花はどこへ行った
シンハラ語には係り結びの法則がある。え、え、え?  Sinhala QandA77-1

2007-Apray-03


 シンハラ語の「係り結び」を覚えて、簡単な言い回しで話せるようになってみよう。「係り結び」って言っても、日本語の古語のように面倒じゃない。シンハラ語を話す人なら誰でも、何の気なしに使っているから…



シンハラ語には係り結びの法則がある

 なんて事を言い出すんだ、といぶかる方が多いかと思いますが、これ、大切です。シンハラ語を話すなら、なんとしても「係り結び」を知っておく必要がある。
 ちょっと回り道しますが、その前に英語のフォークソングの歌詞から眺めていきましょう。英語とシンハラ語と日本語をめぐる言葉の旅が始まります。

 ピート・シーガーの「花はどこへ行った」、原題はWhere have all the flowers gone?  私はPPMでこの歌に馴染んだが、キングストン・トリオやマリーネ・デードリッヒが歌う「花はどこへ行った」もいい。
 どこかでアイリーン・グッドナイトのメロディが聞こえるようなWhere have all the flowers gone?の歌いだしの部分、日本語では「花はどこへ行った?」と訳されている。

 

花はどこへ行った Where have all the flowers gone?

 Whereなどの疑問詞、「だれwho、どこwhere、なにwhat、なぜwhy、いつwhen」をまとめてWh疑問詞と呼び、Wh疑問詞が文の頭に置かれる疑問文をWh疑問文という。Where have all the flowers gone?はこのWh疑問文にあたる。
 「花はどこへ行った」はこの歌の英語タイトル Where have all the flowers gone? の直訳と言っていいからWh疑問文の和訳文になる。
 この疑問文を平叙文に換えると文頭のWhere(Wh疑問詞)は文の最後に置かれる。

  ① All the flowers have gone (somewhere=where).
     すべての花はS  行ってしまったV  どこかADV
     すべての花はどこかへ行ってしまった。


 元の疑問文(歌のタイトル)はこんな仕組みだ。

 ② Where have all the flowers gone?
      どこWh  すべての花はS   行ってしまったV 
      どこへすべての花は行ってしまったか。
                    (→どこへ花は行ったの?)


 ①と②の違いが示しているのはWh疑問文を作るために文末から文頭へWh疑問詞が移動したということ。このWh疑問詞の動きをWh-movement(Wh移動)と呼ぶ。

 Wh移動は英語以外の言語でも起こる。Wh移動が起こる言語はWh-movement の言語と呼ばれ、Wh移動の起こらない言語はWh-in-situの言語と呼ばれる。統語論からの視点で言語はWh-movementの言語とWh-in-situに分けることができる。

Wh-movementとWh-in-situ

 英語はWh移動の言語だが日本語はそうじゃない。上のようにWhere have all the flowers gone? は「どこへ花は行ったの?」とも「花はどこへ行った」とも訳せる。ちょっとアクロバットに倒置という手を使えば「花が行ってしまったのはどこ?」としても問題はない。

 こうした奔放な移動が英語では起こらない。
 シンハラ語ではこの日本語型の奔放な「どこ」の移動が起こる。Wh疑問詞は驚くほどに自在に文の中を移動する。
 でも、それって、なぜなんだ? 



花はどこへ行った シンハラ語と日本語の係り結び2