るーとらの秘密基地
blog「日のすきま」
松吉
■詩集『ひまわり』

●草花はひかりに濡れ
●七月
●あんなにお茶を飲んだのに
●海の色に染まる
●真昼のシネマ
●教えてくれないか
●ここにいるよ
●日曜日
●五月連抄(一九八三年)
●だれもいない美術館
●言葉
●桜の森をてくてくゆくよ
●不眠の夜
●この水はきれいです
●雨の日には
●ひかりよりも先に
●スケッチ
●水切り
●白いクジラは病気です
●空がいいんだ
●二十世紀の終りの四月
●危ない魚
●空に言った
●ひまわり
●ねむれぬ夜は
●朝を上手に
●電話をください
●いい声きかせてね
●さくら
●なく狼
●いますぐどこかへつれてって
●抱いてあげましょうか

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二十世紀の終わりの四月

二十世紀の終りの四月
ぼくはふるさとのプールで泳ぐ
午後には書店で地図帳を買い
世界中の天気を考える
晴れたなら
カタールでビールを飲み
広尾から地下鉄に乗って
プーナで降りよう
それから海ばかりのページをめくり
クアラルンプールのすず鉱の上で
冷たい水平線を楽しむんだ

二十世紀の終りの四月
ぼくは上手にスパゲッテイをつくる
最初の相手はイタリア娘
グッチという名のストリッパー
それからドーバーを泳いで渡り
スコットランドでゆで卵を食べ
きつね狩りに出かけよう

四月は水圧もみだれる
二十世紀は終わりそう
けれど深く海溝をゆき
時折クジラと潮を吹き
空のまぶたを濡らしてあげよう
きみもピンクの頬をして
はじめてみたいに声をあげるさ

二十世紀の終りの四月
ぼくはたくさんのきみにさわる
不思議な胸のひらきかたで
ひかりを泳ぐ
もうすぐ
ぼくでもきみでもなくなるから
きっと誰かの夢になるから
色を集め
絵筆を揃えて
毎日見知らぬ空を描こう