だれもいない美術館
美術館はからっぽ
だれもいない冬の日
仕事休んであたたかい
美術館へ
ゆうべはよく眠れなかった
今朝は川に濡れ
桜は枯れ
胃腸は使いものにならない
もう肩の力を抜いて
楽に暮らせればそれでいいんだ
あたたかい窓があればじゅうぶんなんだ
少女の裸像の横
見知らぬ絵の下
影のように ひかりのようにまどろんだ
いつのころからか
ある状態になると
ぼくはぼくでなくなった
あたらしい二月
あたらしいひかりが空から剥がれ
ぼくの耳 ぼくのまぶた ぼくの膝にふれてゆく
とおくへいってもいい このまま
父も母も消えるむこうの方へ
市内を見下ろす高台には
美術館
だれもいない冬の日 眠る
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