チヂミザサ

散歩道の途中に観音山と呼ばれる古墳程度の丘がある。 標高97.5m、周囲1キロメートル足らずで、周囲の土地より僅か40m程度高いに過ぎないが、関東平野の真っ只中にある熊谷市の最高峰である。
この観音山は麓の竜泉寺の寺社林になっている為、開発や乱獲を免れ、昔の里山の状況がそのまま保存され、カタクリ、イカリソウ、低地ニッコウキスゲ、チゴユリ、オカトラノオ、コバノギボウシ、ハグマ等、四季折々の貴重な花が咲き、有志の方々が保護に努めている。( 「カタクリと観音山」 、 「イカリソウと強壮剤」 、 「低地ニッコウキスゲの謎」 、 「チゴユリとその仲間」 、 「トラノオいろいろ」 、 「ギボウシは山菜の逸品」 、 「ハグマいろいろ」 の項参照)
里山の花の保護の観点からはこのチヂミザサはいささか厄介な植物である。
秋には小さいながらも可愛い花を付けるが、多少日照条件が悪い所でも繁殖出来る事から、観音山の林内の下草として群生し、キスゲ等の生育地にもかなり入り込んできて、その為、間伐や下草刈りが検討されている。
チヂミザサは竹や熊笹(クマザサ)等と同じイネ科の植物であるが、属が違ってチヂミザサ属の一家を成しており、葉がササに似て、縁が皺状に縮れているのでチヂミザサ(縮み笹)の名がある。

チヂミザサの葉と全体像

チジミザサの花と種子

花は小さいがよく見ると可愛く、花の先に長い芒(のぎ)があり、実が熟すと粘液を出して動物等に付着して遠くに運ばれる。
ヌスビトハギ、イノコヅチ、コセンダングサ、オナモミ等、人や動物にくっついて運ばれる種子は 「ヒッツキ虫」 と呼ばれ、ズボン等に付くと、はずすのに苦労するが、大半は棘(とげ)で引っ付き、チヂミザサやメナモミのように粘液を出して引っ付くのは少数派である。( 「引っ付き虫いろいろ」 の項参照)

沖縄を除く日本全土に分布するイネ科の植物であり、里山に四季折々の綺麗な花を咲かせようとすると、いささか厄介な植物である。

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