「まえがき」より引用する :
本書は微分方程式について初めて学ぶ人々を対象とした入門書であり, 初等解法と定性理論の両方をバランスよく紹介することを目的としている.
問は各節で与えられ、巻末に解答とヒントが掲載されている。また、参考文献が巻末にある。
常微分方程式の初等解法は大学初年級でやったように思うが、当然のことながら忘れている。本書の第2章では初等解法を紹介している。 初等解法は系統的な解法があるようなないような、「かゆい」分野である。初等関数の積分を求める方法と比べてみよう。 初等関数の積分を求める二大方法は置換積分と部分積分であるが、置換積分ではどの項をどのように置換するかでいろいろな方法があり、 部分積分では被積分関数の積をどのように構成してどちらを先に積分するかでいろいろな方法があるのだった。 さて、微分方程式において、初等解法のなかで完全微分方程式に帰着させる方法がある。この方法を本書の pp.40-41 にしたがって説明する。
ある微分方程式が次のような形に書けるとする。
さて、次の完全でない微分方程式があるとする。
ここで積分因子を見つけるには系統的な方法があり、それは本書でいくつか紹介されている。しかし、p.47 では次のようにいっている:
(前略)実際上はいろいろな例から積分因子を推測し,試行錯誤しながら捜す方が効率的である. 以下にあげる例は積分因子を見つける上で役に立つことがある.
`d(xy) = xdy + ydx``d(y/x) = (-ydx + xdy) / x^2``d(x/y) = (ydx - xdy) / y^2``d (tan^-1{:y/x:}) = (-ydx + xdy)/(x^2+y^2)`
実質的に第2式と第3式が同じであることがわかるが、私は全微分の概念が身に付いていないからびっくりする。第1式はこういうことだろう
`d/(dx) (xy) `= `x(dy)/(dx) + y` この両辺に `dx` をかけて `d(xy) = xdy + ydx`
第 2 式はこういうことだろう
`d/(dx) (y/x) `= `- y 1/x^2 + (dy)/(dx) 1/x ` この両辺に `dx` をかけて `d(y/x) = (-y dx + x dy)/x^2`
第 4 式はこういうことだろう。まず、`y/x= t` とおけば、`y=xt` より` dy/dt = t (dx)/(dt) + x`。 よって `dt = (- tdx + dy )/x`。 また、`d/(dt) tan^-1 t = 1/ (1 + t^2)` であるから、 `d (tan^-1{:y/x:}) = dt * 1/(1+t^2) = (- tdx + dy )/x * 1/(1+t^2)= (- ydx + xdy )/x^2 * x^2/(x^2+y^2) = (-ydx + xdy)/(x^2+y^2)`。
これだけで体力を使い果たしてしまったため、もう書くべきことがなくなってしまった。
p.204 の参考文献で 福原満州雄
とあるのは正しくは《福原満洲雄》である。
また、p.205 の参考文献で、
菊地文雄,山本昌宏
とあるが、
正しくは《菊地文雄,山本昌宏》である。
数式の表記は ASCIIMath を使っている。
書名 | 常微分方程式論 |
著者 | 柳田英二, 栄伸一郎 |
発行日 | 2002 年 1 月 25 日 初版 第1刷 |
発行元 | 朝倉書店 |
定価 | 3600 円(本体) |
サイズ | A5版 224 ページ |
ISBN | 4-254-11587-3 |
その他 | 草加市立図書館にて借りて読む |
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