進歩制度の級とはスカウト自身が自分自身の進歩の程度を測定する為の尺度であり、
自分はここまで到達したのであるが、まだまだその上があるのだ。
この辺で満足しないで、もっとがんばろう。
という奮発のための一里塚であり、
それによって自発活動に油を注ぐための為のものである。
さてその一里塚は何によって設定するのか?
それは技能を取り上げることが一つの方法である。
この年齢の者は自分の可能性については、半信半疑でいるものである。
その可能性を発見させて、自信をつけさせるためには、
この年齢の者にもっとも必要な生活技能というものによって、
その一里塚を設定してやるのが賢明な方法である。
一生を通じてこの年齢の時代に修めておかなかったら手遅れになる様な技能、
少なくともスカウトとしての男づくりに必要な技能、
即ちウッドクラフトを基本とした一里塚が一番良いというので、
そう設定されているのである。
けれどもそれは、技術さえ出来ればよいというものではない。
全ての奉仕活動にはいろいろな技術が必要である。
進級に関しては班長会議の承認を必要としている。
それは精神面の成長も考えられているわけであって、
もし技能だけが出来ればよいのかというあなたの質問は、
そういう間違った指導をしている隊長がいるから、そういう質問が出たのだろうと思う。
そこで、もし進歩制度がなかったとしたらどうなるか?
おそらく行事ばかりの団体で終わってしまうのではあるまいか。と、私は思う。
進歩制度では、可能性の最低基準をあげているのである。
だから、100点満点でパスしたとしても、決してそれが最高ではない。
実力点は100プラスアルファーであり、将来のびる可能性を、
その上に何%か潜在しているものと考えられる。
進歩制度は等高線ではない。
それぞれの個性や発育の度合い等を無視して一斉に高さを測るための物差しではない。
個人別に測り、個人別に判定するものでなければならない。
そして、励ましのための尺度であって、ふるい落とす為の尺度であっては絶対にならない。
定員上やむなく落とすという入学試験とは全く異なるものなのである。
進歩制度のいろいろな課目は、その少年の可能性を育てるためのものである。
指導者の念頭にこの見極めがなかったとしたら、
たとえその少年が励まされて進級したとしても、自分を見失ってしまうであろう。
ただバッジを着けたいが為の励ましに終わってしまうであろう。
可能性ということは、絶対者と人間との関連の上だけにおいて可能性を考えるのであるならば、
利己主義や排他心に誘い込むという危険性さえ生じてくるのである。
それは、いわば相対的可能性にすぎないのである。
自分の可能性は、それがどんなに小さな可能性であってもうれしいものである。
そして、それが他の人々のために役立つものであるならば、更にうれしいものである。
そしてそれが進歩科目の本当のねらいなのであるからだ。
自分の可能性の発見を喜び、
その感謝心を神仏に寄せて神や仏のみわざに参加しようとする念につながること、
言い換えれば役立つと言うことが真の合格といえるのであろう。
そう考えるならば、進歩科目の全部は信仰心への誘いや励ましとなるであろう。
そして、それがウッドクラフトの究極のねらいなのである。
前述の"プラスアルファー"の意味もここにあるのである。
あなたはバッジをどんな風に取り扱っていますか?
進級記章であるビーバーバッジ、ビッグビーバーバッジ、
ステップ章などはしっかり進級式でセレモニーとして扱っているでしょうが、
木の葉章、小枝章、チャレンジ章、クリアー章などはどうでしょうか。
頻繁に渡すものだからだんだん粗雑に扱うようになってきますよね。
でも、スカウト達にとっては努力の成果である、宝物になるバッジなのです。
隊長のポケットから出されたバッジを、直接スカウトに手渡したり、
スカウトショップの袋から出して渡したりしませんよね!?
どんな小さなバッジでも、小さなセレモニーで渡してあげましょう。
スカウトの目にセレモニーと映る最大の武器は黒塗りのお盆です。
100円ショップで買える小さなもので十分です、
ハイキング先でも、川縁でも公民館の庭でも、
そのお盆一枚でセレモニーの場に変わります。
お盆を活用してみてはいかが?
バッジは、タスキやユニフォームに着けてしまうと、
いつ貰ったかわからなくなりがちです。
また、小さなバッジ1枚だけ貰うよりも
何かメッセージカードがあった方がきっとスカウト達の記憶にも残ります。
名詞の大きさか、はがきサイズで小さな賞状(メッセージカード)を作って、
あなたの「おめでとう」の言葉を添えてみませんか。
バッジをスカウトショップから買ってきて、
セロファンに包まれたままスカウトに渡していませんか?
せめて、値札くらいはきれいに剥がして、セロテープで留めてから渡しましょう。
お金で買えるものを、宝物に変えるためにはちょっとした気遣いが大切です。
木の葉章を季節の折り紙(例えば5月の兜や3月のおひな様など)
にさして渡している隊長の話を聞きました。
スカウトにとってはどんな小さなご褒美でも、
隊長からいただけば宝物に変わります。
まして手作り品ならなおさらです。
チャレンジしてみませんか。
バッジはスカウトの宝ものですが、スカウトはお父さん・お母さんの宝物です。
スカウトがみんなの前でバッジを伝達され、
隊長からほめられる姿を一番喜ぶのは保護者(お母さん)です。
小枝章やチャレンジ章の伝達の場にはぜひお母さんを呼んで、
「おめでとうございます」の声をかけてみましょう。
お母さんを味方につける、絶好のチャンスですよ。
カブスカウト隊の場合、スカウトがバッジを伝達される姿を、
お母さんと同じくらいにうれしく思う人がいます。
それはデンリーダー。
デンリーダーを経験したお母さん達のお話を聞くと、
一様に「自分の子供と同じくらいうれしかった」とおっしゃいます。
隊長としては、ぜひデンリーダーにも「ご苦労様でした。
ありがとうございました」と感謝の声をかけてみましょう。
デンリーダーはあなたの最大の味方なのですから。
1級スカウト章や菊スカウト章とちがい、
ビーバースカウトやカブスカウトの進歩に対する情報が、
団委員長や団委員さんにはいっていないことが多いものです。
でも、団委員会などで毎月のバッジ伝達を報告する機会をもてれば、
もっと団に関心をもって貰うことが出来ます。
たまには団委員長や進歩委員さんに
バッジ授与式にきて頂きましょう。喜びますよ。
ビーバースカウトのお母さんや低学年のカブスカウトのお母さんは、
よその子供の進歩や、バッジ授与が気になります。
ビーバー通信やカブ通信で毎月のバッジ伝達を紹介してみましょう。
きっと、家庭のスカウティング(親子のスカウティング)
が活発になります。上手に刺激してみましょう。
ビーバー通信やカブ通信での紹介だけでなく、
保護者会(母の会)などで、毎月の実績を照会すれば、
おかあさんも心の中で「ヤッタ!」と、うれしく思います。
出来るだけたくさんの保護者に
スカウトの成果(バッジ)を知らせましょう。
あなたに対する尊敬の念も高まり、
あなたのファンになってくれるかもしれません。
そして、一年の締めくくりは団(育成会)の総会です。
通り一遍の活動紹介よりもスカウトの進歩の成果(バッジ)の方が
興味を持って聞いてくれます。
まして、自分の子供が"スーパーカブ"(バイクではありません)
になったなどは、きっと自分の昇進よりうれしいかもしれませんよ。
「ほめる場合は大勢の前で」
これがバッジを宝物に変える最大の魔法です。