あとがき
およそ20数年前,鳥見を始めたときはフイルムカメラで写真を撮っていました.2005年からディジタルカメラで撮るようになりました.
医療の分野でのX線を使ったレントゲン写真と,MRIを使った画像くらいの違いがあります.X線では尿路結石は見えませんが,MRIでは数ミリメートルの石が明確に確認できます.
フイルムカメラでは気が付かなくてディジタルカメラでわかったことの一つが初列風切の形態です.タカ科Accipitridaeに属する野鳥の
初列風切10枚のうち指先状の形を持った羽の枚数は属によって違います.例えばタカ属Accipiterは6枚,チュウヒ属Circusは5枚です.
さらに指先状の指は飛翔時P10が一番上になりP9,8・・・と小さい数が下になります.基部は他の野鳥とおなじでP10が一番下になります.この形質はタカ科
の野鳥は皆同じのようです.
タカ属のツミgularisとハイタカnisus,オオタカfujiyamaeの識別ポイントに5本,6本と日本のガイドブックに書かれていますが,
実際はツミも指6本持っています.飛翔時下から見るとP10がP9の上に隠れていて5本に見えます.
チュウヒ属の野鳥は草原,芦原などの低空を飛びながら餌を探します.従って旋回,停空飛行,急降下など色々な飛翔形態を示します(p.8 写真8-12では4本,5本,2本です).
従ってチュウヒ属の野鳥識別に指の本数は使えません.
今回,2005年から記録した画像2.5TB(テラバイト,画像一枚15MBで計算すると約17万枚)を見直してチュウヒ属の野鳥上下面の模様がわかるおよそ3千枚を選択し識別
ポイントを調べました.
野鳥を見始めたころから野鳥に関する文献を収集してます.2020年に南極を除く世界のガイドブックが揃いましたのでこれらの文献を使って識別しました.
読んでくださった多くの方々が「間違っている.日本のガイドブックと違う」と思われたでしょう.私も識別ポイントを整理した後,所有している日本語のガイドブックと図書館から借用した
日本語のガイドブック,図鑑に目を通して違いを認識しています.
例えば所有している図鑑ではマダラチュウヒmelanoleucos♀成鳥がチュウヒspilonotus♂成鳥となっています.同じ本でウスハイイロチュウヒmacrourus♀若鳥がハイイロチュウヒcyaneus第2回冬羽となっています.
図書館から借りてきた書籍のチュウヒを解説しているページの冒頭の写真はコクナイガタチュウヒ♂成鳥となっていますが,私の調べた識別方法ではチュウヒ♀成鳥です.また,求愛ディスプレイの♂は3cy♂,♀は2cy♀です
ご存知の方が多いと思いますが,私は鳥見を始めるまで知らなかったのですけれど,動物の名前は「国際動物命名規約」に基づいて付ける国際間の約束事があります.
名前はラテン語で付けることになっていて種の場合は属名と種小名の二つの単語,名付けた人の名前,
名付けた時の西暦の年号,亜種は種の下の階層なので種名の後ろに亜種名を書くことになっています.学名をつける人は標本を用意してそれがどの種,亜種とも違うことを証明した文書を作成し
公表し,それが公に認められて初めて名前が付きます.
動物の種,亜種の名前はラテン語で書かれた学名が正式名称です.しかし,ラテン語は一般的でないのでこの学名に対し,各国の言葉で便宜的に名前を付けて各々の国の言葉で使っています.
例えば学名"Circus spilonotus spilonotus Kaup 1847" は和名「チュウヒ」,英名「Eastern Marsh Harrier」,中国語名「東方澤鷲」となります.和名「コクナイガタチュウヒ」は
亜種名ですから「世界の野鳥のチェックリスト」に記載されているはずです.現在世界でよく知られたチェックリストは私が知る限り4つです.このうち3つを調べましたが
コクナイガタチュウヒに該当する学名は記載されていません.種,亜種の違いはありますがどれも17種/亜種です.和名「コクナイガタチュウヒ」をつけた人が
学名Circus spilonotus japonicus XXXX YYYYを「国際動物命名規約」に基づいた手続きをしないと今は学名がない架空の亜種の和名です.
ウスハイイロチュウヒ,ヒメハイイロチュウヒ,マダラチュウヒの♂は見たことがなく,写真がありませんので割愛しました.参考に文献10(ウスハイイロチュウヒ,ヒメハイイロチュウヒ,ハイイロチュウヒ,マダラチュウヒ,
ヨーロッパチュウヒ,チュウヒ),文献14(アメリカチュウヒ)の解説図を紹介します.
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2021年12月17日
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各部の名称
参考文献
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