■□■ 英国の交差点には信号機が無い!? ■□■
日本では街中でも郊外でも大抵の交差点には信号機がありますが、英国には郊外に出ると信号機の無い交差点が結構多いのです。信号機が無くても出会い頭の衝突事故はほとんどありません。信号機は電気を使いますから、信号機が無いということは環境にも優しいということです。それを可能にしているのがROUND-A-BOUT
(ラウンド・ア・バウト)という仕組みです。これはそのお話です。
       
英国ランダバウト (本エッセーは2003年2月時事通信テムズコープに掲載されたものを著者の了解をいただいてビップルがお届けするものです)

英国は左側通行なので、日本からの旅行者や駐在員も違和感無く運転出来るが、厄介なのはROUNDABOUTだ。ラウンド・ア・バウトと発音し、通常は縮めてランダバウトと言う(私たち日本人にはランナバウトと聞こえる)。これは大変便利な交通システムだが、慣れないと難しい。ランダバウトが恐ろしくて英国での運転を躊躇している日本人女性もたまにいらっしゃる。一度入ると出られなくなって、ぐるぐる回り続け、「私バターになっちゃう!」と泣きべそをかいた奥様もいたそうだ。虎がバターになった「ちび○Xサンボ」の絵本を思い出したのだ。

余談になるが、ちび○Xサンボの話はエジンバラ生まれの英国人作家ヘレン・バナーマンが1898年に書いたものだ。日本でも子供達の大好きな絵本の一つだったが、ワシントン・ポスト紙の記事が発端となり1988年絶版になった。絵本の題名は現在も出版禁止用語だ。これを機にタカラのダッコちゃんが発売禁止になったし、カルピスのロゴも変更された。(内緒ですが「ちびくろサンボ」が原題で、英国では今でも問題なく売られている)

(※ビップル注:なんと端雲舎から最近復刊版が出ました!!)

さて、ランダバウトは大変優れたアイデアだ。交差点に信号機を置くこともなく、複差路でも交通の流れを自動制御してしまう。今回は英国名物ランダバウトの話にうんちくを傾けたい。
   

◇近代ランダバウトは20世紀に登場

ランダバウトは、もともと交差点の交通制御を目的に発明された訳ではない。19世紀初期、ひと目を引く建造物に様々な方向からアクセス出来るように、放射状に道路を敷いたのが始まりだ。1836年に完成したパリの凱旋門を取り巻くランダバウトが有名だ。

英国に交通目的のランダバウトが登場したのは1910年のこと。ロンドン北西部に英国初のランダバウトが作られ、全国に普及していった。当時は現在とは逆に、これから進入する車両に優先権があった。進入路で減速せずに、そのままランダバウトに突入して行ったのだ。この方式は朝夕のラッシュアワー時にパニック渋滞を発生させた。車の量が増えるとランダバウト内は車両で一杯になり、進入車両も前がつかえて入れず、やがてニッチもサッチも行かなくなってしまったのだ。1966年、DFT(英国交通局)は傘下にあったTRL(交通調査研究所)に改善検討を指示した。理論的にはランダバウトの直径を大きくすれば問題は解決する。アメリカはそのように対応したが、英国は交差点のスペースに限界があるし、ラッシュアワー以外には交通量もさほど多くはない。

TRLの出した結論は、「既にランダバウト内にある車両を優先」するというものだった。逆に言うと、ランダバウトに入る車両数を調整する方法を採用したのだ。この方法だとランダバウトのサイズを大きくする必要はないが、進入する手前で如何に減速させるかという課題が生じた。日本だと、「この先一時停止」の標識を設置するのだろうが、英国人の発想は違っている。ドライバーがブレーキを踏む必要性を自ら悟るように、ランダバウト手前を左カーブに設定する事で対応したのだ。必ずしも一時停止する必要はない。ドライバーの心理を勘案し、何度も実験を繰り返して進入角度を決定した。ランダバウトの進入路がやや左にカーブしているのはそのためだ。ただのカーブに見えるが、実は周到な実験に基づいて最適角度を決めている。

「既にランダバウト内にある車両を優先」するルールに変更したら、ミニ・ランダバウトが可能になった。郊外の交差点には直径僅か50センチ足らずのランダバウトもある。都心を別にすると、英国の交差点はほとんどランダバウト方式だ。一部の過密ランダバウトには信号機が設置されている所もあるが、基本的に信号機はない。シンプルで環境にも優しい、とても優れた交通システムなのだ。


◇日本のランダバウト

日本にもランダバウトはある。ロータリーと呼ばれ、駅前でよく見かけるが、交差点のロータリーは珍しい。日本初の交差点ロータリーは1936年(昭和11年)北海道旭川市に作られた。駅前から石狩川の旭橋に向かって北に伸びる昭和通りと8条通りの交差する5差路に作られた。余談になるが、後日この平和通りは東京銀座に歩行者天国が出来る前、日本初の歩行者天国になった(地元では買い物公園と呼んでいる)。旭川には他にも日本初がある。雪と氷の祭典旭川冬祭りだ。札幌雪祭りは旭川のアイデアを拝借したものだ。ついでに書くと、味噌ラーメンは札幌の発明だが、醤油ラーメンはこってりスープの旭川ラーメンが日本一美味しい。(ビップル注:著者は旭川市出身)

◇最近注目を集めるランダバウト

米国ではランダバウトはトラフィック・サークルと呼ばれ、1930年代に登場した。アメリカ人らしい発想なのだが、ラッシュアワー対策に、サークルの直径を大きくして、350メートルに達するものも作られた。まるでミニ・サーキットだ。案の定、ドライバーはレース場気取りでスピードを出し過ぎて事故が多発。いつのまにか姿を消してしまった。

TRLの専門官のお話によると、環境に優しく、統計的にも交差点事故の少ないランダバウトは最近世界的に注目されているという。フランスやオランダでは設置を増やしているし、北欧も最近導入を始めた。また米国でも再導入が検討されているそうだ。

日本でも、北海道十勝平野の信号機のない交差点で旅行者を中心に衝突事故が多発している(地元では十勝型事故と呼んでいる)。十勝平野に英国型ランダバウトが出現する日は近いのだろうか。


著作:
ビップル事務局(無断転用禁止)

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