合に属す元』0個という割り当て[ケース1-1]をしてはいけない」 第3条「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が複数になる割り当て[ケース2-1]をしてはいけない」 第4条「同一の『終集合に属す元』を割り当てられた『始集合に属す元』が0個になる割り当て[ケース2-2]をしてはいけない」 ・この「全単射」と名乗る資格を定めた基準は、要するに、 「どの同一の『始集合に属す元』に対してであれ、『終集合に属す元』1個を割り当てよ!」(上記第1条・第2条) 「どの同一の『終集合に属す元』に対してであれ、『始集合に属す元』1個を割り当てよ!」(上記第3条・第4条) と要求しているわけである。 |
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・右図の対応「f:A→B」は、 「全単射」と名乗るための基準を満たしている。 ・なお、「全単射」と名乗るための基準を満たした対応は、 「単射」とも「全射」とも「写像」とも「一対一対応」とも「一意対応」とも 名乗る資格がある。 なぜなら、 「全単射」と名乗るための基準は、 これらを名乗るための基準に、追加的な規制をかけたものであるから、 「全単射」と名乗る資格がある対応は、 すでに、 「単射」「全射」「写像」「一対一対応」「一意対応」を名乗るための基準を パスしてしまっているからである。 |
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0. ・以上の抽象的な議論では、 対応の定義や、その下位類型である写像等の概念をイメージしづらい。 ・対応とその下位類型について、 感情的なまでに具体的なイメージを湧き上がらせることはできないものだろうか。 ・以下は、《結婚》《婚姻制度》を例にとった*、その試みである... 1. 《結婚》とは、「《女性の集合》から《男性の集合》への対応」である。 ・《結婚》は、 《成人女性へ、その配偶者として成人男性を割り当てること》として、とらえられる。 ![]() ・このように《結婚》をとらえたとき、 「一つの社会全体における《結婚》による割り当て」は、 「その社会の《成人女性の集合》から、その社会の《成人男性の集合》への、対応」 をなす*。 《成人女性の集合》を集合A、《成人男性の集合》を集合Bで表すと、 「一つの社会全体における《結婚》による割り当て」は、 対応「f:A→B」 と表せる。 このとき、 「女性aのfによる像」f(a)とは、女性aの配偶者であり、 「男性bのfによる逆像」f-1(b)とは、男性bの配偶者である。
2. 《婚姻制度》と、その分類の観点 ・《結婚》にはルールがつきものだ。 どの国であれ、どの時代であれ、 社会というものは、 《婚姻制度》を定め、一定のルールの枠内での《結婚》だけを認めたがる。 ・ところが、興味深いことに、 この《婚姻制度》は、決して一様ではない。 《婚姻制度》は、国・時代等によって、多様である。 ・この多様な《婚姻制度》を分類しようとするとき、 われわれは、様々な観点を選ぶことができよう。 たとえば、 結婚が認められる年齢という観点から、多様な《婚姻制度》を分類することもできるし、 インセスト・タブーという観点から、多様な《婚姻制度》を分類することもできるだろう。 (「交叉イトコ婚」「平行イトコ婚」…) |
* 松坂『集合・位相入門』は、《投票》《選挙制度》を例にとっている。 確かに、ある集団における《投票》行動の総体は、《投票者の集合》から《候補者の集合》への対応として、とらえられる。 そして、この線で、話を進めると、うまい具合に、 投票者に複数票と白票を認める《選挙制度》は、対応であり、 投票者に白票は認めるが、複数票は認めない《選挙制度》は、一意対応であり、 投票者に複数票も白票も認めず、必ず強制的に一票を投じさせる《選挙制度》は、写像である、 ということになるだろう。 だが、《選挙制度》の例を通じて、一対一対応や、単射、全射について、われわれがリアリティを獲得することは難しい。 一対一対応と単射の《選挙制度》は、複数の投票者が、同一の候補者に投票することを禁止しなくてはならない。 つまり、この《選挙制度》は、投票者に向かって、互いに別の候補を選べと命ずるのである。 これは、われわれにはピンと来ない。 また、全射の《選挙制度》は、選挙の結果、得票数ゼロとなる候補者が出ることを禁じなくてはならない。 このような《選挙制度》も、われわれの理解を超えているのではなかろうか。 こういう次第で、《投票》《選挙制度》ではなく、《結婚》《婚姻制度》という例を通して、対応の下位分類を考えてみたわけである。 *もちろん、逆に、《結婚》を《成人男性への成人女性の割り当て》としてとらえて、 《一つの社会における結婚の総体》を、 「《成人男性の集合》から《成人女性の集合》への対応」 と見てもよいのだけれども、 これだと、どういうわけか、生々しさが低減するように感じるので、 ここでは採用しない。 また、 最近では、同性間の婚姻も認める国も出てきたが、 ここでは、まず、単純化のために、同姓婚は考えず、男女間の婚姻制度のみを考えることにする。 なお、同性間の結婚、さらには、自分自身との結婚(鏡の中の私に恋してしまったナルシスト婚!)も包含するような、より一般化された婚姻制度は、 始集合を終集合の部分集合という設定にすることで、対応・写像などの概念を用いて、表現可能である。(→包含写像)。 われわれに馴染み深い1変数関数も、始集合と終集合が同じRという集合なのだから、同性間の結合である。 |
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・そんな様々な分類の観点のなかに、《配偶者の人数》がある。 ・1人の人物が結婚する配偶者の人数には、 ・0人=独身でいる ・1人 ・2人以上 など、色々ありえる、論理的には。 ・すると、《婚姻制度》が許可/禁止する配偶者の人数も、 ・0人または1人を許可。2人以上は禁止。 つまり、独身でいるか、ただ1人の配偶者と結婚するか、の二者択一。 ・1人のみ許可。0人や2人以上は禁止。 つまり、「0人と結婚」=「独身でいる」のもダメ、2人以上と結婚するのもダメ。 成人には全員結婚している義務があって、なおかつ配偶者は1人だけ。 ・1人以上を許可。0人は禁止。 つまり、成人が「0人と結婚」=「独身でいる」のはダメ、 成人は結婚しているのが義務。相手の人数は不問。 ・0人、1人は禁止。2人以上のみ許可。 つまり、成人は複数の相手と結婚しているのが義務。 等々、色々ありえる、論理的には。 ・古今東西の《婚姻制度》のあいだで、扱いの差異が大きいのは、 ・「配偶者0人との結婚」=「独身でいること」を許可するか、禁止するか。 ・配偶者2人以上との結婚を許可するか、禁止するか。 の二点ではないだろうか。 ・現在のわれわれの社会では、 「配偶者0人との結婚」=「独身でいること」 が許されているが、 ちょっと昔の日本でも、 「そんな年になって結婚しないのはおかしい」 と言ったり言われたりするのが普通だったくらいだから、 「配偶者0人との結婚」=「独身でいること」 を禁止する社会があっても不思議ではない。 ・また、われわれの社会は 配偶者2人以上との結婚 を禁止しているが、 現在でも世界には、一夫多妻OKの文化圏も実在するわけで、 配偶者2人以上との結婚 を許可している《婚姻制度》というのも現実的である。 ・それならば、 この二点に着目することが、 多様な《婚姻制度》を包括する「《配偶者の人数》という観点からの分類」作成 に当たって、肝要であろう。 ・ただし、上記二点は、男女別々に見ていくのが適切であろう。 「一夫多妻はOKだが、一妻多夫は禁止」といったような、 男女非対称に《結婚を許可する配偶者の人数》を扱う《婚姻制度》も 多く存在しそうだからだ。 ・すると、 1-1:女性に対して、 0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を 許可するか、禁止するか。 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を許可するか、禁止するか。 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を許可するか、禁止するか。 2-2:男性に対して、 0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を 許可するか、禁止するか。 という4点から、 「《配偶者の人数》という観点からの《婚姻制度》の分類」を作成するのが、 よさそうだということになるだろう。 |
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3.《婚姻制度》という例における「対応の6類型」の具現化 ・この、 1-1:女性に対して、0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可するか、禁止するか。 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を許可するか、禁止するか。 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を許可するか、禁止するか。 2-2:男性に対して、0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可するか、禁止するか。 という《婚姻制度》の分類基準こそが、 「《結婚》による割り当て 」 という対応「f:A→B」の一例における 「対応の6類型」の分類基準 1-1「始集合Aに属す元」1個に対して、「終集合Bに属す元」0個という割り当て(f(a)=φ)を排除するか?容認するか? 1-2「始集合Aに属す元」1個に対して、「終集合Bに属す元」複数個という割り当てを排除するか?容認するか? 2-1「始集合Aに属す元」複数個に対して、「終集合に属す元」1個という割り当てを排除するか?容認するか? 2-2「始集合Aに属す元」0個に対して「終集合に属す元」1個という割り当て(f-1(b)=φ)を排除するか?容認するか? の具現化にほかならない。 ・それでは、これらの基準から定義された「対応の6類型」 一意対応,一対一対応,写像,単射,全射,全単射 は、 「《結婚》による割り当て 」という対応「f:A→B」の一例のなかで、 どのように具現化されるのか? この点についてまとめたのが、下表である。
[対応の具現化]まず、対応一般は、これら四点すべて許してしまうのだから、配偶者の数を規制しない《婚姻制度》にあたるといえよう。 |
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[一意対応の具現化]・《成人女性の集合》をA、《成人男性の集合》をB、対応「f:A→B」を「結婚による割り当て」と具体化した場合、 「 対応『f:A→B』が一意対応である」とは、 「《結婚》による割り当て」が、 1-1:女性に対して、0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を禁止 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を許可 2-2:男性に対して、0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可 と規定する《婚姻制度》―男女ともに独身権が認められた一夫多妻制―に従っていることを意味する。 ※この《婚姻制度》=「一意対応」に従う 「《結婚》による割り当て」=「対応『f:A→B』」の例 ・男女ともに独身者がいるハーレム ![]() ・一夫多妻 ![]() ・一夫一婦も、この《婚姻制度》の枠内にある。 ![]() ![]() |
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[一対一対応の具現化]・《成人女性の集合》をA、《成人男性の集合》をB、対応「f:A→B」を「結婚による割り当て」と具体化した場合、 「 対応『f:A→B』が一対一対応である」とは、 「《結婚》による割り当て」が、 1-1:女性に対して、0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を禁止 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を禁止 2-2:男性に対して、0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可 と規定する《婚姻制度》―男女ともに独身権が認められた一夫一婦制―に従っていることを意味する。 このような《婚姻制度》は、日本の現行制度にほかならない。 《婚姻制度》における「一対一対応」とは、現行型の一夫一婦制なのである。 ※この《婚姻制度》=「一対一対応」に従う 「《結婚》による割り当て」=「対応『f:A→B』」の例 ![]() ![]() ![]() ※定値写像の概念は、 この例では、 すべての女性は、独身でいる権利もなしに、成人男性のなかの特定の一人と結婚しなければならない という事態を表すことになる。 すべての女性は、ただ一人の男性の配偶者であるという完全なハーレム。 |
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[写像の具現化]・《成人女性の集合》をA、《成人男性の集合》をB、対応「f:A→B」を「結婚による割り当て」と具体化した場合、 「 対応『f:A→B』が写像である」とは、 「《結婚》による割り当て」が、 1-1:女性に対して、0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を禁止 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を禁止 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を許可 2-2:男性に対して、0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可 と規定する《婚姻制度》に従っていることを意味する。 この《婚姻制度》は、 女性に対して「1人の男性との結婚」を徹底的に押し付け、女性が独身でいることすら許さないが、 男性にたいしては、完全に無規制である。 結果、このような《婚姻制度》は、男性だけに独身権を認めた一夫多妻制となる。 ※この《婚姻制度》=「写像」に従う 「《結婚》による割り当て」=「対応『f:A→B』」の例 一夫多妻と一夫一婦からなる社会 ![]() 一夫多妻からなる社会。女性の独身は制度違反だが、男性の独身は許される。 ![]() 一夫一婦からなる社会も、この制度の枠内にある。女性の独身は制度違反だが、男性の独身は許される。 ![]() |
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[単射の具現化]・《成人女性の集合》をA、《成人男性の集合》をB、対応「f:A→B」を「結婚による割り当て」と具体化した場合、 「 対応『f:A→B』が単射である」とは、 「《結婚》による割り当て」が、 1-1:女性に対して、0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を禁止 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を禁止 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を禁止 2-2:男性に対して、0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を許可 と規定する《婚姻制度》に従っていることを意味する。 この《婚姻制度》は、 結婚する場合は、男女ともに、「1人の配偶者との結婚」を強制されるが、 独身でいる権利については、男性には認めるものの、女性には許さない。 結果、このような《婚姻制度》は、男性だけに独身権を認めた一夫一夫制となる。 ※この《婚姻制度》=「単射」に従う 「《結婚》による割り当て」=「対応『f:A→B』」の例 ・一夫一婦の結婚が社会全体にいきわたっているケース ![]() ・女性の独身は許されないが、男性の独身は容認される。 ![]() |
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[全射の具現化]・《成人女性の集合》をA、《成人男性の集合》をB、対応「f:A→B」を「結婚による割り当て」と具体化した場合、 「 対応『f:A→B』が全射である」とは、 「《結婚》による割り当て」が、 1-1:女性に対して、0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を禁止 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を禁止 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を許可 2-2:男性に対して、0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を禁止 と規定する《婚姻制度》に従っていることを意味する。 この《婚姻制度》は、 男女ともに、独身でいることは許されず、誰かと結婚することを強制されるが、 結婚相手の人数について、男は規制を受けないのに対し、女は必ず1人と定められ、 男女間で非対称的である。 結果、このような《婚姻制度》は、独身権を認めない一夫多妻制となる。 ※この《婚姻制度》=「全射」に従う 「《結婚》による割り当て」=「対応『f:A→B』」の例 一夫一婦と一夫多妻からなる社会 ![]() 一夫一婦のみからなる社会も、この《婚姻制度》の枠内にある。 ![]() |
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[全単射の具現化]・《成人女性の集合》をA、《成人男性の集合》をB、対応「f:A→B」を「結婚による割り当て」と具体化した場合、 「 対応『f:A→B』が全単射である」とは、 「《結婚》による割り当て」が、 1-1:女性に対して、0人の男性との結婚―すなわち独身を通すこと―を禁止 1-2:女性に対して、複数の男性との重婚を禁止 2-1:男性に対して、複数の女性との重婚を禁止 2-2:男性に対して、0人の女性との結婚―すなわち独身を通すこと―を禁止 と規定する《婚姻制度》に従っていることを意味する。 この《婚姻制度》は、一夫一婦義務制とでもいえるもので、 ここでは、 男女問わず、独身でいることは許されず、誰もが必ず1人の異性と結ばれなければならない。 あらゆる不純を除去した社会というのも、なんだか窮屈…。 ※この《婚姻制度》=「全単射」に従う 「《結婚》による割り当て」=「対応『f:A→B』」の例 ![]() |
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