「はじめに」から引用する。
本書は学習院大学における 3 年次の幾何学の講義ノートをもとにして,いくつかの話題を加えたものである.
章末には問題がある。巻末には章末問題の略解がある。
私のような、頭が弱い者にはわからない。それでも、少し計算を自分でもしてみる。なお、本書では \( \boldsymbol{x}, \boldsymbol{k}, \boldsymbol{e} \) などは太文字イタリックになっているが、引用の都合で太字にせず `x, k, e` としている. まず、「1. 曲線論」の例 1.9 (pp.20-21)を見てみる。
ここで
`x(t) = ((t),(at^2),(bt^3)), dotx(t) = ((1),(2at),(3bt^2)), ddotx(t) = ((0),(2a),(6bt)), dotddotx(t) = ((0),(0),(6b))`で表される曲線を考えよう.この曲線は
- `(x, y)` 平面に射影すると`((t),(at^2))` で,放物線 `y = ax^2` になる.
- `(y, z)` 平面に射影すると`((at^2),(bt^3))` で,尖点 `z = +-(sqrt(y))^3` になる.
- `(x, z)` 平面に射影すると`((t),(bt^3))` で, 3 次放物線 `z = bx^3` になる.
という特徴がある.曲率,捩率は次式で表される.
`kappa(t) = 2 sqrt((a^2+9b^2t^2+9a^2b^2t^4)/(1+4a^2t^2+9b^2t^4)^3), tau(t) = (3ab)/(a^2+9b^2t^2+9a^2b^2t^4)`(後略)
曲率 `kappa(t)` を計算しようと思い、本書 p.10 にある次の式
`kappa(t) = norm(k(t)) = norm(dot e_1(t))/norm(dotx(t))`(1.5)を使ってみたが、`norm(dote_1(t))` の計算が大変であきらめた。ところが、p.13 で次の公式が導出されているではないか。
`kappa(t)^2 = ((dotx,dotx)(ddotx,ddotx) - (dotx, ddotx)^2)/(dotx, dotx)^3`(1.7)よし、これを使えばいい。
`(dotx, dotx) = 1+4a^2t^2+9b^2t^4`
`(dotx, dotx)^3 = (1+4a^2t^2+9b^2t^4)^3`
`(dotx, ddotx) = 4a^2t+18b^2t^3`
`(dotx, ddotx)^2 = 16a^4t^2 + 144a^2b^2t^4 + 324b^4t^6`
`(ddotx, ddotx) = 4a^2+36b^2t^2`
`(dotx, dotx)(ddotx, ddotx) = 4a^2+(16a^2+36b^2)t^2 + 180a^2b^2t^4 + 324b^4t^6`
`(dotx, dotx)(ddotx, ddotx) - (dotx, ddotx)^2= 4a^2 + 36b^2t^2 + 36a^2b^2t^4`
`((dotx, dotx)(ddotx, ddotx) - (dotx, ddotx)^2)/(dotx, dotx)^3 = (4a^2 + 36b^2t^2 + 36a^2b^2t^4)/(1+4a^2t^2+9b^2t^4)^3`
`sqrt(((dotx, dotx)(ddotx, ddotx) - (dotx, ddotx)^2)/(dotx, dotx)^3) = 2sqrt((a^2 + 9b^2t^2 + 9a^2b^2t^4)/(1+4a^2t^2+9b^2t^4)^3)`
この答は確かに `kappa(t)` である。感動した。次に `tau(t)` を求めてみよう。同様の公式は p.19 にある。
`tau(t) = det(dotx,ddotx,dotddotx) / ((dotx, dotx)(ddotx, ddotx) - (dotx, ddotx)^2)`(1.15)`det(dotx,ddotx,dotddotx) = ((1,0,0),(2at,2a,0),(3bt^2,6bt,6b)) = 12ab `
`tau(t) = (12ab)/ (4a^2 + 36b^2t^2 + 36a^2b^2t^4) = (3ab) / (a^2+9b^2t^2+9a^2b^2t^4)`おお、これも合っている。ここで力尽きた。
ところで、p.23 の図 1.10 ブーケの公式には、この 3 方向からみたときの射影が表されている。これを見て、昔の、 「まるくて、ちっちゃくて、さんかくだー、サクマのいちごみるく」というコマーシャルを思い出した。
「2.曲面論」で計算できそうな例がないか探したが、見当たらない。それでは、ガウスのあの「thorema egregium」を本書ではどのように称しているか、 調べてみた。p.79 にその定理があったが訳はなく、「Theorema egregium」を説明していた。訳をつけるまでもない、と著者は考えたのだろうか。
「3.多様体論」でも計算できそうな例がないか探したが、見当たらなかった。pp.156-157 を見てみると、immersion には「はめ込み」や 「挿入」という訳語があり、また embedding には「埋め込み」や「埋蔵」という訳語があった。しかし、submersion には日本語がなく、 「サブマージョン」というカタカナで与えられていた。インターネットなどでは submersion は「沈め込み」という訳語がある。
講座<数学の考え方>
数式記述
数式記述は ASCIIMathML を、 数式表現は MathJax を用いている。
書誌情報
書名 曲面と多様体 著者 川﨑徹郎 発行日 2001 年 9 月 25 日(初版第 1 刷) 発行元 朝倉書店 定価 3900 円(本体) サイズ 256 ページ ISBN 4-254-11594-6 その他 草加市立図書館で借りて読む
MARUYAMA Satosi