森田茂之:集合と位相空間

作成日 : 2022-10-24
最終更新日:

概要

「まえがき」から引用する。

本書の目的は,集合と位相空間について基礎的な部分の解説をすることである.

集合は難しい

第1章は集合である。集合は難しい。最初は難しくなさそうなふりをして、だんだんと難しくなっていき、 最後にはまるでわからなくなる。どこからわからなくなったのかが、わからない。

たとえば、商集合の概念がある。最初はなるほど、と思うのだが、その応用としてたとえば射影空間が出てくるとわからない。 また、濃度の概念がある。有限集合の濃度ならまだしも、無限集合の濃度が出てきて対角線論法が登場するとお手上げだ。 集合がわからないのは、この本のせいではない。私の頭が弱いせいだ。

位相は難しい

第2章は位相空間である。集合と位相はよく同じ本で扱われる。その理由を考えるのだが、よくわらかない。 位相の定義にはいろいろありそれらは同値だが、開集合を使うものが一般的だ。開集合の構成を論じるときに集合のことばが欠かせないから、 集合の次は位相を導入するのではないか、というのが私の弱い頭で得た結論だ。

p.75 に次の記述がある。

同じ集合 `X` 上に二つの位相 \( \mathcal{U_1, U_2} \) が与えられているとしよう. \( \mathcal{U_1} \subset \mathcal{U_2} \) のとき,言い換えれば \( \mathcal{U_1} \) に関する開集合が常に \( \mathcal{U_2} \) に関しても開集合であるとき,\( \mathcal{U_1} \) は \( \mathcal{U_2} \) より弱い位相であるという. 逆に \( \mathcal{U_2} \) は \( \mathcal{U_1} \) より強い位相であるという.`X` を一つ定めたとき, その密着位相は `X` の位相のなかで最も弱い位相であり,また離散位相は最も強い位相である.

位相空間の本にはたいてい書かれていることだから、この本を見てどうのこうのというわけではないのだが、 数学に「強い、弱い」という用語が来るのはおもしろい。慣れないうちは、密着位相と離散位相のどっちが強くてどっちが弱いのか、 わからなくなる。私は、「強い」を「はっきりと」と解釈して、位相空間上の二つの点が「はっきりと」識別できるのが強い位相、 識別できないのが弱い位相だと覚えるようにしている。そうすれば、密着位相が最も弱い位相で、離散位相が最も強い位相だというのがわかる。 数学とは関係ないが、よく食べ物の形容で「外はサクサク、中はモチモチ」というのがあり、強い位相と弱い位相ということばを見ると、 食べ物を思い出す。

発展編はさらに難しい

第3章は集合と位相空間(発展編)である。第1章も第2章もわからないのだから、第3章がわかるはずがない。 ただ、最後にベールの定理が証明されているのはさすがだと思った。 私がベールの定理を見るのは関数解析の本ばかりで、集合と位相空間の書籍で取り上げられないのは残念だと思っていたからだ。

誤植

東京工業大学室伏先生による正誤表(www.fz.dis.titech.ac.jp)がある。

講座数学の考え方

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名集合と位相空間
編者森田茂之
発行日1982 年 6 月 10 日 初版第 1 刷
発行元朝倉書店
定価3800 円
サイズA5版 232 ページ
ISBN4-254-11588-1
その他草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi