るーとらの秘密基地
松吉
■詩集『サマータイム』
  ●花
●走る野鹿
●あれは幻
●雪がつもる
●道尽きて
●夜明けの寒さに
●summertime
●ひと夏の経験
●笛
●青空
●夜の蝉
●老子
●砂漠の駱駝
●恋する惑星
●光る乗客
●空の深さ
●猿が哭く
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夜明けの寒さに

夜明の寒さに目覚めれば
炊飯器の飯の炊ける音がし
鈴虫 こおろぎの虫すだく
乾いた壷のひびのように
人の世が遠くある

庭にひまわりは首を垂れ
花は散って地ににじみ      
種子が静かに時を集めている
しだいに宇宙は空に還り
人々は今日も手足を動かすのだ

夜明の寒さに目覚めれば
風はまた家々を渡り
森や鉄塔を渡り
河や海を渡り
そうして何処かへ消えてゆくのだ

夢の水際を乾かして
わたしはもう起きようか
溶けたわたしの赤子の朝を
母のように起こそうか
未知のもの世にまだ満ちると