るーとらの秘密基地
blog「日のすきま」
松吉
■詩集『ひまわり』

●草花はひかりに濡れ
●七月
●あんなにお茶を飲んだのに
●海の色に染まる
●真昼のシネマ
●教えてくれないか
●ここにいるよ
●日曜日
●五月連抄(一九八三年)
●だれもいない美術館
●言葉
●桜の森をてくてくゆくよ
●不眠の夜
●この水はきれいです
●雨の日には
●ひかりよりも先に
●スケッチ
●水切り
●白いクジラは病気です
●空がいいんだ
●二十世紀の終りの四月
●危ない魚
●空に言った
●ひまわり
●ねむれぬ夜は
●朝を上手に
●電話をください
●いい声きかせてね
●さくら
●なく狼
●いますぐどこかへつれてって
●抱いてあげましょうか

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だれもいない美術館

美術館はからっぽ
だれもいない冬の日
仕事休んであたたかい
美術館へ

ゆうべはよく眠れなかった
今朝は川に濡れ
桜は枯れ
胃腸は使いものにならない

もう肩の力を抜いて
楽に暮らせればそれでいいんだ
あたたかい窓があればじゅうぶんなんだ

少女の裸像の横
見知らぬ絵の下
影のように ひかりのようにまどろんだ

いつのころからか
ある状態になると
ぼくはぼくでなくなった
あたらしい二月
あたらしいひかりが空から剥がれ
ぼくの耳 ぼくのまぶた ぼくの膝にふれてゆく

とおくへいってもいい このまま
父も母も消えるむこうの方へ

市内を見下ろす高台には
美術館
だれもいない冬の日 眠る