アドリアン=マリ・ルジャンドル(Adrien-Marie Legendre) はフランスの数学者である。 彼の名前は整数論や楕円関数論で知られている。 これから説明するルジャンドルの多項式が、どのような経緯で彼の名が与えられたのかは今後調査したい。 さて、ルジャンドル多項式(以下、「の」は省く)には興味深い性質が多くあるので、少しずつ探っていこう。
ルジャンドル多項式はさまざまな定義がある。まず、微分方程式で定義する方法をみよう。
`n` が負でない整数のとき、下記の微分方程式の解 `P_n(x)` をルジャンドル多項式という。
`d/(dx) [(1-x^2) d/(dx) P_n(x)] + n(n+1) P_n(x) = 0` .
左辺の微分をほどいた次の式も同じである。
`(1-x^2) d^2/(dx^2) P_n(x) - 2x d/(dx) P_n(x) + n(n+1) P_n(x) = 0` .
実にあっけない。しかしこれだけでは形がよくわからない。なお、このままでは任意定数の不定性があるが、これについては、`P_n(1) = 1` および `P_n(-1) = (-1)^n` を満たす境界条件をとる。
上記の微分方程式の解は次のロドリゲスの公式で表せる。
`P_n(x) = 1 / (2^n n!) d^n/(dx^n) [(x^2 - 1)^n]`
明示的には次の通り。
`P_n(x) = 1 / (2^n) sum_(i=0)^(|__n/2__|) (-1)^i ((n),(i))((2n - 2i),(n)) x^(n-2i)`
ここで `|__x__|` は `x` を超えない最大の整数を表す。
次に、漸化式による定義をみよう。
`P_0(x) = 1`
`P_1(x) = x`
`n >= 2` の `P_n(x)` は、次のボネの漸化式により定義される。
`(n + 1)P_(n+1)(x) = (2n + 1) x P_n(x) - n P_(n-1) (x)`
上記の漸化式を使って得られた、ルジャンドル多項式の具体的な形を下記に掲げる。
`{:(P_0(x) = 1), (P_1(x) = x), (P_2(x) = 1/2 (3x^2 - 1)), (P_3(x) = 1/2 (5x^3 - 3x)), (P_4(x) = 1/8 (35x^4 - 30x^2 + 3)), (P_5(x) = 1/8 (63x^5 - 70x^3 + 15x)):}`
ルジャンドル多項式は次の直交性を満たす。
なお、直交性を誤って直行性と記して質問を寄せる人がいる。注意されたい。
ここでは、ルジャンドルの陪関数、陪多項式、陪微分方程式について調べる。
ルジャンドル陪微分多項式とは、 負でない整数 `n, m (n ge m)` に対して、下記の微分方程式(ルジャンドル陪微分方程式)によって定義される多項式 `P_n^m(x)` のことをいう。
`(1-x^2)d^2/(dx^2) P_n^m(x) -2x d/(dx) P_n^m(x) + {n(n+1) - m^2/(1-x^2) }P_n^m(x) = 0` .
陪微分方程式の「陪」の意味がわかりにくいが、陪審裁判のように、主となるもの(裁判官)などに「伴う」という意味がある。 英語では associated という形容詞が使われる。エスペラントでは akompana という単語が用いられる。
ルジャンドル陪微分多項式 `P_n^m` とルジャンドル多項式 `P_n`との間には、次の関係がある:
`P_n^m(x) = (1-x^2)^(m//2) (d^mP_n(x))/(dx^m)`
後は問題のみ掲げる。
`f(x) = x^2 + ax + b` の形の 2 次式の中で、`int_-1^1 {f(x)}^2 dx` が最小となるものを求めよ。
次の条件を満たす `P_1(x), P_2(x), P_3(x)` を求めよ。ただし、それぞれの多項式の最高次の係数は 1 とする。
次の関数を考える。
`f_0(x) = 1, `
`f_1(x) = x + af_0(x), `
`f_2(x) = x^2 + bf_1(x) + cf_0(x), `
ただし `a, b, c` は実数の定数である。相異なる `j, k` に対して `int_-1^1 f_j(x) f_k(x) dx = 0` が成り立つとき、
次の各問に答えよ。
3 次またはそれ以下の任意の整式 `f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d` にたいして、常に `int_-1^1 f(x) dx = u f(s) + v f(t) ` が成り立つような定数 `u, v, s, t` を求めよ。ただし、`s > t` とする。
ルジャンドル陪微分方程式が登場する例として、3次元球体の熱伝導方程式の解を取り上げる。 半径 `a > 0` の一様な媒質の3次元球体がある。この内部で、初期温度分布 `f(x, y, z)` が与えられたときの温度変化を考える。 境界条件として、球面は時刻 t = 0 から ∞ まで温度 0 に保たれるものとする。 求める解は、位置 `(x, y, z)` における時刻 `t` での温度 `u(x, y, z; t)` である(以下続く)。
(執筆中)
数式の表現にはMathJaxを使っている。
グラフは ASCIIsvgを使っている。