KhasyaReport さとやま食らいふ 024
お茶づくり2016

冬のシーズンに作った”ひなたカフェ”でアッサム種の茶葉をウィザリング。湿気があって風が通る山の中。今年は日中が暑くて夜が寒くて。どんな紅茶ができるやら。

 去年より一か月も早く茶を摘んだ。だから一か月早く紅茶を作ることになった。南東北の山の中がスリランカの紅茶の産地ランボダと同じになるのが今の季節。当家の山のあたりには茶畑と云う字名の残る山がある。そう、昔から、たぶん平安時代の末期ごろだと思うのだけど、そのころはこのあたり、茶木の植えられた山があった。でも、変わる、変わるよ、時代は変わる。くるくる変わる。茶を生産する文化なんてここからとうの昔に途絶えてしまい、荒れた山々に茶木なんぞありゃしない。
 でも、当家にはただ一本のアッサム種の茶木がある。今年もその茶の若葉を摘んで手もみで紅茶を作る。

 今年は冬の間に小屋をカフェ風にビフォー・アフターしたから、二階の風通しのいいところに茶葉を運んでやんわりとしおれさせた。茶葉をくたくたにする。ここから紅茶製造のアートが始まるのだから、このウィザリングの工程が肝心だ。ウィザリングはどうやるのか。 笊に積んだ茶葉を広げて山から吹き込む柔らかな風に当てて放っておく。写真にはトモカの時のバティックが敷かれているけど、これは無くてもいい。
 ほんとにそれだけ? ほんとにそれだけだ。
 一夜明ければ茶葉はしんなりする。葉っぱに鼻を近づける。青臭いにおいに混ざって、甘く、そして、すっきりした紅茶の香りが、遠くのほうにだけど、漂う。遠く、遠く。はるかに遠いのだけど。
 この甘い香りを前面に押し出すために次の作業に入る。ローリングだ。ローリングってどうやるの?
 手のひらに茶葉を丸め込んで、軽く10回ほどハンバーグをこねるようにくるくると丸める。これだけだ。紅茶を手作りし始めたころはきっつく揉んで力いっぱい丸めていた。日本茶やウーロン茶を作るように、汗まみれでやっていた。だけど、いろいろ試したら力抜いて葉っぱをほんわりと丸めても紅茶の出来は同じだった。茶葉の酸化を促すように葉の表面にそれとは分からないような傷をつける。目いっぱいの力を込めて茶葉を揉む苦労は止めにした。こうしてローリングしたら、また、一晩を寝かせる。

 翌朝、茶葉は茶色に変色している。丸いまとまりをほぐして、発酵の進まない中心部を表側に返して、またしばらく笊に置く。後は、茶葉が黒くなってカラカラに乾くのを待てばいい。
 摘んだ茶葉を笊に広げて、風に通して、後は何にもしない。重量で60パーセントになるまで放っておく。一晩じっくり。
くたくたになった茶葉を丸めて手のひらに包んで、軽く揉む。葉っぱの表面に傷が付けば、そこから発酵が始まってくれる。これも一晩おく。

 
こうしてからっからに乾くと
茶葉は真っ黒になる。
日本では紅茶と呼ばれるけど、
これがブラック・ティの名の起こりだ。



 紅茶はブラック・ティと呼ばれるけど、その名の通りに茶葉は真っ黒に仕上がる。紅茶の香りはどこか甘いような、酸っぱいような。真っ黒な茶葉をわしづかみにしてサーバーに入れる。その時ザクザクと手作りの茶葉を割る。薄い黒焼せんべいを手のひらに包んで割るかの如く。このお茶淹れの作法はプッセルラーワの茶園で見て覚えた。砕いた茶葉に熱湯を注ぎ、5、6分したらカップに注ぐ。サーバーに入れた茶葉が熱湯を吸ってウィスキー色に変わってゆく。サーバーの蓋を取ってつい鼻を近づけてしまう。香りはブランデーの甘い匂い。ティーコジーでサーバーを包み込んで淹れたて新茶を高温キープ。こうして作った紅茶は飲み残しの冷めたやつが、また、格別においしい。 2016-5-14
2016年の紅茶は熱帯の山の中の紅茶そのままに仕上がった。ひなたやまカフェに出せるだけの生産量はないけど製茶の時間に偶然うまく出会ったら、飲んでいただけるのだけど。  




ひなたやまカフェIndex
さとやま食らいふIndex

アマゾンで丹野冨雄の本を探す

アマゾンでKhasyaReportの本を探す