若い頃はほとんど映画を観なかったのですが、30歳を超えてしばらく経った2004年頃、「これじゃいか〜ん」と思い立ち、以後は積極的に観るようにしています。現在は、テレビ鑑賞中心ですが、年間150本程度を観ています。

タイトルをクリックすると、評価コメントが表示されます。なお、評価および点数についてはあくまでも個人の主観によるものですので、参考程度に留めておいて下さい。
◆評価基準
  … 観る価値ゼロ
  … 観るに耐えない内容が多くある
  … 観られるが、いくつか難点がある
  … 可もなく不可もなし
  … 少なくとも何らかの得るものがあった
  … なかなか面白い。映画の楽しみがある
  … かなり面白い。これだから映画はやめられない
  … 素晴らしい一作。感動した!
  … 完璧! 出会えたことが奇跡の作品
  
2024年 4月 「高校大パニック」
反逆のメロディー』がかなり良かったので、同じく澤田幸弘監督作をと思い、見てみたらこれがまた大傑作! クソ高校教師による管理教育に反発した生徒が暴力を繰り広げる、という使い古されたプロットを、最後までだれることなく見せる脚本に感心。詩情さえ感じられるアート性も備え、なおかつバイオレンスとエロスも惜しみなく投入された力作。浅野温子がとてつもなくきれいにエロティックに撮られている。
 1978年の作品だが、この時代には未見の傑作がまだまだありそうで、わくわくしている。ちなみに無名時代の石井聰亙も共同監督として名を連ねている。
2024年 4月 「デモンズ」
1986年公開で、確か当時、劇場で観たかレンタルビデオで観た。映画館に集められた観客が謎の菌に冒され、ゾンビ風の化け物になっていくパニックホラー。音楽が鳴りっぱなしのグルーブ感を恐怖に絡めている点で、ゴシックホラーとは一線を画している。嫌いではないが、ホラーとしてはまあ普通の出来。ロケはドイツで行われており、序盤のシーンで自分の行ったことのある駅が出てきて、驚いた。
2024年 4月 「暗黒街の顔役」
岡本喜八監督の映画はぜんぶ見ようと思っている。ヤクザ映画ではあるが、東映ではなく東宝で岡本喜八が撮ると、ヌーベルバーグの香りが漂う。素っ頓狂な音楽の使い方が効果的だ。アクションシーンはアメリカ映画を意識して作っているような気もする。
 鶴田浩二、宝田明、平田昭彦、白川由美、草笛光子などオールスター共演も楽しいが、三船敏郎の役が珍しく今一つなのが寂しい。いっぽう、佐藤允はいい役をもらって光っている。
  
2024年 3月 「小早川家の秋」
小津安二郎が亡くなる二年前に撮った、最後から2作目の作品。オールスター共演で、物語の筋というより各キャラクターの演技合戦を楽しむ様子が強い。中村鴈治郎演じる小早川家の当主は、口が悪い割に気弱で人情にもろい、『浮草』とほぼ同じキャラクターだが、やはり映画を背負って全部を持っていく勢いがある。原節子もまた、夫と死に別れて独り身ながら周囲から結婚を勧められまくるいつものキャラを、安定感たっぷりで演じる。気の強い長女を演じて凛々しい新珠三千代、おとぼけ店員を軽やかに演じた藤木悠、「違う違う」を連発して愉快な山茶花究など、初めて小津作品に出演した役者陣も奮闘しているから、見ていて楽しい。
2024年 3月 「墓地裏の家」
ルチオ・フルチ作品の中でも、割と筋立てがしっかりしているのに驚いた。お得意のスプラッターはやや控えめで、ゴシックホラーに近い風味を味わわせてくれる一作。古き良きホラーを楽しみたいなら見て損はない。
2024年 3月 「ヘッドハンター」
映画評論家の町山智浩さんが10年前くらいにラジオで紹介されていた作品。企業のヘッドハントを請け負う主人公が実は裏で絵画を盗んで売りさばく闇稼業をおこなっていた、という物語。意外な展開、意外な犯人、その陰に意外な主人公の思いがあった、と意外尽くしの作品だが、その「ザ・意外」を作り出すためにお話が作られており、かなり強引に思える。まずまず面白くは見られるけれど。
2024年 3月 「007/カジノ・ロワイヤル」
今さらながらダニエル・クレイグ版ボンドの第一作を鑑賞し、出来の良さに驚く。映画としての旨味・面白みが次々と繰り出されるてんこ盛りの内容にお腹いっぱいになった。南米からヨーロッパまで舞台を持っていく強引さは否めないが、そこは007ものの常として気にならない。観光映画という側面もあるから、これは大画面で見るべき作品なのだと思う。これから見る人は、「テキサスホールデム」という独特のポーカーのルールを知っておいたほうがより楽しめるだろう。
2024年 3月 「日本の首領<ドン> 野望篇」
やくざ戦争 日本の首領<ドン>』に続く第2作。佐分利信演じる中島組組長・佐倉が全国制覇を目指す構成は一作目と変わらないが、一作目で死んだ若頭・辰巳(鶴田浩二)に変わり、今回の主役は佐倉の右腕となった松枝(松方弘樹)だ。
 松枝が組のために体を張って奮闘するも、形勢はどんどん悪い方向へ傾いていく。僕の大好きな成田三樹夫がケチな幹部に成り下がってしまうのが不満だけれど、これは配役上しかたがない。ただ、この頃の東映作品でよくあることだが、一人の俳優が同シリーズの映画で別の役を演じることには、どうしても違和感を覚えてしまう。とくに菅原文太のような大物だと、ひときわそう思える。菅原文太はまた本作で演じるのがあまりいい役どころではないのもいただけない。
2024年 3月 「エム・バタフライ」
クローネンバーグ監督作は、昔は好きでよく見ていた。ホラーをあまり撮らなくなってから離れてしまったが、本作は1993年に撮られた、そうした非ホラー系の初期作。
 フランス大使館員と京劇俳優が恋におちるという実際のできごとを基に作られている。歌舞伎と違い、京劇は女性が演じることがなくもないようで、本作も、ジョン・ローンに似た女優さんが演じているものとばかり思って見ていた。“彼女”の美しさがまずは大きな軸となり、翻弄される外交官がやや情けない感じで演出される。中盤はすこしだれるが、ラストはクローネンバーグらしさ満開で派手に見せてくれる。
2024年 3月 「007/慰めの報酬」
前作『カジノ・ロワイヤル』のラストシーンからつながる形で始まる。ボンドが世界各地を飛び回る姿がそのまま観光映画にもなっているのは相変わらずだが、利かん坊のようなボンドの性質を強調するあまり、ストーリーが必要以上に大仰に思えてしまうところは、前作よりも気になった。また、今回のボンドガールのカミーユ(演:オルガ・キュリレンコ)の真意が最後まで見ても、あとからあらすじを読んでも、今一つぴんと来なかった。
2024年 3月 「ブーメラン・ファミリー」
これまた映画評論家の町山智浩さんが10年前くらいにラジオで紹介されていた作品で、当時は『高齢化家族』というタイトルだった。前科持ちでぷらぷらしてばかりの長男、売れない映画監督の次男、バツ2で子連れで出戻りの長女が、母親との暮らし中で繰り広げるドタバタコメディ。反目しあってばかりの彼らが大事なところでは団結する姿を見せたり、韓国映画らしくバイオレンス描写はどぎつかったりと、いろんな要素のギャップが面白い。ただ、笑いあり涙ありという要素が表に出過ぎているのがやや暑苦しい気がした。
2024年 3月 「恋のロンドン狂騒曲」
ウディ・アレンの近作の中では、大ヒットした『ミッドナイト・イン・パリ』の陰に隠れてしまうのか、評価が不当に低い作品。僕は、ウディ・アレンらしさがしっかり出ていて、見ごたえのあるシーンがテンポよく続く良品だと思っている。今回、妻と再見したが、妻も気に入ってくれた。ウディ・アレンらしい意地悪さ爆発だが、ぎりぎり嫌みにならず、ちゃんと笑いに落とし込まれているバランスもよい。
2024年 3月 「パラダイスの夕暮れ」
アキ・カウリスマキが1986年に撮った初期の作品。主演はマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンという、カウリスマキ映画の常連俳優だ。内容も、生きるのが下手な人々が繰り広げる不器用な恋愛、不運が重なりどんどん追い詰められていく姿など、カウリスマキ映画の王道が既にこの時期に完成している。そのぶん、他の作品を見てから本作にたどり着くと、逆に二番煎じにも感じるほど。
  
2024年 2月 「やくざ戦争 日本の首領<ドン>」
山口組に関する実話をベースに、日本版『ゴッドファーザー』を狙った脚本で作られたオールスター共演の大作。これが大ヒットして、続編2本が作られた。親分役の佐分利信が実にはまり役で、たしかに『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドを彷彿とさせる。ラストの展開も実に『ゴッドファーザー』っぽい。仁侠映画らしく数多くのドタバタ展開はあるが、しっかり芯の通った作品に仕上がり、さすがに堂々たる大作といえるだろう。
2024年 2月 「吸血鬼ゴケミドロ」
子供の頃にテレビで見て、ストーリーは完全に忘れていたのだが、その強烈なビジュアルだけ鮮明に覚えていた。高英男という役者の額の割れた姿は、今でも脳裏にこびりついている。今回ほぼ半世紀ぶりくらいに見直してみて、意外にしっかりした侵略ものSFだと気づかされた。密室状況でパニックが起こった際の人間ドラマもよく描けていて、見ごたえがある。
2024年 2月 「ガバリン」
U-NEXTで、昔から気になっていて未見だった作品を選んで見ているが、そのうちの一作。大学時代、ホラー映画が大好きで、愛読していた「V-ZONE」というホラー映画専門雑誌(あったんです、そんな雑誌が!)で紹介されていた。画像や説明での印象から、ホラーコメディという要素が見る前から伝わり、実際に見た後の感想もその通りだった。いかにもやり過ぎなクリーチャーの作りは、ばかばかしさの中に愛らしさ、かわいさも秘めていて絶妙なところだ。ストーリーはまあ、あってないようなもの。
  
2024年 1月 「テロ,ライブ」
新年早々、こんな快作を見られて嬉しい。内容もさることながら、まさに、“ここまでやるか”という怒涛の展開に感動を覚えた。エンタメとして飽くなき追及心を持って作られていることが伝わってくるのだ。それはCGの使い方の上手さにも言える。緻密でリアルなCGということではなく、テレビ画面越しに現場の映像を見せるなど、多少粗くてもリアルさが損なわれないやり方を徹底しているから、見ていてしらけることがない。自国の官僚をコケにするのもいとわず、安っぽいヒューマニティに堕することなく、どこまでも熱く質の高いものを作ろうとする心意気に拍手!
2024年 1月 「その夜の侍」
葛城事件』で感銘を受けた赤堀雅秋監督の、映画デビュー作。そして2024年1月現在、この2作しか同監督の映画作品は存在しない。やはり基本は演劇の人なんだろう。2作を観て思うのは、役者の演技を尊重しようとする強い姿勢だ。だから、演技の出来次第で作品全体の出来も左右される。『葛城事件』の場合はそれが非常に上手くいった。本作では、堺雅人、山田孝之の演技がややオーバーアクト気味で空回りしている気がする。僕の大好きな新井浩文は逆に影が薄い。
2024年 1月 「プラド美術館 驚異のコレクション」
膨大なコレクションを誇るプラド美術館の作品群について、様々な人物が語る。僕としては、ただ淡々とたくさんの絵画を紹介してほしいのだが、それは好みの問題なのだろう。
2024年 1月 「ミッション:8ミニッツ」
これも新年早々、忙しい時期にとにかく面白い一作を再見しようと選んだ。時間逆行ものや時間ループものの作品は昨今小説でも映画でも散見されるが、そのうちでも本作は秀逸だ。謎が解ける快感の中に、人間の優しさが感じられて胸を打たれる。何度見ても面白い一本。
2024年 1月 「ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖」
ジョージ・A・ロメロ監督の隠れた傑作として数十年前から存在を知っていたが、このたびようやくU-NEXTで見ることができた。サブタイトルのとおり、細菌兵器によって人々が発狂し、パニックに陥る姿が描かれる。ロメロ監督はいつもそうだが、単純な恐怖を描くだけでなく、そこに必ず人間ドラマをからめてくるので、見ごたえがある。本作を観ても、ああロメロ監督だなあと思わせてくれ、楽しませてくれる。
2024年 1月 「レイダース 失われたアーク」
インディージョーンズシリーズ中、いちばん面白かったという記憶のもと、初見の妻と一緒に見た。結果、まあつまらなくはないけど、感動するくらい面白い、というほどでもなかったというところ。なにせ古い映画ではあるし、岩が転がって来るシーンなどはパロディ化され尽くしていたりするせいもあって、エンタメ作品で重要な真新しさを感じられなかったのかもしれない。クライマックスシーンも記憶の中ではもっと迫力があった。
2024年 1月 「悪い男」
キム・ギドク作品はいくつか見ているが、どぎつい映像や奇抜な設定の割に、作品としての衝撃度はさほどでもないという印象がある。それでも本作は、主人公の“悪い男”が理不尽なまでに突っ切った行動をとり、なかなかの見ごたえを感じさせてくれる。荒々しい作風はときに稚拙さにもつながるが、本作はいい方向に転じている。同監督の過去作の中ではダントツの人気を誇るが、確かにこれは見てよかったと思えた。
2024年 1月 「浮き雲」
職を失った夫婦がふとしたきっかけでレストランを経営することになる話。ずっと昔に妻と一緒に見た本作をふたたび二人で再見しようと思ったのは、昨年の12月に僕ら自身がカフェをオープンしたからだ。カウリスマキの映画に出てくる人々はみな生きるのが下手で情けない姿をさらしているが、どうしても応援したくなるキュートさも備えている。とりあえず開店してはみたものの、客の入りで一喜一憂する姿、これからどうなっていくのかはわからないけれど、わずかな希望を持ってやっていくしかないというところは、本当に身につまされる。安易な展開に走らず、それでも希望を感じさせるラストがいい。
2024年 1月 「反逆のメロディー」
澤田幸弘監督作を初めて見た。日活ニュー・アクションの旗手とされながら、その後の日活の路線転向にともなってポルノ映画を撮り、その後はテレビドラマ『太陽にほえろ』『大都会』『探偵物語』『西部警察』などの監督を務めたらしい。本作はデビュー直後の原田芳雄が主演で、映画としては70年代邦画の無軌道、ヤクザ、青春のすべてが詰め込まれており、映画の出来は最高ではないかもしれないが、僕はそのパワーに惹かれ、見入ってしまった。藤竜也、地井武男、佐藤蛾次郎、梶芽衣子などの俳優陣も豪華で見ごたえがある。すっとぼけた音楽の使い方も面白い。この時代の映画をもっと見たくなる。
2024年 1月 「潜水服は蝶の夢を見る」
これも過去に一人で見たものを妻と再見。入院患者の偽らざる本音が多分に出ており、ときおり笑わせられもしながら、見たあとは真摯な気持ちになる。これが事実に基づいていると思うと、人の持つ力の計り知れなさを感じる。かつて看護師の経験のある妻も、いたく気に入ってくれた。