サンボールと名がつくシンハラ料理のそもそもはおそらくタミル起源。サンバルという料理が南アジアにありますが、どれも食欲をそそるアペタイザー。でも、ゴトゥコラ・サンボールは、どういうわけか異質で、サラダ感覚で食べる野菜の料理です。
なぜって、そして、スリランカではちょっと特別な野菜です。
それは、これが自生の草としては唯一、生で食べられるからです。トマトやビーツなどの外来の圃場で育てる野菜は生食されますが、自生の草で熱を加えずに料理されるのはこれだけでしょう。
ゴトゥコラはユキノシタや血止め草の仲間。その薬効がスリランカでは広く知られています。なにしろ、血圧を下げ精神安定に役立つという、今時の世情の災いを一気に解決しようという優れものだからです。
神経鎮静,記憶力を高め,睡眠を健全にする。 発熱・皮膚病・喘息・
気管支炎・出血・心疾患・糖尿病に適応。
平河出版社『アーユルウェーダ』p.127
『本草綱目』に、鎮静効果,精神安定がうたわれ、草を揉んで傷につけると皮膚の増殖を促し、細菌の蝋質を溶かして細菌を殺す。p.196
成分:ヘテロサイド(サポニン配糖体) アシアティユサイド(抗菌物質,
肉芽形成促進) インドセンテロサイド(配糖体) ハイドロコテリン(アルカロイド) 樹脂 ペクチン酸 ビタミンC 鉄 ヴェラリン タンニン 蔗糖 精油 など
cf/hi:n gotukola --a medical plant
pennywort
そして、ゴトゥコラは草粥にもなります。『医食同源』のスリランカ料理の中でも、小品ながらゴトゥコラ粥は格別の地味溢れる料理。
ゴトゥコラ粥 ゴトゥコラ・カンダ
〈材料〉 ゴツコラの草汁 米 ポルキリ 水 塩
〈作り方〉
① ゴトゥコラを臼に入れて青汁が染み出すまで搗きます。
② ゴトゥコラの汁をポルキリに加えておきます。
② 粥状に炊いた米に②のポルキリを加えてかき混ぜ、静かに煮ます。
ジャングルに自生し湿気を好む可憐な草。日本では四国に自生しているとシンハラ人の坊さんに聞いた事があるが、私は見たことがありません。ツルを延ばして地を這い延びる同じかたちの草がありますが、日本のものは食用になりません。血止め草がこれと同じ種類だそうで、ゴトゥコラもスリランカでは傷にこの草の汁を擦りこむと傷を治すと言われます。
ゴトゥコラはサンボールにして生食するか、カンダとシンハラ語で言う「粥」にされて食べられています。
スリランカの粥はおもに「草粥」です。体調がすぐれないとき、草を選び粥に入れて煮るのです。ハーターワーリヤ、ワルパネッラ、ポルパラ、タンパラなどの野草が「草粥」にされます。何故、そんなにスリランカの粥に詳しいか、ですか? なぜって、私は日本でハードな仕事を毎日しながら暮らしていまして、体調の優れないままにスリランカへ飛ぶ。スリランカへ着くと、やれ疲れる、腹の調子が悪い、微熱があるようだ、と体の不調を訴えるものだから、田舎に住む友人たちは年寄りに頼んで、私のために草粥を作らせるのです。臼と杵で搗いた天然の野草の汁を粥に入れて、これを啜る。だから、私が知っているスリランカ料理というと、日本で流行るカレーじゃなくて、粥みたいな料理だったのです。四谷トモカの頃を知っている方は、トモカのスリランカ料理がカレーじゃなかったこと、覚えれおられますか。あれ、いなかの天然の味だった。
このゴトゥコラを使った健康食品が最近、日本でも出回るようになりました。スリランカから個人輸入でもしているのでしょうか。ゴトゥコラ入りのお茶やらなにやら、売られています。スリランカではゴトゥコラがプセル入りになって薬屋さんで売っています。
でも、この自然の妙薬は山に自生するのを取って来て、自然のままに食べるのが一番です。