一次結合が一次従属となるための十分条件(
1)の証明
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(
舞台設定の確認)
R:実数体(実数をすべて集めた集合)
Rn:実n次元数ベクトル空間
+:実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法
v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。
具体的に書くと、i=1,2,…, lにたいして、vi1, vi2, …, vin∈Rとして、vi=( vi1, vi2, …, vin )
したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。
なお、個数lが有限個であることに注意。
(定理の確認)
実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlの一次結合を(l+1)個つくる。
これら(l+1)個の「v1, v2, …, vlの一次結合」は一次従属。
つまり、
w1=a11v1+a12v2+…+a1lvl (a11, a12, …, a1l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn )
w2=a21v1+a22v2+…+a2lvl (a21, a22, …, a2l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn )
:
wl=al1v1+al2v2+…+allvl (al1, al2, …, all ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn )
w(l+1)=a(l+1)1 v1+a(l+1)2v2+…+a(l+1)lvl (a(l+1)1, a(l+1)2, …, a(l+1)l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn )
は一次従属。
※「v1, v2, …, vlの一次結合」も実n次元数ベクトルであることに注意。
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(
証明) [永田『理系のための線形代数の基礎』補題1.2.1(p.12);]
任意の自然数lに対して「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」が成り立つことを、
数学的帰納法によって示す。
つまり、
(I) で、l=1のとき、「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」が成り立つことを示し、
(II) で、l=kのとき「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」が成り立つならば、
l=k+1のときも、「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」が成り立つことを示す。
→
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(I) l=1のとき、「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」すなわち「w1, w2は一次従属」が成り立つ
l=1のとき、w1=a11v1、w2=a21v1 (a11,a21∈R、v1∈Rn ) …(I-1)
(i)「a11≠0かつa21≠0」であるケース
・実数体Rの定義により、a11∈Rには、加法に関する逆元−a11∈Rが存在する。
・ a21w1+(−a11)w2=a21a11v1+(−a11)a21v1 ∵(I-1)
=a11a21v1+(−(a11a21))v1 ∵実数の積と符号の性質
={a11a21+(−(a11a21)) }v1 ∵スカラーに関する分配則
=0v1 ∵実数の反数との和
=0 ∵スカラー0倍
上記2点より、
w1,w2∈Rnに対して、スカラー−a11,a21∈R (−a11≠0かつa21≠0) が存在して、
a21w1+(−a11)w2=0
を満たす。
これは、w1, w2が一次従属であるということにほかならない。
(ii) 「a11≠0かつa21≠0」ではないケース
このケースでは、(I-1)より、「w1≠0かつw2≠0」ではない。
よって、定理より、w1, w2は一次従属。
以上より、
l=1のとき、あらゆるケースで、
「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」すなわち「w1, w2は一次従属」が成り立つことが示された。
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(II) l=kのとき
「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」すなわち「w1, w2, …, wk, w(k+1)は一次従属」が成り立つならば、
l=k+1でも
「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」すなわち「w1, w2, …, wk, w(k+1), w(k+2)は一次従属」が成り立つことを示す。
・仮定の分析
l=kのとき、「w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属」が成り立つとは、
すなわち、「w1, w2, …, wk, w(k+1)は一次従属」が成り立つということであり、
これは、すなわち、
k個の「Rからつくった実n次元数ベクトル」v1, v2, …, vkからつくった(k+1)個の一次結合
w1=a11v1+a12v2+…+a1kvk (a11, a12, …, a1k ∈R、v1, v2, …, vk ∈Rn )
w2=a21v1+a22v2+…+a2kvk (a21, a22, …, a2k ∈R、v1, v2, …, vk ∈Rn )
:
wk=al1v1+al2v2+…+akkvk (ak1, ak2, …, akk ∈R、v1, v2, …, vk ∈Rn )
w(k+1)=a(k+1)1 v1+a(k+1)2v2+…+a(k+1)kvk (a(k+1)1, a(k+1)2, …, a(k+1)k ∈R、v1, v2, …, vk ∈Rn )
が一次従属であるということ。
・l=k+1のとき、w1, w2, …, wl, w(l+1)はw1, w2, …, wk, w(k+1), w(k+2)であり、
w1, w2, …, wk, w(k+1), w(k+2)は、
(k+1)個の「Rからつくった実n次元数ベクトル」v1, v2, …, vk+1からつくった(k+2)個の一次結合
w1= a11v1 +a12v2 +…+a1kvk+ a1(k+1)v(k+1) (a11, a12, …, a1k,a1(k+1)∈R、v1, v2, …, vk, vk+1 ∈Rn )
w2= a21v1 +a22v2 +…+a2kvk +a2(k+1)v(k+1) (a21, a22, …, a2k,a2(k+1)∈R、v1, v2, …, vk, vk+1 ∈Rn )
:
wk= ak1v1 +ak2v2 +…+akkvk +ak(k+1)v(k+1) (ak1, ak2, …, akk,ak(k+1)∈R、v1, v2, …, vk, vk+1 ∈Rn )
w(k+1)=a(k+1)1 v1+a(k+1)2v2+…+a(k+1)kvk+a(k+1)(k+1)v(k+1) (a(k+1)1,a(k+1)2,…, a(k+1)k,a(k+1)(k+1)∈R、v1, v2, …, vk , vk+1∈Rn )
w(k+2)=a(k+2)1 v1+a(k+2)2v2+…+a(k+2)kvk+a(k+2)(k+1)v(k+1) (a(k+2)1,a(k+2)2,…, a(k+2)k,a(k+2)(k+1)∈R、v1, v2, …, vk , vk+1∈Rn )
である。
・v(k+1)の係数a1(k+1) ,a2(k+1) , … , ak(k+1) ,a(k+1)(k+1) , a(k+2)(k+1) がすべてゼロである場合と、そうでない場合に分けて、
w1, w2, …, wk, w(k+1), w(k+2)が一次従属であることを示す。
・v(k+1)の係数a1(k+1) ,a2(k+1) , … , ak(k+1) ,a(k+1)(k+1) , a(k+2)(k+1) がすべてゼロである場合、
スカラー0倍と零ベクトルの加法則より、
w1=a11v1+a12v2+…+a1kvk (a11, a12, …, a1k ∈R、v1, v2, …, vk, vk+1 ∈Rn )
w2=a21v1+a22v2+…+a2kvk (a21, a22, …, a2k ∈R、v1, v2, …, vk, vk+1 ∈Rn )
:
wk=ak1v1+ak2v2+…+akkvk (ak1, ak2, …, akk ∈R、v1, v2, …, vk, vk+1 ∈Rn )
w(k+1)=a(k+1)1 v1+a(k+1)2v2+…+a(k+1)kvk (a(k+1)1, a(k+1)2, …, a(k+1)k ∈R、v1, v2, …, vk , vk+1∈Rn )
w(k+2)=a(k+2)1 v1+a(k+2)2v2+…+a(k+2)kvk (a(k+2)1, a(k+2)2, …, a(k+2)k ∈R、v1, v2, …, vk , vk+1∈Rn )
である。
すると、w1, w2, …, wk, w(k+1)は仮定と同じモノであるから、これらは仮定より、一次従属。
ならば、一次従属なベクトルの集合に、ベクトルを加えても一次従属だから、∵
仮定のもとで、w1, w2, …, wk, w(k+1), w(k+2)は一次従属である。
・「v(k+1)の係数a1(k+1) ,a2(k+1) , … , ak(k+1) ,a(k+1)(k+1) , a(k+2)(k+1) のすべてがゼロ」というわけではない場合
v(k+1)の係数a1(k+1) ,a2(k+1) , … , ak(k+1) ,a(k+1)(k+1) , a(k+2)(k+1) の少なくとも一つは、ゼロではない場合。
v(k+1)の係数a1(k+1) ,a2(k+1) , … , ak(k+1) ,a(k+1)(k+1) , a(k+2)(k+1) のなかの、ゼロではない少なくとも一つを、
am(k+1) (ただし、 mは自然数で、1≦m≦k+2 を満たす) とおき、
v1, v2, …, v(k+1)からつくった(k+2)個の一次結合のうち、
v(k+1)の係数がam(k+1)≠0である、v1, v2, …, vk+1の一次結合を、
wm=am1v1+am2v2+…+amkvk+am(k+1)v(k+1) (am1, am2, …, amk,am(k+1)∈R、v1, v2, …, vk, vk+1∈Rn ,1≦m≦k+2)
とおく。
v1, v2, …, vk+1からつくった(k+2)個の一次結合のうち、
wm以外の一次結合wn( nは自然数で、1≦n≦k+2かつn≠m)から、
wn'=wn−(an(k+1)/am(k+1))wm
=wn−(an(k+1)/am(k+1))(am1v1+am2v2+…+amkvk+am(k+1)v(k+1) )
=wn−((am1an(k+1)/am(k+1))v1+(am2an(k+1)/am(k+1))v2+…+(amkan(k+1)/am(k+1))vk+an(k+1)v(k+1) )
= an1v1+an2v2+…+ankvk+an(k+1)v(k+1)
−((am1an(k+1)/am(k+1))v1+(am2an(k+1)/am(k+1))v2+…+(amkan(k+1)/am(k+1))vk+an(k+1)v(k+1) )
= (an1−am1an(k+1)/am(k+1))v1+(an2−am2an(k+1)/am(k+1))v2+…+(ank−amkan(k+1)/am(k+1))vk
をつくる。
すると、
wn'=(an1−am1an(k+1)/am(k+1))v1+(an2−am2an(k+1)/am(k+1))v2+…+(ank−amkan(k+1)/am(k+1))vk
( nは自然数で、1≦n≦k+2かつn≠m)
は、(an1−am1an(k+1)/am(k+1)), (an2−am2an(k+1)/am(k+1)),…,(ank−amkan(k+1)/am(k+1))∈Rだから、
v1, v2, …, vk の一次結合。
ならば、w'1, w'2, … , w'k , w'(k+1) , w'(k+2) から、w'mを除いた、(k+1)個のv1, v2, …, vk の一次結合は、
仮定より、一次従属である。
一次従属の定義により、
n=mを除く、n=1,2,…, k, k+1, k+2 について、 全部は0ではないcnが存在して、
を満たす。
ここで、wn'= wn−(an(k+1)/am(k+1))wm を代入。
cnwn'=cnwn−cn(an(k+1)/am(k+1))wm だから、
wmの係数
は実数体Rに属し、
また、n=mを除く、n=1,2,…, k, k+1, k+2 にたいするcnは少なくとも一つゼロでないものを含むから、
これは、
w1, w2, …, wk, w(k+1), w(k+2)は一次従属であることを示している。
※
mがたまたま2<m<kであったときの具体例
|w'1=w1−(a1(k+1)/am(k+1))wm=(a11−am1a1(k+1)/am(k+1))v1+(a12−am2a1(k+1)/am(k+1))v2+…+a1kvk
|w'2=w2−(a2(k+1)/am(k+1))wm=(a21−am1a2(k+1)/am(k+1))v1+(a22−am2a2(k+1)/am(k+1))v2+…+(a2k−amka2(k+1)/am(k+1))vk
|:
|w'm−1=w'm−1−(a(m−1)(k+1)/am(k+1))wm
| = (a(m−1)1−am1a(m−1)(k+1)/am(k+1))v1+(a(m−1)2−am2a(m−1)(k+1)/am(k+1))v2+…+(a(m−1)k−amka(m−1)(k+1)/am(k+1))vk
|w'm+1=w'm+1−(a(m+1)(k+1)/am(k+1))wm
| = (a(m+1)1−am1a(m+1)(k+1)/am(k+1))v1+(a(m+1)2−am2a(m+1)(k+1)/am(k+1))v2+…+(a(m+1)k−amka(m+1)(k+1)/am(k+1))vk
|:
|w'k=wk−(ak(k+1)/am(k+1))wm= (ak1−am1ak(k+1)/am(k+1))v1+(ak2−am2ak(k+1)/am(k+1))v2+…+(akk−amkak(k+1)/am(k+1))vk
|w'(k+1)=w(k+1)−(a(k+1)(k+1)/am(k+1))wm
| = (a(k+1)1−am1a(k+1)(k+1)/am(k+1))v1+(a(k+1)2−am2a(k+1)(k+1)/am(k+1))v2+…+(a(k+1)k−amka(k+1)(k+1)/am(k+1))vk
|w'(k+2)=w(k+2)−(a(k+2)(k+1)/am(k+1))wm
| = (a(k+2)1−am1a(k+2)(k+1)/am(k+1))v1+(a(k+2)2−am2a(k+2)(k+1)/am(k+1))v2+…+(a(k+2)k−amka(k+2)(k+1)/am(k+1))vk
→
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