数学の勉強

作成日:2011-04-27
最終更新日:

社会人時代

社会人時代、当時の仕事には全く役に立たないが、数学の本を買っていた。 以下はただの繰り言である。

数学での名前の付け方

次は、「物理数学の直感的方法〈普及版〉」 に書かれていた文章である(pp.84-85)。

どうも思うのだが, 現代数学の勉強というのは,法律の勉強に近いところがあるらしい。 よく誤解されていることに, 数学というのは論理を扱う学問だから論理的思考能力だけが必要とされ, 一方法律というのは暗記ものだから記憶力ばかりが要求されるという通念があるが, いろいろな学問に接してみて思うのは, およそ現代数学以上に記憶力が要求される分野はないと言っていいのではないかということであり, 実際,歴史学でもこんなに記憶力は要求されないのではないかとすら思える。 これに対して,法律というのは必ずしも暗記一辺倒のものとも言えないもののようである。

これを書いた著者が、現代数学のどんな点が記憶力を要求するのか知りたいが、残念ながら同書を読むだけではわからない。 ただ、気になる点はあるのでそれを書いておこう。

センスのない名前

どんな分野でも名前はその意味からつけられることが多い。 数学もそうだ。たとえば、「微積分学の基本定理」とか、 「代数学の基本定理」とかはその通りである。 (代数学の基本定理については、最近この名称に疑義を呈する人々がいるようだ。) もっとも「基本」とはどういう意味か、 という定義まで立ち返ると簡単に 「意味からつけられた」とはいいにくいだろう。 私が思っていることは、数学は思いのほか、概念に名前をつけるときに、発見者の名前を冠することが多いということである (これは他の分野でもそうなのかはわからない)。

もちろん、発見者の名前をつけないこともあるが、そのときも順序や大小を意識させない、カテゴリーを意識した名前をつけるようだ。 順序や大小を意識させる名前がある例外を二つあげよう。このような名前はどうやら「センスのない名前」として意識されているようだ。

ベールのカテゴリー定理

ベールのカテゴリー定理とは距離空間に関する定理である。 その定理はかつては距離空間 `X` の部分集合 `A` の性質の分類に基づいて述べられることが多かった。 この分類とは、`A` が第1類(第1のカテゴリー)の集合か、第2類(第2のカテゴリー)の集合かという分類である。 第2類の集合は第1類の集合でない集合と定義されるので、自動的に排反な分類になっている。 ここで、`A` が第1類の集合であるとは、`A` が可算個の粗な集合の和集合で表される集合であることをいう。 「粗な集合」の定義は適宜調べてほしい。

第1類と第2類というのがセンスがない、と誰かがいっていたような気がするがその出典は思い出せない。

T2分離

位相空間論でいう、分離において、その分離の程度が強いか弱いかによって、その程度を数値で表すことがかつて行われていた。 たとえば、`T_0`, `T_1`, `T_2` などの用語で分離の程度を表していた。しかし今は、それぞれを別の名前で呼ぶ。 たとえば、`X` が位相空間であるとき、`X` が `T_2` 分離であるという代わりに、`X` がハウスドルフであるという、などである。

大学時代

大学1年、2年、3年と3年間続けて数学の授業はあったが、ほとんど理解できなかったか、全く理解できなかったのいずれかだった。

解析

初級の解析は W 先生だった。優しい先生だったが、位相空間の定義の宿題で、 教科書の回答丸写しで持っていったら 「どういう意味ですか」と聞かれ答えられなかった恥ずかしい思い出がある。

中級の解析は二人の先生がいた。一人は著名な S 先生で、授業に出たがまったくわからなかった。 ただ、その授業で「1の分割」という摩訶不思議なキーワードだけを覚えている (私は最初誤って「1の分解」と誤って覚えていた)。 S 先生は上下巻にわたる浩瀚な解析の本を出版されたことでも有名であり、 私が入学したときは刊行されたのは上巻だけで、 S 先生の単位をかろうじて取ったあとに下巻が刊行された。下巻には1の分割があった。 なお、「1の分割」は partition of unity の日本語訳であることをつい最近知った。

もう一人は KK 先生で、微分方程式を教えられた。この先生から聞いて覚えていることは「解の爆発」という現象で、 これを知人に話すとえらく喜んでいた。 KK 先生の出身は原子力工学科であることを知ったのはつい最近である。

その後、上級になるのか知らないが、複素関数論を学ぶことになった。 担当は KW 先生だったが、これはまったくわからなかった。 試験のときは、教科書に指定された複素関数論の本を頼りになんとかしのいだ。

複素関数論の演習は T 先生だった。 君たちの興味を知りたいからということで宿題として君たち自身の作品を提出するように、 という課題が出た。私は現代詩を書いて提出した。T 先生からは「タゴールの詩がいいのですが、手に入りません」 とメッセージが帰ってきた。その後社会人になってタゴールの詩集を手に入れたのだが、手放してしまった。 罰当たりである。なお、詰将棋を提出した人を私は少なくとも二人しっている。

関数解析も学んだ。KN 先生だったが、KW 先生に輪をかけてわからない授業だった。 これは私の理解力が足りなかったからというより、KN 先生の授業が下手だったから、というのが事実だろう。 事実、私の周りでもわからなかったという人が多かった。 もちろん、関数解析に興味があれば自習してそれなりに面白い成果も得られたのだろうが、 当然私には関数解析の意味が全くわからず、したがってやる気も全くわかなかった。 その後、ある関数解析の本を入手してはしがきを読んだところ、 この KN 先生の関数解析の講義すばらしかった、と書かれていた。 やはり、私の理解力が足りなかったということなのだろう。

専門課程では、位相に関する授業もあった。 隣の学科の授業だから私は受ける気がなかったが、 「著名な A 先生だから受けるといいよ」と先輩に言われその気になり、授業に出てみた。 先輩はその後つけたした 「A 先生の授業は聞いているとわかった気になるけれどあとで振り返るとやっぱりわからない」。 実際、そのとおりの授業だった。成績も「優、良、可、不可」の「可」で、単位をとっただけだった。 その後、この先生とこの授業で検索した Web を見ると、ある有名な方がこの授業をとって本当に面白くと振り返っていたので、 やはり有名な方はさすがだと思うのだった。

代数

初級の代数は I 先生である。大学の先生らしからぬ風采で、 タバコをふかしたりサングラスをかけてやってきたりと妙な先生であった。住まいは私の実家の近くだった。 この I 先生の授業のスピードは猛烈に早く、普通なら線形代数だけやるべきところを、 最初の 1/3 で群、環、体、おまけにイデアルまで出てきたのには参った。 残りの 2/3 で線形代数を講義したのだが、本当についていくのはやっとだった。

応用数学

物理数学という講義を受けたが、全く内容は覚えていない。 先生はひょっとしたら KB 先生だったかもしれないが印象にない。 成績は悪かった。この物理数学には演習もあり、こちらは B 先生という方が担当されていたが、 こちらも全くわからなかった。そういえば、B 先生はテンソルを教えてくれたのかもしれない。

F 先生の数値解析の授業もあった。これも全くわからなかったが、禁じた公式近似多項式の理論だけは面白く、 印象に残っている。エルミート多項式、ラゲール多項式、ルジャンドル多項式チェビシェフ多項式などだったと思う。 また、いくつかの数値計算法をノートしていたがそのときは全く記憶になかった。 ところが、勤務先で入社8年後、準ニュートン法を使うはめになり数値計算法を自習していたころの話だ。 たまたま学生時代にとっていたノートを見て驚いた。多変数関数の最適化法に準ニュートン法がある、 と書かれていたのだ(といっても書いたのは自分であるが)。 授業を受けただけでは全く身につかないとつくづく思った。

この F 先生からは確率統計の授業も受けるのだが、これまた全く身につかなかった。 特に統計は私の勤務生活の中で主体を占めているだけに、当時勉強をしていなかったのを残念に思う。 とはいえ、その後学びなおしたのだからそれもいいと思っている。

別の授業で O 先生による確率に関する特別講義もあった。主に Markov 連鎖を扱うもので、まじめに授業に出たにもかかわらず、 試験の結果は不可だった。

これまた別の授業で T 先生による有限数学の特別講義があった。こちらは授業には出ず、 T 先生の教科書だけで勉強していたら、試験の結果は優だった。何があるかわからないものだ。

入試問題の発想

かつての東大の数学の教官が公開していたホームページに 「数学の入試問題は如何にして作られるか」というのがあった。なお、このページは現在では見つからない。

この教官は、カメラの絞りにヒントを得た問題を作って採用されたことがあるという。 おそらく東大理系の 1980 年の第 1 問であろう。

1 辺の長さが 1 の正三角形 ABC の辺 BC,CA,AB 上に,それぞれ点 P,Q,R を BP = CQ = AR < `1/2` となるようにとり, 線分 AP と線分 CR の交点を A',線分 BQ と線分 AP の交点を B',線分 CR と線分 BQ の交点を C' とする。 BP = `x` として,次の問いに答えよ。
(1) BB',PB' を `x` を用いて表せ。
(2) 三角形 A'B'C' の面積が三角形 ABC の面積の `1/2` となるような `x` の値を求めよ。

図をかけばカメラの絞りをイメージできると思う。

またこの教官は、これとは別に遺伝と突然変異にヒントを得た問題を作って採用されたことがあるという。 これは東大理系の 1984 年の第 5 問であろう。

各世代ごとに,各個体が,他の個体とは独立に, 確率 `p` で1 個,確率 1 - `p` で 2 個の新しい個体を次の世代に残し, それ自身は消滅する細胞がある. いま,第 0 世代に 1 個であった細胞が,第 `n` 世代に `m` 個となる確率を, `P_n(m)` とかくことにしよう. `n` を自然数とするとき,`P_n(1)`,`P_n(2)`,`P_n(3)` を求めよ.

別の教官の発想例として、この教官は次の例を示している。 その別の教官は、ハロウィーンのかぼちゃランタン(ジャック・オー・ランタン) に開けた口の影をヒントにして入試問題を作ったという。 この問題はおそらく、東大理系 1980 年の第 2 問であろう。

長さ 2 の線分 `NS` を直径とする球面 `K`がある.点 `S` において球面 `K` に接する平面の上で, `S` を中心とする半径 2 の四分円(円周の 1/4 の長さをもつ円弧)`AB` と線分 `AB` をあわせて得られる曲線上を,点 `P` が 1 周する. このとき,線分 `NP` と球面 `K` との交点 `Q` の描く曲線の長さを求めよ.

球面 K がかぼちゃである(まさか K は Kabotya の K ではないだろう)。N にランタンがつけられていて、 点 P が 1 周する閉曲線がかぼちゃランタンに明けた口の影である。 求める<線分 NP と球面 K との交点 Q の描く曲線の長さ>とは、かぼちゃランタンに開いた口の周の長さ、ということになる。

ハロウィーンは終わってしまったが、かぼちゃランタンを見るとこの話を思い出す。(2011-11-05)

数学科に行った友人

まだ大学1年生のころ、同じ高校から同じ大学に入り数学科に行った友人が「多様体っておもしろいね」と声をかけてきたので驚いた。 こちらはまだ、イプシロン・デルタ論法やイデアルでおろおろしているのに、もうそんなところまで来ているのか。 もっとも、この友人は数学から専攻を替え、今は在野の哲学者として名を成している(2015-05-04) 。

高校時代

ごく普通の勉強をしていただけである。まだ共通一次というものがあったころで、カリキュラムは数学 I 、数学 II B 、数学 III というものだった。 使っていた参考書は数研出版の赤チャートだけだった。問題集として、旺文社から年度ごとに出ている大学入試問題を解いていた。 あとは、やはり旺文社の大学受験ラジオ講座を聞いて、毎月出される懸賞問題にせっせと応募していた。予備校にも通わず、通信添削も受けていなかった。 こんなやり方でよかったのだろうか。

高校は田舎にあったものだから、英語よりは理数系に力を入れるようになったらしい。毎週数学だけは宿題のプリントが配られ、 それを月曜日に出すようになっていた。採点はされていなかったようだが返却はされた。あの風習は今でも続いているのだろうか。

中学時代

教科書だけですませていた。本当に安上がりだった。

付録:小学生の算数

小学生時代は一番向上心があったように思う。 交通事故で入院していた時に、当時親に買ってもらった学研の「学習百科事典」から第11巻を親にもってきてもらい、 暇をつぶすために、335/113 を計算して円周率の近似値になることを確かめていた。

そういえば、近所の家からもらった小学校の数学百科のような本をもらったことがある。 その本にあった植木算とか鶴亀算とか、 いわゆる小学校数学で中学の入学試験に挑むようなホゲホゲ算についての記述を懸命に読んだ気がする。 ただし、俺は中学校受験はせず、地元の公立中学校に進んだ。

数式記述

このページの数式は ASCIIMathML で記述し、 MathJax で表示している。

2015 年に実施されたセンター試験を解いてみる

2015 年のセンター試験の「数学 I ・数学 A 」を解いてみた。

二次関数 `y=-x^2 + 2x + 2` のグラフの頂点の座標を求めよ。

これは `y = -(x - 1)^2 + 3` と変形できるから、`(1, 3)` である。

以下、`y = f(x)` は上記 `y=-x^2 + 2x + 2` のグラフを `x` 軸方向に `p`、`y` 軸方向に `q` だけ平行移動したものであるとする。

`2 <= x < 4` における `f(x)` の最大値が `f(2)` になるような `p` の値の範囲を求めよ。

これぐらいだったらわかるような気がする。

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