スリランカ料理トモカ掲載記事一覧  トモカの評判index

スリランカの植物が15種
ビルの谷間のスパイスガーデン



「カレーのルーツを探っていたらこんなになっちゃいました」
 という丹野さんは、東京・四谷でスリランカ料理店「トモカ」を経営する料理人。10坪ほどの店のベランダで原産地の植物を栽培する。
 「熱帯原産の植物も東京で育つものもありますね。注意したのが夏の乾燥と冬の霜。夏は水を欠かさず、冬はビニールの屋根をつけてあげます。どれも種で現地から持ってきて植えたもので、まだ料理に使うほど収穫はありません。今は実を取って種を保存して、いずれ大きな農園をつくりたいですね」
 丹野さんは伝統的なスリランカの家庭料理にこだわる。そしてこだわりの味は現地の植物の研究から生まれる。

BE-PAL 1994年10月号 小学館


【解題】 

赤米など数種の米をスリランカでは栽培し、
それぞれ炊き方を変えて違った味を楽しむ。
昔の日本もそうだった。

 私は毎年、スリランカへ店で使う食材を仕入れに行くとスリランカ固有種の食用にされる野菜・蔬菜を探して持ちかえった。熱帯の植物が東京四谷で育つかって、それは、育つ。見事に育つ。
 成田の検疫で殺菌消毒した植物を提示して確認済みの判子をもらうとき、「この草はタイの人も持ってくるなあ」とか、いろいろと教えてくれるのでずいぶんとアジアの野草に詳しくなったような気分になった。
 初期には園芸栽培の野菜を育てたが、そのうちアーユルウェーダに用いる野草を持ち帰って育てるようになった。スリランカの草かゆに用いる野草のタンパラ、ゴトゥコラが四谷のビルの屋上でぬくぬくと育つ。
 1994年は猛暑の年。東京市街地は熱帯には絶対にありえない「熱帯夜」の連続で、東京四谷のしんみち通りはモンスーン期の熱帯海岸地帯より、劣悪極まりない気温と湿度の毎日。四谷見附の交差点では早朝からプリンス・ホテルの勇姿がスモッグにかすんで見えないし、スリランカの野草はこんな環境で大丈夫?と訝ったのだけど、彼らは狂喜して生育を始めた。ぬくぬくぬくぬく。

 サライの編集にいた方がトモカの常連だったけど、移動でBE-PALに移った。キャンプに行こう、自然を遊ぼう、のキャッチがBE-PALの売りだからトモカは関連がないはずだけど、その編集氏はすぐに思いついた。トモカは自然のままだ。ベランダもグリーンじゃないか。だから、BE-PALがグリーン・ライフを特集したときトモカの熱帯ベランダを真っ先に思い出してしまった。
 編集氏が見ていたのはトモカの熱帯ジャングル。トモカのベランダにアジア熱帯のジャングルを見たなんて、うれしい。

 実際、私はベランダ・ジャングルに掛かりきりだった。国会図書館へ行って『スリランカの蔬菜と野菜』を調べて、ポルパラ、タンパラからランパまで育てていたらベランダがアジア熱帯のジャングルになってしまった。東京はその当時すでに擬似熱帯の気候だったから、簡単に熱帯植物が育ってしまった。
 四谷見附の交差点からは早朝からプリンス・ホテルの勇姿がスモッグにかすむ。夏の夜間は熱帯夜(スリランカにモンスーンはあっても熱帯夜はない)という最悪な環境。なのに、熱帯植物は育ってくれた。
 「いずれ大きな農園」とあるけど、この2年後に私は東北の山里に登って畑を耕し、荒れた山の潅木を切る暮らしをするようになってしまった。


スリランカ料理トモカの評判雑誌記事一覧