五月連抄(一九八三年)
日に日に若葉がふえる
ひかりに空がひろがる
路地路地をゆきながら
萌える緑のひかりに
不幸なこころの核を照らしだされた
すべて薄い膜のなかから
ぼくの鏡がみえる
鏡はさみしいかい
今年の蛙がまっすぐ半眼の眼で
現在をみすえている
その前を今年も
ゆくのはさみしい
*
ひかりあふれる五月
胸が痛かった
ここがどこか解らない
ぼくは素裸で
空や丘やビルの反射に
目を細め
あるいていった
いつかもこうして
ひかりのなかを あるいていった
水に
入った
花が咲いていた
*
夜になっても 五月のひかりが
まだどこかに残っている
草花がぼくを消して
ひかっていた
ひかっていた
ぼくはどこをあるいていたのだろう
空が 斜面が 大地が
ひかっていた
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