2重積分における変数変換公式 

 
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変数変換による面積の変化
[高木『解析概論896(pp.351-355); 吹田新保『理工系の微分積分学205;小形『多変数の微分積分99-101;
 杉浦『解析入門IIVII章§4(pp.106-110.);笠原『微分積分学7.3 (pp.266-270)]
(舞台設定)
Ω:
u-v平面上の領域 
P(uo,vo): Ω内の一点。

A: Pを含むΩ上の面積確定な区域
ρ
: Aの径。
Dx-y平面上の領域 
x=φ(u,v) ,y=ψ(u,v) :ΩをD上に写す一対一対応。φ, ψは、C1級関数
P'(φ(uo,vo) ,ψ(uo,vo)): φ(u,v) ,ψ(u,v)によって、P(uo,vo)x-y平面上のD上に写した像。
A': φ(u,v) ,ψ(u,v)によって、Ωをx-y平面上のD上に写した像。面積確定になる。  
(本題)
ρ→
0として、Aを点P(uo,vo)に収束させると、
それに対応して、
A'も点P'(φ(uo,vo) ,ψ(uo,vo))に収束する。
このとき、
AA'の面積比は、点P(uo,vo)におけるヤコビアンの絶対値に等しくなる。
つまり、
  

2重積分における変数変換公式
[杉浦『解析入門IIVII章§4(pp.110-119.); 吹田新保『理工系の微分積分学205;
 高木『解析概論896(pp.355-359);黒田『微分積分103(365-73.);
 笠原『微分積分学7.3 (pp.266-270); 小形『多変数の微分積分95-106.]
(舞台設定)
Ω:
u-v平面上の領域 
Dx-y平面上の領域 
x=φ(u,v) ,y=ψ(u,v):ΩをD上に写す一対一対応
(本題)
仮定1:φ
(u,v) ,ψ(u,v)がΩ上のC1級関数 
仮定2:
ヤコビアンがΩ上ゼロにならない、すなわち、任意の(u,v)Ωに対して、
  
仮定
3:関数f(x,y)D可積分 
が成り立つ
ならば
結論
1:   f(φ(u,v) ,ψ(u,v))もΩ上可積分 
となって、 
結論
2: D上の関数f積分を、Ω上の合成関数f (φ(u,v) ,ψ(u,v)) J(u,v) 積分で表せて、
 
(だいたいの直感的な説明)
[吹田新保『理工系の微分積分学205; 小形『多変数の微分積分95-106;高木『解析概論896(pp.355-356);]
step1:
まず、そもそも
重積分とは何だったのかを振り返っておく。
とりあえず、
Dを矩形として話を進める
(一般の有界集合上の積分も、結局は、矩形上の積分に帰着された)
 とは、
 
D分割を限りなく細かくしていったときの、f(x ,y )リーマン和の極限であった。
 
リーマン和とはそもそも、
  
D分割によってできた小矩形 Dijの面積と、Dij上の点(xij, yij)にたいするf (xij , yij)の値の積を、
  すべての
小矩形について足し合せた和であった。
 だから、 とは、
    
 にほかならない。
Step2:
ここで、
x=φ(u,v) ,y=ψ(u,v)を用いて、上の積分の定義を、x,yの式から、u,vの式で表してみることにする。
1. まず、f (xij , yij)は、x=φ(u,v) ,y=ψ(u,v)をそのまま代入して、f (φ(uij , vij) ,ψ(uij , vij ) )で表せば良い。
 この変数変換は、
x,yを、u,vを用いた式で表すように書きかえるだけだから、関数f(x,y)自体は変わらない。
2. 次に、x-y 上のDijの面積であるが、これをu-v上にうつしたΩijとは、かたちも面積もちがってくる。
 ここでは、
分割を限りなく細かくしていったときを考えているので、定理がなりたち、
  
 つまり、
||0で、
 
 となる。
3. よって、||0で、
  
f (xij , yij)(Dijの面積)= 
          
          
 上の等式を全ての
小矩形について足し合せた和をとると、
 
||0で、
  
      

Step3:
||0とした際の上式の左辺は、
  
 の定義、
||0とした際の右辺は、
関数

のΩにおける
一般リーマン和||0とした際の極限となるが、
これが収束すれば、
定理より、
   
に等しくなる。  
  
(厳密な証明)
 以下のテキストに掲載されているが、かなり面倒。覚悟がいる。
  杉浦『解析入門IIVII章§4(pp.110-119.);高木『解析概論896(pp.355-359)
  笠原『微分積分学7.3 (pp.266-270);小平『解析入門II』第7章§7.3 (pp.355-388.)
 

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積分の変数変換の例1:アフィンaffine変換




積分の変数変換の例2:極座標変換






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(reference)

笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、7.3 (pp.266-270)
黒田成俊『
21世紀の数学1:微分積分』共立出版、2002年、第103(365-73.)
小平邦彦『
解析入門II (軽装版)岩波書店、2003年、第7章§7.3 (pp.355-388.)。厳密な証明を、長々と叙述。
杉浦光夫『
解析入門II』東京大学出版会、1980年、VII章§4(pp.106-119.)。厳密な証明を、長々と叙述。
高木貞治『
解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、896(pp.349-359)
吹田・新保『
理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、p.205。厳密な証明は省略。変数変換前後の面積比がヤコビアンになることを中心に直感的に説明。
小形正男『理工系数学のキーポイント
7:多変数の微分積分』岩波書店、199695-106. 厳密な証明は省略。変数変換前後の面積比がヤコビアンになることを中心に、イメージしやすく説明。
和達三樹『理工系の数学入門コース
1:微分積分』岩波書店、1988年、pp. 145-152;

Lang,Serge.Undergraduate Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1983,Chapter 19. Multiple Integrals. (pp.468-482.)