ギボウシ

コバギボウシ

散歩道の途中の観音山は標高97.5m、周囲1kmにも満たない古墳程度の山で、周囲の土地より僅かに30mばかり高いに過ぎないが、熊谷市の最高峰であり、又、麓の竜泉寺の寺社林になっている為、開発や乱獲を免れ、里山の自然がそのまま残って、四季折々の貴重な花の群生が見られる。
3月はカタクリ、4月はチゴユリ、5月−6月は低地ニッコウキスゲ、コアジサイ、7月はヤマユリやノカンゾウが群生するが、8月はなんと言ってもコバギボウシである。( 「カタクリと観音山」 、 「チゴユリとその仲間」 、 「低地ニッコウキスゲの謎」 、「コアジサイとアジサイ」 、 「ノカンゾウは忘れ草」 の項参照)

ギボウシは擬宝珠と書き、蕾(つぼみ)の形が橋の欄干等に飾られる宝珠形をした飾り(擬宝珠)に似ている事からギボウシの名があり、日本を中心とした東アジアに30種類程度が自生する。
オオバギボウシ(大葉ギボウシ)、コバギボウシ(小葉ギボウシ)等が日本の山野に普通に自生しているが、散歩道の途中の観音山では特にコバギボウシの群生が圧巻である。

観音山と竜泉寺

オオバギボウシ

コバギボウシ

平安時代末期には既に書物にこの花の記述があり、室町時代には活け花としても用いられたようであるが、昔から 「うるい」 と呼ばれる山菜として有名で、茎はアクが無く、独特のぬめりのある食感とまろやかさが珍重され、山菜の中でも逸品とされ、若い葉もお浸し、天ぷら等で食用にされてきた。 クマも新芽を好んで食べるそうである。
ヤマカンピョウとも呼ばれ、乾燥して保存食ともされてきたが、現代ではハウス栽培もされ、若芽は 「うるい」 の名でスーパーでも売られ、地方によってはギボウシより、ウルイの方が通りが良い。
一方、ギボウシは強い日光と高温に弱く、冷涼な気候のヨーロッパや北アメリカで園芸用に珍重され、品種改良が進み、斑入り(ふいり)の葉を持つギボウシ等、種々の観葉植物としてのホスタ(欧米での呼び名)が創られ、今では逆輸入されている植物でもある。 シーボルトがヨーロッパに持ち帰ったのが最初とされている。
ユリ科の花で、朝開いて夜に凋む一日花であるが、順次開いていくので、しばらく楽しめる。 ただ、 「花よりだんご」 ならぬ 「花よりギボウシ」 で、山野のギボウシは花より山菜としての価値が高い。

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