分布関数(1次元)

仮定:

  確率空間 

  確率変数 X: ΩR1

  PX: X確率分布 on

    つまり、 Px ( (a, b] )P( {ωΩ| aX(ω)b } )

              = P ( {ωΩ|X (ω) (a, b] } )

              = P ( X-1 ( (a, b] ) )

  とする。

定義:分布関数(Distribution Function)

  cf. 二次元の同時(結合)分布関数多次元の同時分布関数(結合分布関数)の定義   

  FX(x)=PX ( (-,x] )= P ( {ωΩ| X(ω)x } ), xR1

    なる

  FX : R1[0,1]

    を、X (もしくはPX) の分布関数という。

  

 ※ 略記法

   {ωΩ| aX(ω)b}は{ aXb }

   {ωΩ| X (ω)B}は{ XB }

   などと略記される。

       野田・宮岡『数理統計学の基礎p15.

定理1

  P ( {ωΩ| aX(ω)b } )=Fx(b)Fx (a)

  (証明)

   Fx (b) = P ( {ωΩ|X(ω)b} )         ∵分布関数の定義

      = P ( {ωΩ|X(ω)a } {ωΩ| a X(ω) b } ) 

      = P ( {ωΩ|X(ω)a } ) P ({ωΩ| a X(ω) b } )  ∵確率の有限加法性

      = Fx (a) P ({ωΩ| a X(ω) b } )      ∵分布関数の定義

   移項して、

   P ({ωΩ| a X(ω) b } )= Fx (b)Fx (a)

  

定理2 分布関数の性質

    cf. 二次元の同時(結合)分布関数の性質多次元の同時(結合)分布関数の性質   

  分布関数Fx ()は次の性質をもつ。

  (1) 0Fx(x)1, for xR1

  (2) x y Fx(x)Fx(y)

     すなわち、Fx(x)単調非減少関数

  (3-1)

  (3-2)

  (4) Fx (x)右連続関数である。

    すなわち、

    

       for x R1

  (証明)

  (1) Fx確率変数X確率分布 PXとして定義されている。

    確率分布もまた確率の公理を満たす確率であるので(∵定理)、。

    0Fx(x)1

  (2) xyを任意にとる。

     xyより、{Xx }{Xy }

    ゆえに、{ωΩ| X(ω)x }{ωΩ| X(ω)y }

    よって、確率の単調性から、

    P({ωΩ| X(ω)x }) P({ωΩ| X(ω)y })

     確率分布の定義を用いて言い換えれば、すなわち、

    P X ( (-, x ] ) P X ( (-, y ] )

     分布関数の定義を用いて言い換えれば、すなわち、

    Fx(x)Fx(y)

    

  (3-1) の証明

   

           ∵解析学における「関数の収束」と「数列の収束」を関連づけた定理

             「x x0 のとき、f(x)Aに収束する」ならば、

             「x0 に収束するどんな数列 { xn }(ただし、xn x0 )に対しても、

                             数列 { f ( xn ) }Aに収束する」

              また、逆も成り立つ。

            ボクのみたところ、同様に、

             「x →∞のとき、f(x)Aに収束する」ならば、

             「∞に発散するどんな数列{ xn }に対しても、数列 { f ( xn ) }Aに収束する」

             逆も成り立つ、                

            ともいえる。なぜかは、こちら。 

             *実数での極限を自然数での極限(可算無限)に置き換え。集合列の極限に帰着させるため。

            鈴木山田『数理統計学)p25では(2)で正当化しているが、なぜそうできるのか??

              ∵分布関数の定義

          ∵確率分布の定義

             ここで、上式で極限を考えた集合{ωΩX(ω)n}Anとおく。

             集合列{An}の極限に関する性質について、考えてみよう。

             集合列{An}は、An An+1 となるので、増大列

                したがって、集合列{An}には極限が存在し、

                   ={ω∈ΩX(ω)<∞}=Ω ()

                また、増大列であることから、確率の連続性が成り立ち。

                        (**)

           以下本題にもどって、

    

           ∵(**)

         =P(Ω)             ∵()

         =1             (確率の公理P2)

   →鈴木山田『数理統計学)p25。柳川堯『統計数学p15

  (3-2) の証明

   

           ∵解析学における「関数の収束」と「数列の収束」を関連づけた定理

             「x x0 のとき、f(x)Aに収束する」ならば、

             「x0 に収束するどんな数列 { xn }(ただし、xn x0 )に対しても、

                             数列 { f ( xn ) }Aに収束する」。

              また、逆も成立する。

             *実数での極限を自然数での極限(可算無限)に置き換え。集合列の極限に帰着させるため。

             鈴木山田『数理統計学)p25では(2)で正当化しているが、なぜそうできるのか??

              ∵分布関数の定義 

          ∵確率分布の定義 

           ここで、上式で極限を考えた集合{ωΩX(ω)≦−n}Anとおく。   

           集合列{An}の極限に関する性質について、考えてみよう。

           集合列{An}は、AnAn+1 となるので、減少列

           したがって、集合列{An}には極限が存在し、

            

               ={ωΩ|−∞<X(ω)≦−1}{ωΩ|−∞<X(ω)≦−2}

                 …{ωΩ|−∞<X(ω)≦−100}

                            …{ωΩ|−∞<X(ω)<−∞}

               =φ ()

           また、減少列であることから、確率の連続性が成り立ち。

              (**)

           以下本題にもどって、

   

              (**)

        =P( φ )            ()

        =0                 ∵定理:空事象の確率 

     →鈴木山田『数理統計学)p25

  (4)Fx (x)右連続関数である」の証明

  ※関連重要事項→右極限右連続

  xRを任意にとる。

   

           ∵・解析学における「関数の収束」と「数列の収束」を関連づけた定理

               「x x0 のとき、f(x)Aに収束する」ならば、

               「x0 に収束するどんな数列 { xn }(ただし、xn x0 )に対しても、

                             数列 { f ( xn ) }Aに収束する」。

                また、逆も成立する。

              これを、片側(x >x0)に制限して、証明しなおせばよい。

              ・Fxが単調非減少関数。

              ∵分布関数の定義 

          ∵確率分布の定義 

           ここで、上式で極限を考えた集合{ ωΩX(ω)x+1/n } Anとおく。   

           集合列{An}の極限に関する性質について、考えてみよう。

           集合列{An}は、AnAn+1 となるので、減少列

           したがって、集合列{An}には極限が存在し、

            

               ={ωΩ|−∞<X(ω)x+1}{ωΩ|−∞<X(ω)x +1/2}

                 …{ωΩ|−∞<X(ω) x +1/100 }

                            …{ωΩ|−∞<X(ω)x }

               ={ωΩ|−∞<X(ω) x } ()

           また、減少列であることから、確率の連続性が成り立ち。

              (**)

           以下本題にもどって、

         

              ∵ (**)

         =P( {ωΩ|−∞<X(ω) x } )  ∵ (*)

         =P X ( (−∞,x] ) FX(x)          ∵ 分布関数の定義

  

  

定理3

  上の確率分布と、確率分布関数は、一対一に対応する。

  つまり、

  確率分布PX が与えられるとその分布関数Fx(x)が定義され、

  逆に、

  分布関数Fx(x)が与えられると、

  それを分布関数として持つ唯一つの確率分布PX が存在する。

  (証明)

  略

  

定理4

  あるF:R1R1

  定理2(1)-(4)を満たすなら、

  上の確率Pが唯1つ存在して、

  P( (−∞,x] )=F(x) for xR1

  (証明)

  略

  

  

reference

文献1.『岩波数学辞典(第三版)』項目47C(p.128).

文献2. 佐藤坦『はじめての確率論 測度から確率へ』共立出版、1994pp.27-28.

文献3. 鈴木武・山田作太郎『数理統計学―基礎から学ぶデータ解析―(第二版)』内田老鶴圃、1998年、pp.24-26

文献4. 柳川堯『統計数学』近代科学社、1990,pp.14-15.

文献5. 野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、pp.17-18