スーパーでの出来事

浅賀 品子

12月のある日曜日の夕方、夫と近くのスーパーへ買い物に行った時の事です。
買い物を終えてレジに並んだ時に味噌を買い忘れたことに気がつきました。いつもなら夫に頼むのにその日は私が財布だけを持って急いで買いに行ったのです。
味噌だけでやめておけば良かったのに、つい好きな チョコレートも……。そして、レジに向かって歩き出した時、70歳前後の女の人とすれ違ったんです。
「ちょっと!あんたが触ったからこれが落ちたよ。」と、少々強い口調で呼び止められました。

その人が指を指した床を見ると、お買い得品の定価の札が落ちていたのです。

私は「ごめんなさい」と、急いでかがみ 持っていた物を膝の上に乗せて拾いました。

「あんたカゴは?」「買うのはこれだけですから持って来なかったんです。」

するとダンボール箱を指差して「ここに付ければいいわ。」
私は「エッ!こんな所に…。」と、思いましたが付けようとしました。すると背後から札を取り「こんなのいい加減に付けてあるからすぐに取れるんだわ。」と、やはり70歳前後の女の人が札が刺してあった基の金具へ…。
きっとその人は少し前から2人の様子を見ていたのだと思いました。ところが、今度は立ち上がろうとすると財布の口が少し空いて床の上に小銭が2・3個パラパラ。

「お金 お金!!」と、呼び止めた女の人。その声を聞くと、私の心の中は穏やかではなくなりかけました。

すると札をつけてくれた人と近くにいた若い女の人が黙って拾って手のひらに乗せてくれました。

なんだかホッとした気持になり「皆さんに助けていただいて…。」と、頭を下げました。

レジを終えて待っていた夫に「又 失敗しちゃった。ハッ ハッ ハッ」「何がおかしいんだ?」「笑って恥ずかしさを誤魔化してるの。」

車の中でふと気がついたんです。最初に呼び止めた人は、最後まで立ったままで口で指図していただけだった事に…。
そこで、私はこんな時いつも歌う歌を口ずさみ始めました。

「人生いろいろ 男もいろいろ 女だっていろいろ咲き乱れるの」と…。