| 英国のナンバープレート （本エッセーは2002年1月時事通信テムズコープに掲載されたものを著者の了解をいただいてビップルがお届けするものです） |
▽自動車は季節商品？ 自動車の販売には季節要因がある。ヨーロッパでは春先３〜４月に車を購入するお客様が圧倒的に多い。イースターの前に購入して新車で旅行に出かけるというのが一般的スタイルのようだ。ところが英国は大陸とは異なり、１９６７年以降９８年まで需要のピークは８月にあった。年間新車登録台数（販売台数）の四分の一が８月１カ月に集中する状態が３０年間続いた。ＳＡＬＥの影響ではない。英国には欧州他国には無い登録年式（モデルイヤー）制度があるからだ。 ご存知の方も多いと思うが、英国のナンバープレートは新車の登録年（初度登録年）がひと目で分かる仕組みになっている。「私の車はｘｘ年型だよ」という看板をぶらさげて走っているようなものだ。考え方によっては、これは少し恥ずかしいことだ。３年前に買った新品同様のドレスをタンスから出してパーティーに着て行ったら、お買い上げ年の札が背中と胸からぶら下がっていた、と言う状況に似ているかもしれない。 ▽英国では需要のピークが何故８月だったのか？ そもそも年式制度が英国で導入されたのは６３年１月からで、ナンバープレートの最後に「Ａ」のアルファベットが示された（翌年以降Ｂ、Ｃ、Ｄ・・・）。この制度は虚栄心の強い（？）英国消費者の購買パターンに大きな影響を与えた。なにせ自分の車の購入年度が人様に知れてしまうので、年末に車を買う人はほとんどいなくなり、年明けの１月に集中した。「俺の車は新車だぞ」と見せびらかしたかったのだ。中古車価格も１２月の新車は１月には一年落ちとなってしまうことも１月集中に拍車をかけた。ところが販売店が苦情を呈した。１２月の販売がほとんど無くなり、社員にボーナスが払えないというのだ。そこで当局は６７年から年式切替を８月に変更した。こうして英国では需要のピークが８月になったのである。 ８２年８月にはアルファベットが一巡して「Ｙ」となったので、翌８３年からはナンバープレートの先頭に「Ａ」を付けるようになった（Ｚは使わない）。このように英国では６７年以降３０年間にわたり販売の８月一極集中が続いていた。 ▽新プレート導入で需要の集中を分散 ２０００年に、英国当局は年式の切り替えを年２回（３月と９月）に変更した。これにより販売のピークは２回に分散される結果になった。ちなみに年間販売の三分の一以上が３月と９月の２カ月でカバーされる。 ２００１年の３月にアルファベットが再び一巡して「Ｙ」になったのを契機に、９月からプレートのフォーマットが全く新しくなった。年式を示すアルファベットは使わずに、数字の組合わせで年式を表現している（２００１年９月登録は５１、２００２年３月は０２、同９月は５２）。登録地もアルファベットで示される。 ▽付録 さて、英国にはナンバープレートを付けない車が一台堂々と走っているのをご存知だろうか？女王陛下の公用車ロールスロイス ＰｈａｎｔｏｍVIだ。プレートが無いので、スピード違反とか駐車違反で捕まる心配が無くていいなあ、と不謹慎な事を考えてはいけませんよ。 著作： ビップル事務局（無断転用禁止） |
