谷島 賢二:ルベーグ積分と関数解析

作成日:2016-10-29
最終更新日:

概要

まえがきによれば、この本はルベーグ積分の基本事項とそれに続く関数解析の初歩を学ぶための教科書である。 同じくまえがきから引用する。

この本には多くの問,および練習問題がある.講義における演習問題同様,学生諸君はこれらを本文の一部と考え,各問を解きながら先に進んでほしい. これらの問・練習問題に略解をつけることはしなかった.これは指数の問題もあるが,講義のレポート問題として課されることを想定しているためでもある. (後略)

なお、本書は後に[新版]が出ているが、そちらは見ていない。

感想

まえがきの例から引用する。ただし多少組版は変えている。

`X` 上の実関数列 `{f_n}` に対して `{f_n(x)}` が収束する `x` の全体が

`nnn_n uuu_m nnn_(j, k gt m) { x : abs(f_j(x)-f_k(x)) lt 1/n }`

と表されること,
`{x : "sup" f_n(x) lt a} = uuu_m nnn_n {x : f_n(x) lt a - 1/m}`

であることなどを理解するのに困難を覚える 3 年生は少なくない. 学生諸君はこのような表現が現れるたびに,それが成立する理由と意味を考えながら,自らトレーニングを積む必要がある.

そうか、トレーニングを積まなければいけないのか。がんばろう。

問の例

p.3 から問を引用する:

問 1.1 次が正しいか否かを判定せよ.正しくなければ反例をあげよ.
(1) `"sup"{a_n} gt alpha hArr EEn, a_n gt alpha.`
(2) `"sup"{a_n} ge alpha hArr EEn, a_n ge alpha.`

最初 (1) と (2) の違いが判らず、30 秒ほどずっと見続けてしまった。その結果、(1) は不等号に等号がついているが (2) は等号がついていないことがわかった。違いがわかっても、困ってしまった。「正しくなければ反例をあげよ.」というが、 では正しければ証明しないといけないのだろうか。私には空気が読めない。 なお、本書の目次と本文の間に「記号についての注意」があるので引用する。

1) 混乱のおそれがないときには数列やその極限,級数などの添え字を省略する. `{a_n : n = 1, 2, ...}` を `{a_n}` ,`lim_(n -> oo) a_n` を `lim a_n`, `sum_(n=1)^oo a_n` を `sum a_n` と書き,`a_n -> a (n -> oo)` を `a_n -> a` と書くなどである.

(1) は正しそうだが証明がわからない。(2) の反例はわかった。`a_n = 1 - 1/n, alpha=1` とおく。このとき、`"sup"{a_n} = 1` であるから、 `"sup"{a_n} ge alpha` である。ところが、`a_n = 1 - 1/n lt 1` であるから `AAn, a_n lt 1` である。すなわち、 `a_n ge alpha` となる `n` は存在しない。よって、`"sup"{a_n} ge alpha rArr EEn, a_n ge alpha.` が成り立たないので (2) は成り立たない。

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数式記述

数式記述は ASCIIMathML を、 数式表現は MathML を用いている。

書誌情報

書名ルベーグ積分と関数解析
著者谷島 賢二
発行日2002 年 7 月 15 日(初版第 1 刷)
発行元朝倉書店
定価4500 円(本体)
サイズ
ISBN4-254-11593-8
その他草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi